刑事訴訟法(捜査)~国際私法の範囲外

「…刑事法等の公法の抵触問題と私法のそれとはその性質が大いにちがうものであるから、…国際刑事法は国際私法の範囲から除外するのが妥当である。」
(江川英文『国際私法(改訂)』(有斐閣、1957)17頁)

目次

【留意点】

●憲法の条文
●具体的な問題の所在
●私見:憲法と同様(当然。憲法の具体化。)
●行政警察活動においては「警察比例」(操作は「捜査比例」)
●重大性については、刑法の法定刑等を示しつつがベター。
●その証拠から、どの事実が証明できるか?
●「相当でないとき」(295条1項)
●「捜索差押許可状」で統一(「令状」ではなく。)●検討
●3点セット:告知(被疑事実の要旨の告知)・弁解(弁解の機会の付与)・防御(弁護人選任権の告知・防御の機会の付与)
●弁解録取と被疑者取調べの相違:①主体(検察官・司法警察員のみ)、②対象(逮捕された被疑者のみ)、③その他(出頭拒否・黙秘権告知・調書録取なし)
もっとも、③については、実務上、弁解録取書を作成している。また、黙秘権も告知している。
●常識:当番弁護士(初回接見は弁護士会負担により無料。)は、一般的にはそのまま私選弁護人となる(国選弁護人ではない。)。
●差押え・領置・関連する処分については、準抗告(430条1項)の対象となる。勾留についても、準抗告あり。●確認:逮捕はナシ。捜索は?なしだろうか。
●捜索・差押:身体の拘束に先行して、捜査の初期段階で、行われることが多い。厳格な制限は、証拠物の確保を困難にする。
●方針:特殊な規範(例:強制採尿等)はそのまま。他はひな形からあてはめ段階で考えれば十分。新しいX線やGPSあたりは、そのまま、が良いか。

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二条 (略)

第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、かつ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

第三十六条 (略)

第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第四十条 (略)

第百九十七条 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。ただし強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。
2 捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
3~5(略)

第百九十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。ただし、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
2 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
3~5(略)

「強制処分」(AA)

●問題:「強制の処分」(197条1項ただし書)の意義
●理由:法定主義(197条1項ただし書)の趣旨たる人権保障を主眼に、捜査による真実発見の必要性(1条)との調和の見地から、
●結論:「強制の処分」とは、相手方の意思に反して重要な権利・利益を実質的に制約する処分をいうと解される。
●手順:
①どの権利・利益か?(法定主義・令状主義に見合うか?)類型的判断(捜査の必要性は無関係)
②実質的な制約があるか?
③意思に反するか?個別具体的判断(渋々承諾でも許容)。
●補足:承諾留置(留置施設に宿泊)、承諾家宅捜索、女子を裸にする承諾捜索等は、①・②の程度が大きく、③による正当化はされない。
●補足:「身体」(憲法33条)・「住居、書類及び所持品」(憲法35条)は重要。私的領域に侵入されない権利まで保障(憲法35条)。
●注意:あてはめにて。「特別の定め」(197条1項ただし書)があれば法定主義に反しない。令状主義には反しうる。●具体例:写真撮影は検証(218条1項)(ゆえ430条2項の準抗告の対象たる「押収」ではない。)

●以下、個別論点

GPS捜査

●事例:GPS操作:非装着型の捜査(携帯キャリア等に対する検証・捜索・差押え(過去情報))は可能。問題は装着型(将来情報)。(公道上の情報とはいえ)個人の行動を継続的・網羅的に把握する(検証と言い切れない性質がある)点が問題だった。
●前提:「強制の処分」(197条1項ただし書)の意義
●理由:憲法35条は、私的領域に侵入されることのない権利まで保障。GPS捜査は、個人のプライバシー侵害を可能とする機器をその所持品に密かに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入するといえる。実質的な権利制約あり。
●結論:強制処分該当。
●理由:被疑事実と無関係な行動の把握を抑制できず。裁判官による令状審査や令状の事前呈示(222条1項、110条)もできず。手続の公正を担保する代替的手段(期間限定、第三者立ち合い、事後通知等)も仕組みとして確保されていない。
●結論:法定されている強制処分に含まれない。
●補足:強制処分法定主義に例外なし(通説)。

X線検査

●事例:X線検査:通信の秘密に類するレベルのプライバシー侵害の問題。令状あれば可能なので法定主義違反ではない。
●前提:「強制の処分」(197条1項ただし書)の意義
●理由:①内容物の形状・材質等を伺い知ることができる。②内容物によっては、その品目等を相当程度具体的に特定可能。よって、荷送人や荷受人のプライバシー等の重要な権利を実質的に侵害。
●結論(あ):強制処分たる検証にあたり、令状主義違反(218条1項)。
●判例(最決平成21年9月28日):違法収集証拠排除法則の問題としては、証拠能力は認めた。

会話傍受

●事例:電気通信によらない口頭会話の傍受:通信傍受法(刑訴法222条の2)の適用範囲外。
●補足:令状の事前呈示対象の特定関係者立会い等の諸条件備えなければ、法定された「検証」としての実施困難。

任意処分(AA)

●前提:強制ではない、という意味。意に反することや有形力の行使はありえる。
●問題:任意捜査であっても、捜査比例の原則(「必要な」(197条1項本文))の下、一定の限界はある。
●結論:そこで、①必要性・緊急性があり、②権利・利益の内容・性質・制約の程度を踏まえ、③具体的状況の下で相当と認められる場合に限り許容されると解される。
●注意:「相当」は、結論に過ぎない。その前の比較衡量(比例原則)が重要。捜査の実質的な態様等の他、手段・方法(例:撮影の時点・長短・方法)がバランスを失している場合も、相当性がないとされる。
●補足:「必要性」(犯罪の性質・重大性(組織性を含む。広く・繰り返し、から。密行性・被害者なし。)、合理的な嫌疑(発生可能性も。なお、深まる等、変化し得る。)、捜査手法・証拠の非代替性等)
●補足:「緊急性」(証拠の重要性、確保・保全の必要性)は、当該捜査目的との関係で当該捜査手段を用いることの。第一段階での検討した事情と重なる点も改めて、でOK。
●補足:「権利・利益の内容・性質・制約の程度」(●例:プライバシーの具体的内容は?(容ぼう?室内?)、「放棄」等のマジックワードではなく。)
●補足:任意捜査については、法定主義・令状主義の対象ではないことから、必然的に事後審査となる。

●以下、個別論点

秘密録音、写真・ビデオ撮影

●事例:写真・ビデオ撮影:検証令状を得てするなら勿論可能(問題は被撮影者の同意なき無令状撮影)。
●補足:必要性については、なぜ(人の視聴のみではなく)録音か?写真か?録画か?等。相当性については、公共の場か?等
●補足:写真に対するビデオの特性:複数の静止画相当(情報量が多く、例えば表情の変化まで判る等、事実認定に確実性が増す。歩行その他の癖の把握に役立つ等)。音声も含む。

おとり捜査(B+)

●定義:「おとり捜査」とは、捜査機関又はその協力者が、立場や意図を秘して働き掛け、相手方が応じて犯罪の実行に出たところを現行犯逮捕等する捜査手法 ●注意:まずは該当性認定。
●前提:強制処分非該当。少なくとも対象者については、①権利・利益制約せず、②意思決定の自由についても同様(意思に反せず。)。
●問題:違法となる実質的根拠は、捜査機関自ら、法益侵害の危険を惹起する点にある。
●論点:任意捜査の可否・限界(上記実質的根拠から、原則として違法。また、必要性・緊急性と比較されるのは、惹起される法益侵害の内容・性質・程度)
●結論:必要性(覚せい剤事犯の特殊性:被害者なし・密行性(通常捜査では摘発困難)、対象者の犯罪性向(同種事案防止)等)・緊急性があり、権利・利益の内容・性質・制約の程度等(直接の被害者がいない。結果発生阻止の態勢あり。等)を踏まえ、具体的状況においての相当性(対象者の犯罪性向(強ければ働き掛けは弱くて足りる。)。等)
●補足:機会提供型か?形式は機会提供型であるが常軌を逸した強い働きかけがなかったか?(犯意誘発型)は、必要性・相当性の重要な考慮要素。だが2分論現在妥当ではない。
●判例:最決平成16年7月12日(●補足:上記は有力説。それで良い。)
●検討:原則違法な任意捜査とは?●認識:「任意」は、強制ではない、というだけ。原則違法、と両立しうる。
●認識:上記「犯罪性向」のように、重要な事情は繰り返し(しかし無駄なく)使うことは必要・許容。事実の複数評価(両立する。という話。

任意同行・取調べの限界(A)

●問題:任意同行(実質逮捕該当性)
●前提:二段階論証(強制処分の定義・任意処分の大枠、ぐらい)

●結論:
・必要性(下記③・⑤等)
・緊急性
・権利・利益の内容・性質・制約の程度等を踏まえ、
・具体的状況の下で相当(下記①・②・④等)か。
●裁判例:①同行を求めた時間・場所②同行の方法・態様③同行を求める必要性④同行後の取調べ・監視の態様⑤逮捕の準備が完了していたか等の事情を総合して判断。
●結論:該当するとすると、実質的逮捕。よって、令状主義違反。

●問題:取調べの可否・限界
●結論:
・必要性(下記①、②、③等。(取調べ以外では捜査困難か。自白があった、しかも客観的事実と照応しない、等の具体的事情・状況の変化))
・緊急性
・権利・利益の内容・性質・制約の程度(心身の自由。苦痛・不利益とまで言えるか?等(●方針:応じている点は、ここで、で良いだろう。)宿泊や翌日出頭の経緯)を踏まえ、
・具体的状況の下で相当か(費用負担等)。
●判例:最決昭和59年2月29日(高輪グリーン・マンション殺人事件)「①事案の性質、②被疑者に対する容疑の程度、③被疑者の態度等の諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において許容される」。最決平成元年7月4日もある。
●補足:取調べに応じない自由を侵害すれば、即OUT。●検討:偽計による自白もOUTか。
●理解:(一段階目は勿論)二段階目として、意思決定の自由は制約せず。しかし、精神的・肉体的負担等に照らし、「社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度」を超えるとの説でOK。

警察官職務執行法

(この法律の目的)
第一条 この法律は、警察官が警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)に規定する個人の生命、身体及び財産の保護、犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために、必要な手段を定めることを目的とする。
 この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであつて、いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない。

(質問)
第二条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
 その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる
 前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない
 警察官は、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる

有形力の行使(A)

●前提:警察比例の原則(警職法1条2項)
●前提:職務質問自体の要件・適法性を認定(警職法2条1項)
●問題:有形力の行使の可否・限界(「停止させて」(警職法2条1項)の意義)
●理由:職務質問と捜査とは一連の手続となりうることから、行政警察活動たる前者にも任意捜査の原則(法197条1項本文)の趣旨は及ぶ。
●結論:そこで、原則として相手方の同意を得るべきである。
●修正:もっとも、犯罪の予防・鎮圧という行政警察活動の目的達成のため、
●結論:(「停止」は例示であり)必要性・緊急性があり、具体的状況の下で相当であれば適法。●認識ないし方針:「制約される権利・利益の内容・性質・制約の程度」は書かない。捜査ではなく。更に漠っと。
●理解:比例原則(警職法1条2項)による規範。

留め置き

●補足:移動の自由の制約の問題(①実質逮捕か否か、(否としても)②任意処分として適法か。)
●補足:「留め置き」(有形力の行使とは別の話):時間の長さ、態様(意思抑圧の有無等)等を検討。嫌疑の高まり等に応じ、当該捜査手段の必要性が高まれば、相当性も広くなる。なお、手続の進展(嫌疑の高まり。それに基づく令状請求中であること。それを被疑者に伝えたか等)も、適法性に影響しうるが、逮捕状については、請求しているから相当性が認められ易くなることはないと考えるべき。取得に至っておらず同視できず。早期に令状請求すれば良い、という視点もある。
●補足:強制採尿令状の請求には、予め担当医師を確保する等により、比較的長時間を要する。よって相当性が認められ易くなる。

所持品検査(A)

●前提:逮捕されている者について、凶器の所持品検査は明文ある(警職法2条4項)。逮捕されていなくとも、凶器・危険物につき外部から触れる程度の検査は許容(有力)。
●問題:(その他については)明文なし・広く許容されるか?
●理由:口答による質問と密接に関連。職務質問の効果をあげる上で必要性・有効性が認められる行為
●結論:原則として、所持人の承諾を得て、任意処分として、職務質問(警職法2条1項)に付随して認められると解される(同条3項参照)。
●理由:しかし、流動する行政警察活動において、犯罪の予防・鎮圧等の目的(同法1条1項参照)達成のため、●方針:このフレーズで統一
●結論:所持人の承諾がなくとも、捜索(●補足:最高裁も明確に定義していないが、探索的・開封的行為、と理解。傾向として、ここは狭くし、次の規範で柔軟対応。)に至らない行為は、強制(●補足:力づく等、「捜索」とは別。)にわたらない限り
●規範:侵害される個人の法益等を考慮し、その必要性(●補足:違法薬物所持ぐらいの罪では認められないことが多い。被疑者の挙動等。)、緊急性があり、具体的状況の下で相当(●注意:「探すなら勝手に探せ」等と言っても、真意に基づくか、また自由かつ任意の意思決定に基づくか、状況に照らし認定する。●補足:いきなり深入りではなく、徐々に深めて行ったか。等も)と認められる限度で。
●結論:許容されると解される(警察比例の原則(1条2項参照))。
●認識:有形力の行使・交通検問とは異なり、止まった後(或いは、止まることとは別)の話。よって、「職務質問と捜査とは一連の手続となりうることから、行政警察活動たる前者にも任意捜査の原則(法197条1項本文)の趣旨は及ぶ。」等は省略。
●前提:警職法上、強制処分は許されない(警職法2条3項)。
●参考:自動車にキーを抜く行為は、立ち去りの権利・自由まで侵害・制約しておらず、強制処分ではない、でOK。

交通検問(B)

●問題:交通違反予防のための一斉検問(外形上異常が認められない車両に対しても実施)
●理由:自動車検問も職務質問の一類型であるといえる。
●結論:相手方の同意がある限り、任意処分として、許容されると解される。●有力:同意ある以上、根拠規定不要(警職法すら。)。これでOK
●理由:職務質問と捜査とは一連の手続となりうることから、行政警察活動たる前者にも、任意捜査の原則(法197条1項本文)の趣旨は及ぶ。
●結論:そこで、①交通違反多発地域等の適当な場所において、②相手方の任意の協力の下、③短時分の停止を求め、④その自由を不当に制約しない方法・態様で行われる限り、適法であると解される。
●判例:警『察』法2条1項(言及するも、法的根拠とまではしていないらしい。)。仮に根拠としているとすると、同項による警察の責務の一環として広く認める、という発想らしい。

第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
○2 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。ただし、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
○3 検察官又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。

第二百条第二百六条 (略)

第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。ただし、保釈については、この限りでない
○2~5(略)

第二百八条 (略)

第二百八条の二 (略)

第二百九条 (略)

第二百十条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2 第二百条の規定は、前項の逮捕状についてこれを準用する。

第二百十一条 (略)

第二百十二条 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
○2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。

第二百十三条~第二百十七条 (略)

【規則】
(明らかに逮捕の必要がない場合)
第百四十三条の三 逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡するおそれがなく、かつ、罪証を隠滅するおそれがない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。

通常逮捕(憲法33条・法199条)(AA)

●要件
①逮捕の理由:「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(嫌疑の相当性)(199条1項本文)●認識:199条2項本文は、逮捕「状」発付の要件。
②逮捕の必要性:逃亡又は罪証隠滅のおそれ等(199条2項ただし書規則143条の3(●重要))
●参考:199条1項ただし書(●重要):軽微な犯罪

現行犯逮捕(212条1項・213条)(AA)

●目安:30分~40分
●趣旨(●重要):
・(早急な逮捕の必要性がある一方、)誤認逮捕のおそれ少ない。
●要件(3つ):
①逮捕の理由(●重要)「『現に』・・・、または『現に』・・・」の文言解釈:犯罪と犯人の明白性:客観的・外部的状況等(実務上有力)から
●補足:逮捕者が直接認識していない通報内容、又は被疑者の自白等をベースに判断してよいか(一応問題):可能だが、あくまで補充的事情(準現行犯逮捕とは異なり、時間的隔離がない以上は特に。)。●方針:軽くだが、必ず触れる。
・時間的(・場所的)接着性(及びそれが逮捕者にとり明白であること):(厳密には独立の要件ではなく)①の一考慮要素(独立の要件ではない、という説でOK)。だが、(独立の要件とするのが一般的なようでもあり、また)①の要件を担保する要件なので、必ず触れる。

②逮捕の必要性(●あまり)争いあり。199条2項ただし書のような明文ないが、人権保障上要求(判例or裁判例?)●方針:一言触れるのみ。

●応用:共犯の場合、共謀共同正犯の例で言えば、①行為者との共謀、及び②それに基づく実行行為、の存在が明白であること。
●判例(最判昭和50年4月3日)実力行使は、社会通念上、必要かつ相当な限度内で許される。●認識:当然ゆえ略可。

準現行犯逮捕(213条、212条2項)(AA)

●目安:3時間~4時間
●趣旨:現行犯逮捕と同様
●要件(4つ)
①逮捕の理由(現行犯逮捕との違いから、ア・イが必要。ア・イは別の要件(例えばアがイの一要素という関係にはない等)。また、ア→イの順序で検討する。)
ア.「左の各号の一にあたる者」(212条2項各号該当性)●理解:逮捕者が直截覚知必要でほぼ争いなし(の模様)。●方針:特段の事情がない限り論じない。
イ.「罪を行い終わつてから間がないと明らかに認められる」(犯罪と犯人の明白性):客観的・外部的事情から。
●補足:逮捕者が直接認識していない通報内容、又は被疑者の自白等をベースに判断してよいか(一応問題):可能だが、あくまで補充的事情(現行犯逮捕とは異なり、時間的隔離がある以上、判断資料とすることは当然の前提とされていると考えて問題ない。ただ、慎重に検討すべき点は同じ。)。●方針:軽くだが、必ず触れる。
・「間がない」((時間的(・場所的)接着性(・及びそれが逮捕者にとり明白であること))については、(独立の要件ではなく)①イの一考慮要素(独立の要件ではない、という説でOK)。だが、(独立の要件とするのが一般的なようでもあり、また)①イを担保する要件なので、必ず触れる。該当事実が、どの程度明白性を担保するのか、まで論じる。

②逮捕の必要性:明文(199条2項ただし書参照)ないが、人権保障上要求される(一般的な判例の考え方)。●方針:一言だけで良いが、必ず触れる。

●応用:共犯の場合:212条2項各号に該当する事実が存しないときは?:「一体性」を示す具体的事実を指摘する。
●応用:共犯の場合:共謀共同正犯の例で言えば、①行為者との共謀、及び②それに基づく実行行為、の存在が明白であること。

緊急逮捕(210条)(AA)

●要件
①実体的要件
(1)「罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由」(嫌疑の充分性)
(相当性(通常逮捕)<嫌疑の充分性<明白性(現行犯逮捕))
(2)「急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができない」
(逮捕の緊急性)
(3)「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁固にあたる罪」(犯罪の重大性)

(4)逮捕の必要性:211条は199条2項ただし書を準用していないが、必要(規則143条の3)●理解:一般的な判例の考え方。●方針:一言だけで良いが、必ず触れる。

②手続的要件
・事後直ちに逮捕状請求(210条1項2文(中段))等

●補足:裁判官の事後審査時点においても、通常逮捕の要件を充足しているか、二段階目の審査がされる。

勾留(207条、60条以下)(AA)

1.実体的要件
(1)勾留の理由(207条1項本文、60条1項
ア.「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(嫌疑の相当性):通常逮捕より高度
イ.60条1項列挙事由該当性(積極的要件):逮捕との違い

(2)勾留の必要性(207条1項、60条1項各号、87条1項)(87条で必要性がなくなったことが取消し要件であることから、必要性が要件であると解されている。)●実質的な身体拘束の必要性(60条1項各号該当性あるが、比例原則的な発想で特に何かあれば。)、●方針:一言触れるのみ。

2.手続的要件
(1)勾留質問(207条1項、61条)
(2)逮捕前置主義(204条~207条)被疑者のみ
(3)勾留令状(62条、64条、70条~73条)

●補足:勾留延長(208条2項)

逮捕前置主義(A)

●定義・問題:被疑者の勾留には適法な逮捕が前置される必要がある(「前三条の規定による」(207条))が、前置の基準が問題
●趣旨:捜査の流動性を考慮し、短期間の身体拘束を先行させる慎重な方法をとり、被疑者の人身の自由を全うさせる点にある
●理由:その審査は、被疑事実ごとになされる(200条1項、207条1項本文・64条1項)一方、それに対する最終的刑罰権は訴因変更後の事実にまで及ぶ。
●結論:そこで、逮捕前置の有無については、「公訴事実の同一性」(312条1項)を基準に判断すべきと解される。●具体的基準が重要。
●帰結:A罪で逮捕し、A罪及びB罪で勾留することは、被疑者に不利益がないなら認められる。
●検討:現行犯逮捕については、司法審査の必要性・(時間的)許容性がない、というだけ。実質的には趣旨該当、でOK。反対説であっても。だが。

勾留請求(違法逮捕の場合)(A)

●趣旨:逮捕前置主義
●理由:よって、逮捕が適法であることは前提とされておらず、独立の不服申立は認められていない(429条1項2号参照)。他方、法は、重大な違法逮捕は許容しない(206条2項、207条5項等参照)。●理解:その他のメルクマールとして、207条4項ただし書、210条等がある。
●結論:そこで、勾留段階で逮捕につき、重大な違法があると認められる場合、勾留は許されないと解される。
●補足:緊急逮捕の要件を事実上充足し、法定の制限時間が遵守されていれば、重大な違法ではない(裁判例の趨勢らしい。)。
●判例:最決昭和57年8月27日

一罪一逮捕一勾留の原則①(再逮捕・再勾留禁止の原則)(AB)

●前提:逮捕勾留の一般的要件(理由と必要性)も認定する。
●原則:厳格な身体拘束期間(203条~208条)による人権保障の観点から、原則として再逮捕は許されない。
●問題点:再逮捕を予定した規定(「前に」(法199条3項、規142条1項8号))から、法は再逮捕を予定している。
●要件:そこで、①重大事案において、②新証拠発見や逃亡・罪証隠滅のおそれの復活等の新事情が生じ、③先行逮捕・勾留期間の長短・捜査状況等を勘案し、被逮捕者の不利益と比較し、やむを得ない場合に限り、
●結論:例外的に再逮捕も許容されると解される。●補足:再勾留については、規定はないが、再逮捕が認められるなら、認めない理由はないと解されている。
●認識:先行勾留違法もあるし、再勾留が違法もある。
●応用:問題点(先行逮捕が違法の場合(例:嫌疑が極めて小さいのに。或いは、制限時間不遵守。等。)):一律に再逮捕不可とすると、一度も勾留されない、という過剰な利益を被疑者に与える。)●要件(先行逮捕が違法の場合):違法収集証拠排除法則の3点セットを②として書く。②は問う意味がないので。●検討

一罪一逮捕一勾留の原則②(重複逮捕・重複勾留禁止の原則)(B) 

●問題:常習一罪の一部につき保釈後に
●趣旨:厳格な身柄拘束期間(203条~208条)を定めた法の趣旨から、実体法上の一罪(●補足:通説)全部の同時処理義務を捜査機関に負わせる。
●要件:そこで、①検察官による同時処理につき抽象的可能性すらない場合、又は②法の趣旨に反しない合理的理由があれば、例外が認められる。
●要件:そこで、①当初の逮捕・勾留の後に発生した事実であるか、又は②(ア)重大事案において、(イ)新証拠発見や逃亡・罪証隠滅のおそれの復活等の新事情が生じ、(ウ)先行逮捕・勾留期間の長短・捜査状況等を勘案し、被逮捕者の不利益と比較し、やむを得ない場合であれば、
●結論:一罪の一部につき改めて逮捕・勾留できると解される。
●補足:上記通説とは異なり、併合罪であっても蒸し返し的なものは不可、との考え方もありうるらしい。

別件逮捕(A)

●前提:別件の形式的な法定要件の充足は必ず認定(どの説に立っても必要)。「専ら」の場合に違法である点に争いなし。
●定義:疎明資料を備えたある事実(軽微)(「別件」)につき被疑者を逮捕・勾留し、その身体拘束中、主として別の事実(重大)(「本件」)について取調べ等を行う捜査方法
●問題:適法か?
●理由:この点、別件について要件を充足する以上、逮捕・勾留自体は適法と解される(別件基準説)。
●歯止:もっとも、その後の取調べについては、別途「余罪取調べの可否・限界」が問題となる。
●方針:従来型の議論だが、これで良い。本論点はサラリと。本件の取調べにつき「余罪取調べの可否・限界」の問題とする。●認識:捜査実体は見ない。必要がない。
●展開:実体喪失説(新別件基準説・捜査実体を見る。近時の裁判例の傾向。らしい。)
・(例えば別件による捜査(取調べ状況に限らず。取調べゼロでもその他の捜査が行われていれば実体はあるので。)の実施・進展なき場合等)別件による逮捕が実体を喪失した場合、逮捕・勾留の要件を欠くに至り、その後の身体拘束・取調べも違法となる。その後が、一部違法となる。●認識:余罪取調べの可否・限界は、その前でも問題となる。
・考慮要素:勾留期間中の本件取調べの割合、本件・別件の関連性の存否・程度、被疑者の供述状況、捜査の進展状況等(注意:令状請求時点の主観的意図は直接的には考慮せず。)
・判断基準:別件について終局処分のための捜査が行われているか。もっとも、違法証拠排除まで想定すると、本件基準説同様、結局、各種事情の総合考慮が必要となる。
・基本的には、その時点以降が違法となるが、場合により、当初の逮捕・勾留まで違法であったとの認定に至る事例もある。後者の場合、違法収集証拠排除法則が機能する。

【参考:反対説(本件基準説(令状主義潜脱説))・捜査実体を見る。】
●問題点:①実質的に令状主義(憲法33条、法199条1項)違反。②厳格な身体拘束期間(203条から208条の2)の潜脱。③黙秘権侵害や自白強要のおそれ。
●結論(金沢地七尾支判昭和44年6月3日):専ら本件取調目的での別件逮捕は違法と解される。
●欠点:もっとも、本件取調目的は捜査官の主観の問題であるから、その存否は客観的資料から判断せざるを得ない。
●考慮要素:そこで、(別件についての逮捕等の要件充足は前提として)①別件自体の重要性(起訴可能性等)、②逮捕勾留時の捜査状況、③捜査官の意図(●補足:この説では重視される。)、④本件の重大性、別件との関連性、⑤逮捕後の取調状況、⑥逮捕後の別件の捜査状況等から、本件取調目的の存否を判断。
●理解:逮捕・勾留自体が違法となると、その後の過程における取調も違法。その後の逮捕は再逮捕・再勾留の問題(先行逮捕(・勾留)が違法)。認められても、期間は通算。
●参考:大阪高判昭和47年7月17日
●補足:こちらの説寄りの実体喪失説もあるが、いずれにしても結論は変わらないと言われているらしい。

余罪取調べの可否・限界(A)

●問題:身体拘束された被疑者について、余罪(身体拘束の基礎となっていない犯罪)を取り調べることができるか。
●前提:身体拘束被疑者について、取調受忍義務の有無が問題
●理由:①供述義務はなく黙秘権(憲法38条1項、法198条2項)を侵害せず、かつ②自然な文言解釈(198条1項ただし書反対解釈)

●結論:取調受忍義務肯定
●展開:また、余罪と本罪が密接に関連する場合や同種事案である等、余罪が本罪との関係上重要な意義を有する場合、本罪に付随して余罪取調べは可能と解される。
●限界:もっとも、身体拘束中の被疑者取調べは、強制処分ではないものの、人権保障上、逮捕・勾留に係る事件単位原則(200条、207条1項、64条1項等)からの制約を派生的に及ぼすことが相当と解される。
●帰結:そこで、具体的な状況において、実質的に令状主義を潜脱している場合、余罪取調べは違法となると解される。●方針:実体喪失説をより明確に。
●要素:具体的には、①勾留期間中の本件取調べの割合、②本件と別件との関連性、③被疑者の供述状況、④捜査の進展状況等を考慮し、判断。
●裁判例:大阪高判昭和59年4月19日、福岡高判昭和61年4月28日
●補足:受忍義務を肯定すれば、身体拘束に関する事件単位原則を取調べにも及ぼしうる。否定すれば、任意捜査として事件単位の原則は及ばない、と流れ易くなる。
●認識:別件逮捕に関する自説(別件基準説)からは、本論点が中心となる。仮に別件逮捕・勾留となる場合には、違法な身体拘束下での取調べも違法となるが。まれだろう。
●補足:実体喪失説、でOK
●確認:令状主義(199条1項、207条1項、62条)で良いか。「人」の条文は。

第二百二十二条 第九十九条第一項、第百条、第百二条から第百五条まで、第百十条から第百十二条まで、第百十四条、第百十五条及び第百十八条から第百二十四条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条、第二百二十条及び前条の規定によつてする押収又は捜索について、第百十条、第百十一条の二、第百十二条、第百十四条、第百十八条、第百二十九条、第百三十一条及び第百三十七条から第百四十条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条又は第二百二十条の規定によつてする検証についてこれを準用する。ただし、司法巡査は、第百二十二条から第百二十四条までに規定する処分をすることができない。
○2 第二百二十条の規定により被疑者を捜索する場合において急速を要するときは、第百十四条第二項の規定によることを要しない。
○3 第百十六条及び第百十七条の規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条の規定によつてする差押え、記録命令付差押え又は捜索について、これを準用する。
○4 日出前、日没後には、令状に夜間でも検証をすることができる旨の記載がなければ、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第二百十八条の規定によつてする検証のため、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入ることができない。ただし、第百十七条に規定する場所については、この限りでない。
○5 日没前検証に着手したときは、日没後でもその処分を継続することができる。
○6 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第二百十八条の規定により差押、捜索又は検証をするについて必要があるときは、被疑者をこれに立ち会わせることができる。
○7 第一項の規定により、身体の検査を拒んだ者を過料に処し、又はこれに賠償を命ずべきときは、裁判所にその処分を請求しなければならない。

第二百十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
○2 差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。
○3 身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、第一項の令状によることを要しない。
○4 第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。
○5 検察官、検察事務官又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。
○6 裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。

第二百十九条 前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ若しくは印刷させるべき者、捜索すべき場所、身体若しくは物、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
○2 前条第二項の場合には、同条の令状に、前項に規定する事項のほか、差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。
○3 第六十四条第二項の規定は、前条の令状についてこれを準用する。

捜索・差押え(実質面)(AA)

1.理由
捜索・差押令状発付(218条1項)に「正当な理由」(憲法35条1項)を求めた趣旨は、被疑者のプライバシー・財産権等保護のため、裁判官をして、(1)嫌疑の存在、並びに(2)特定の対象物等について、①被疑事実との関連性(222条1項、99条1項)を、及び②特定の場所等存在する蓋然性(222条1項・102条)を審査させる点にある。

●注意:蓋然性について
1.被疑者の場合、102条「1項」は明示なし。推定してよいという趣旨。推定が破れれば捜索不可。
2.被疑者以外の場合、102条「2項」の明示あり。令状請求時に疎明資料が必要(規156条3項)。
・類型:準住居(例:愛人宅)、被疑事実との密接関連性(例:組事務所)、対象物の流出先(例:預託先)。
・捜査機関による執行時をも制約(令状の効力が及んでいても、凡そ蓋然性が認められない捜索は不可。)。
・「物」(102条2項)は事実上の支配・管理を意味する。被疑者と実質的に同一の管理権の下にあるとして否定された同居人の占有物についても保護可能性あり。
●補足:「隠匿したと疑るに足りる」場合、その場合に収斂。ここでの問題を論じる実益なし。
●注意:関連性について。直接証拠としてか、間接証拠等としてか、等について具体的に検討。

2.必要性(上記(1)・(2)①②に加え、4点目として。LAST)
●条文:「必要」(218条1項)とあるので審査する(最決昭和44年3月18日)。●認識:比例原則に照らし明らかに必要性がない場合は不可というだけ。一言でOK。なお、逃亡は関係なし。
●理解:裁判官による必要性の審査権自体については、逮捕のような明文(法199条2項ただし書・規則143条の3)まではないが。という論点。

●定義:捜索は、場所・物・身体(219条1項参照)につき、物・人の発見を目的とする捜査。
●補足:関連性を欠く場合:①領置(221条)、②準・現行犯逮捕(212条)に伴う捜索差押(220条1項2号)、③別途令状請求(218条1項)
●補足:写真撮影(明文は218条3項のみ)
●補足:関連性がないことが判明した場合、還付が必要(222条1項、123条1項参照)。

捜索(令状「場所」・対象「物」)(A)

●問題:場所に対する令状により物の捜索は許されるか。法が、「場所」・「物」を区別(222条1項、102条)し、対象の令状記載を要求している(219条1項)ことから問題となる。
●論証:捜索・差押え(実質面)
●理由:そこで、物が、場所に関するプライバシーに包摂され、管理権の同一性が及ぶ限り、かかる捜索は許される。
(●補足:捜索場所に置かれた「物」で、居住者・管理者等の管理権が及ぶ物は、「場所」に含まれ(法定主義の観点)、裁判官もそれを前提に令状発付している(令状主義の観点)。被疑者であれば、展開なしで結論に至る。また、同居人についても、「被疑者に準じる立場にあり、その携行物には実質的に同一管理権が及ぶ」等でOK。)
●展開:この点、捜索場所に居合わせた第三者の携帯物については、通常、管理権の同一性が及ばず、原則として捜索は許されない。
●展開:もっとも、第三者が対象物を携行物に隠匿していると疑うに足りる相当な理由があれば、当該令状に基づく原状回復措置の一環として、例外的に携帯物に対する捜索が許されると解される。
●補足:隠匿については、元々ポケットに入れていたのか等を検討する。素振り等だけではなく、「比較的小さい物」であることも、隠匿を疑う理由となる。

捜索(令状「場所」・対象「身体」)(AA)

●問題:場所に対する令状により物の捜索は許されるか。法が、「場所」・「身体」を区別(222条1項、102条)し、対象の令状記載を要求している(219条1項)ことから問題となる。
●理由:「身体」の方が「場所」よりも被侵害利益は重大と言え、両者は性質の異なる権利侵害を伴う。
●結論:原則として、場所に対する捜索差押許可状により、人の身体を捜索することはできないと解される。
●展開:もっとも、その場に居合わせた者につき一切捜索しえないとすると真実発見(1条)が害されうる。
●要件:そこで、①その者が対象物を身体に隠匿していると疑うに足りる相当な理由があり、②必要性・緊急性が認められれば、
●結論:例外として、令状の効力として、「身体」を捜索することも許されると解される。

捜索差押許可状執行中に宅配された物(A)

●問題:捜索開始時点では場所に存在しなかった。
●理由:令状の呈示の趣旨は…であり、呈示時点に捜索場所に存在する物に対象を限定する趣旨ではない。
・令状の有効期間(219条1項、規則300条)内に物の出入りがあるのは当然の前提であり、その間いつでも執行可能。執行開始時点との時間的前後関係を問題とするのは不合理。
・新たな住居権・管理権の侵害は生じない。
●結論:許可状の効力が及ぶ。
●判例:最決平成19年2月8日

内容を確認しない差押え(AB)

●問題:PC・携帯電話等
●理由:差押えを行えるのは、(●219条1項の趣旨から)対象物が被疑事実と関連性(222条1項本文前段・99条1項)を有する場合のみ。
●原則:関連性を確認せずになされる包括的差押えは、原則として許されない。●イメージ:中に何が入っているか占有者に対し質問する等と思われる。cf.最決H10.5.1
●問題点:①電磁的記録(可視性・可読性がない)につき関連性を確認するための情報機器・専門家が捜査機関側に欠けている場合がある。また、②電磁的記録(加工・消去が容易)につき全て関連性を確認している間、被処分者による罪証隠滅のおそれが大きい。
●結論:①電磁的記録媒体に被疑事実に関する情報が「記録されている蓋然性」があり、②当該記録を現場で確認しる間に情報を「損壊される危険」がある場合には、例外として、関連性を確認しない包括的差押えも許されると解される。
●補足:上記①の「蓋然性」は、被疑事実の内容、目的物の性質、目的物と管理者との関連等を踏まえ判断。
●方針:関連性がないのに捜査の必要性だけで、と批判れされているようだが、関連性は否定されない(例えば無関係な書籍・衣類等なら否定されるだろう)、というスタンスでOK。
●判例:最決平成10年5月1日②(蓋然性はあった。しかし内容確認せず、関連性は確認されていなかった。)
●補足:差し押さえた尿の成分分析等については、「必要な処分」(222条1項、111条2項)で足り、鑑定処分許可状(225条1項、168条1項)不要。例えば携帯電話のデータ復元等も同様でOK。と一言。
●注意:供述等により関連性が明らかになっている等の事案では、①の要件は問題とならない。
●参考:平成23年(2011年)刑訴法改正
①記録命令付き差押え(99条の2、218条2項):協力あり。捜索なし。
②電磁的記録に係る記録媒体の差押えに代わる処分(222条1項、110条の2):協力なし。捜索あり。
③電磁的記録を複写して行う電子計算機等の差押え(218条2項):リモートアクセス。
(その他)
④必要な協力要請(222条1項、111条の2)
⑤通信履歴の保全要請(197条3項・4項)。

執行着手(令状呈示前)(AB)

●趣旨(110条):令状被執行者に対し受忍限度の範囲を明確にし、捜査機関の権限濫用を防止することにある。
●原則:よって、明文ないものの、原則として、令状の事前呈示が必要と解される。
●問題点:しかし、常に事前呈示を要求すると、その間に証拠隠滅等、捜査の実効性が害されるおそれがある。
●要件:そこで、①捜索差押えの実効性確保のために必要性が高く。②短時分の先行にとどまる等の相当性。
●結論:例外として、執行に着手した直後に令状呈示することで足りると解される。
●要素:初犯ではなく捜査に関する知識経験あり。入室への物理的障害・被執行者の人数・態度からの見込み入室所要時間。
●補足:222条1項による準用である点を忘れない。
●参考:来意告知の原則●根拠は?

捜索差押許可状(形式面)(AA)

●趣旨:捜索差押許可状における対象となる物・場所等の明示(憲法35条1項、法219条1項)を要求した趣旨は、被疑者(被告人)のプライバシー・財産権等保護のため、捜査機関が許可された権限の範囲を、また令状被執行者に対し受忍限度の範囲を、特定し明確にする点にある。
●結論:よって、「差し押さえるべき物」(「捜索すべき場所」)の記載は、捜査機関及び被疑者が、対象を識別・特定できる程度に個別・具体的にされる必要がある。
●問題点:もっとも、捜索・差押えはしばしば捜査の初期段階で行われ、具体的な対象物につき不明点も多い。厳格な特定を要すると捜査を困難とし、取調べ中心ともなりかねない。
●結論:そこで、①「本件」の内容が明らかで、かつ②具体的例示に付加されたものであれば、「その他本件に関係ありと資料される一切の物件」との概括的記載も適法と解される。
●注意:書類が例示されていない場合、「その他…」の記載を根拠に書類を差し押さえることは許されない。

●補足:犯罪事実の要旨は記載不要(請求書では必要。)。趣旨:①捜査の秘密保護(初期段階が多い。)、及び②被疑者等の名誉保護(被疑者以外にも示されうる。)。
●補足:一切の物との記載がある場合、捜査の秘密や被疑者等の名誉保護に支障がなければ、「罰条」・「被疑事実」も記載し、特定を図るべき。
●補足:特別法違反の場合の「●●法違反」とのみの記載も適法(判例)。捜査の秘密確保、および捜査の初期段階における特定困難性から。
●補足:「…に所在する者の身体及び所持品」との記載は、特定性に欠ける(蓋然性・関連性の判断不能。)。原則として、当該部分は違法・無効(●理解:全体波及は事例判断。)。例外は、組織的犯罪のアジトで、所在者全員につき蓋然性が認められる等の場合。●認識:違法・無効だとしても、場所に対する令状で、の話でカバー可能。

第百十条 差押状、記録命令付差押状又は捜索状は、処分を受ける者にこれを示さなければならない

第百十条の二 (略)

第百十一条 差押状、記録命令付差押状又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。公判廷で差押え、記録命令付差押え又は捜索をする場合も、同様である。
② 前項の処分は、押収物についても、これをすることができる。

「必要な処分」(222条1項(本文前段)、111条1項(前段))(A)

●根拠:証拠隠滅・抵抗等の支障を除く必要性と適正手続(憲法31条)との調和の観点から。
●結論:①執行目的達成に必要であり、②社会通念上相当と認められる処分をいうと解される。
●要素:必要性:被疑事実、対象物の重要性、証拠隠滅のおそれ、被処分者の態度等。相当性:被処分者が受ける不利益の内容・程度
●注意:令状執行の目的のために必要、ということなので、濫用しない。
●補足:場所に対する捜索令状による捜索範囲(外延):「管理権の同一性」
●参照:111条2項も。112条も。
●認識:緊急性は要件となっていない理由。「必要」に含める。「緊急性」一般につき、それで良いぐらいの要件。
●検討:マスターキー等の話なら、「錠をはずし」として。
●参考:ケースにより、218条1項の令状の効力が及んでいる、という論じ方もある(例:消去されたデータの復元・分析等)。
●補足:写真撮影:令状主義の趣旨たる被疑者(被告人)のプライバシー(捜索)・財産権(差押え)等保護に反しない。そこで、捜索差押えの①証拠価値保存(発見場所・状況等)、又は②手続適法性担保(令状呈示・立会い状況等)のためであれば、捜索差押えに付随する処分として許されると解される。●あ:撮影対象が、令状記載物・文書に該当すること、又は関連すること、を認定する。

有形力行使(捜索差押えの際)(A)

●理由:捜索差押えの実施に際し、被処分者による抵抗は通常予想される。
●結論:有形力の行使は可能。
●歯止め:適正手続(憲法31条)
●要件:①執行目的達成に必要であり、②社会的に相当と認められれば、
●結論:「必要な処分」(222条1項(本文前段)、111条1項(前段))として許容されると解される。

第二百二十条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第百九十九条の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、左の処分をすることができる。第二百十条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。
一 人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。
二 逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること。
○2 前項後段の場合において逮捕状が得られなかつたときは、差押物は、直ちにこれを還付しなければならない。第百二十三条第三項の規定は、この場合についてこれを準用する。
○3 第一項の処分をするには、令状は、これを必要としない。
○4 第一項第二号及び前項の規定は、検察事務官又は司法警察職員が勾引状又は勾留状を執行する場合にこれを準用する。被疑者に対して発せられた勾引状又は勾留状を執行する場合には、第一項第一号の規定をも準用する。

総説(AA)

●前提:逮捕の全種類で可能。
●認識:「逮捕の現場」の話の場合でも、「逮捕する場合」(・「必要があるとき」)も認定する。
●趣旨(相当説):逮捕に伴う無令状捜索・差押え(憲法35条1項、法220条1項2号、3項)が許容される趣旨は、逮捕の現場には、被疑事実と関連性ある証拠の存在する高度の蓋然性が類型的に認められる点にあると解される。
●補足:安全を図る措置(身体捜索・凶器差押え等)は、逮捕に対する妨害排除措置として、逮捕の効力により認められる。凶器・逃走道具は220条の差押え対象ではない(通説)。●方針:趣旨とはしない。●認識:ケースにより書く。
●注意:220条の要件検討と併せ、捜索に必要な蓋然性(222条1項、102条1項・2項)の検討が必要。また、差押えに必要な関連性(222条1項、99条1項)も同様。
●補足:現場で、第三者の①身体、及び②所持品を、については、102条2項の話で良い(有力説)。●方針:第三者の場合は類型的ではないからと、令状による場合と同様の論理(隠匿したと疑われる)による説もがあるので、実質的にはそれに類する話を書けば良い。●検討
●補足:緊急処分説も、類型的に蓋然性が高い点は認める。それを前提に、という話。
●注意:相当説は、令状による場合と並列的(優劣なし)。
●認識:差押え(物の話はこれのみ。)は、捜索が〇なら(令状ある場合同様の関連性基準で)〇。捜索は、本論点(場所)がメイン。時間の話は、「逮捕」自体(の可能性)に重点。(1号も)2号も場所の問題。時間的限界の話が「柱書に残っている」というイメージ。

「逮捕の現場」(相当説)(AA)

●条文:「逮捕の現場」(220条1項2号)
●趣旨:(略)
●結論:「逮捕の現場」は、管理権の同一性が及ぶ範囲を含むと解される。●注意:自宅・別荘両方はありえず。厳密には、管理権の一個性。
●参考:緊急処分説(被逮捕者の身体又は直接の支配下)

「逮捕する場合」(相当説)(AA)

●問題:「逮捕する場合」(220条1項柱書)
●趣旨:(略)
●結論:そこで、「逮捕する場合」は逮捕時点との時間的接着があれば足り、逮捕着手時との前後関係は問わないと解される。
●結論:もっとも、逮捕前の場合、逮捕の可能性(●補足:前後、よりも、これが一番問題。らしい。)が確実であることを要する。●補足:現在の実務、らしい。
●参考:緊急処分説(原則として逮捕着手先行。厳格な時間的接着性)

物的範囲(逮捕に伴う差押え)(AB)

●結論:「必要がある」(220条1項柱書)とは、逮捕被疑事実に関連性があることと解される。
●補足:凶器や逃走用の物等は、必要性(・緊急性)・相当性がある限り、逮捕に伴う有形力の行使として取り上げ可能と解される。
●認識:捜索については、「一般的に」蓋然性が認められることから、あまり問題とならない。差押えについては、問題となるが、220条の趣旨と離れた個別的な関連性の話。

「逮捕の現場」以外の場所(身体・所持品に対する捜索・差押え)(相当説)(A)

●前提:被逮捕者の身体・所持品も捜索可能である点、争いなし。222条が102条を準用していることから当然、と考えておけばOK。218条1項にも明記ないが同様。
●趣旨:(略)
●理由:身体・所持品に証拠が存在する高度の蓋然性は、被逮捕者が「逮捕の現場」にいるか否かに左右されない。
●要件:(被疑者の名誉等を害し、被疑者らの抵抗による混乱を生じ、又は交通を妨げるおそれがある等)…の事情があり、その場で直ちに実施することが適当でないときには。
●結論:速やかに実施に適する最寄の場所まで連行した上で行うこともなお、「逮捕の現場」における捜索・差押えと同視することができると解される(222条1項(本文前段)・111条1項(前段)参照)。
●注意:「逮捕の現場と同視」、ではない。
●判例:最決平成28年1月29日
●参考:捜索・差押えの付随措置として、が理論的根拠。逮捕の、ではない。逮捕したから移動できる、ではなく。
●理解:身体・所持品が、場所・物(所持品以外)とは異なる性質・特徴を有するゆえの特別な問題点
●参考:緊急処分説(被逮捕者が所持物を損壊等する危険性は逮捕の現場以外でも変わらない)

第二百二十一条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者その他の者が遺留した物又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。

領置(221条)

●趣旨:占有取得の過程に強制がなく令状不要
●前提:①「遺留した物」(221条)の認定(意思によらない占有喪失の他、意思による所有権放棄等を含む。)
●理由:②ただし、他人に見られることはない期待(プライバシー権)はある。
●要件:そこで、任意捜査の話と同様(捜査比例の原則に照らし判断)必要性、緊急性、具体的状況下における相当性。cf.電話録音はプライバシーも放棄。
●補足:敷地内になるなら、(侵入自体が違法となりうる以上)「所有者、所持者、…保管者」の協力を得て「任意に提出」を受けるべき。それが無理なら、要令状。
●補足:差押えとは異なる。証拠物又は没収すべき物」(222条1項、99条1項)に限定されず。
●補足:発見されたメモ片の復元は、「必要な処分」(222条1項、111条2項)として許される。

検証(A)

●定義:場所、物、又は人について、その形状・性質を五感の作用で感知する強制処分(218条1項)
●参考:検証としての身体検査には身体検査令状が必要(218条1項)。
●参考:必要な処分が可能(222条1項、129条)。
●参考:直接強制(222条1項、139条)まで可能。
●参考:無令状検証も可能(222条1項、220条1項2号・同3項)。
●補足:実務上、少ない。実況見分が多い。

第二百二十五条 第二百二十三条第一項の規定による鑑定の嘱託を受けた者は、裁判官の許可を受けて、第百六十八条第一項に規定する処分をすることができる。
2 前項の許可の請求は、検察官、検察事務官又は司法警察員からこれをしなければならない。
3 裁判官は、前項の請求を相当と認めるときは、許可状を発しなければならない。
4 第百六十八条第二項乃至第四項及び第六項の規定は、前項の許可状についてこれを準用する。

鑑定(A)

●定義:特別の知識経験に基づく意見・判断の報告 。捜査機関によるのは鑑定嘱託(223条1項)。
●補足:鑑定実施のための強制処分として、鑑定留置(167条1項、224条1項)・鑑定処分(168条1項、225条1項)。
●注意:鑑定受託者による身体検査(225条1項・168条1項)は、直接強制不可。
●理由:225条4項が準用する168条6項は139条を準用せず。また、225条4項は139条を準用する172条2項を準用せず。
●比較:鑑定人は可(172条2項・139条)

●以下、個別論点

強制採尿(B)

●問題:危険性?人格権侵害?
●理由:①医師等が相当な方法で行う限り危険性は低い。②屈辱感等は被疑者を裸にする身体検査(検証)(222条1項本文後段、131条1項)でも同様。
●要件:実体的要件として、(1)「被疑事実の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし」、(2)「犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には」、(3)「最終手段として」、(4)「適切な法律上の手続を経て」
●結論:行うことは許容されると解される。
●理由:尿は無価値な老廃「物」といえる(注意:判例の言い回しではない)。
●結論:手続としては、捜索差押許可状(218条1項前段)が必要。
●理由:身体検査(検証として)の性質がある。「被疑者の身体の安全とその人格の保護のため。」
●結論:医師をして医学的に相当な方法による旨の条件付(218条6項準用)の記載が不可欠。
●あ(上記(1)):覚せい剤自己使用の確認には尿検査が確実であり必要性が高い。
●判例:最決昭和55年10月23日
●検討:強制処分にあたる。→どの令状?という書き方について。

●問題②:強制連行
●理由:被疑者が拒否する場合、強制連行なければ、尿の採取という強制採尿令状の目的を達せず。裁判官は、連行をも認める趣旨で令状発布したはず。
●結論:強制採尿令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行できる。それに付随し、捜査比例の原則から、必要最小限度の有形力が許されると解される。
●補足:逮捕されている場合は、比例原則から、強めもOK。
●判例:最決H6.9.16
●補足:逮捕されている被疑者については、捜査機関が出頭を求めることができる(198条1項本文)。出頭要求の一環として採尿場所まで連行することができると解される。

強制採血(B)

●理由:身体の損傷・健康状態に影響する可能性あり。
●結論:強制捜査。法律の根拠及び令状が必要。
●理由:血液:人体の一部として機能。採血には侵襲性あり。専門的知識・経験が必要。
●手続:鑑定(鑑定処分許可状(225条3項))
●問題:直接強制不可
・225条1項・168条1項
・225条4項が準用する168条6項は139条を準用せず。また、225条4項は139条を準用する172条2項を準用せず。
●結論:そこで、身体検査(検証)令状(218条1項後段、222条1項本文後段・139条)を併用。
●私見:唾液・汗・髪・爪・皮膚細胞等についても、同様でOK。人体の一部であり、かつ専門的・技術的(前後)処理が必要なので。ただし、血液・尿を参考に、個別的・具体的に検討。例えば、大量の髪を毛根から採取する等であれば、218条6項も併用。なお、自然に出たもの(汗等)・簡易採取可能物(髪等)、については、差押え許可状等による。

嚥下物(B)

●前提:通常は、自然排出後に差押え
●問題:自然排出困難。必要性・緊急性が高い。体内にある物のレントゲン撮影・下剤の投与による。
●理由:排出されれば、物。
●手続:捜索差押許可状(218条1項前段)
●理由:(強制採尿と比較し)身体に生理的変化を生じさせ、後日まで影響する可能性。●認識:血液等よりは弱い。●検討:血液は増えるが。
●手続:鑑定処分許可状併用(225条3項)。●確認
●対象:捜索差押許可状には、捜索すべき場所「被疑者の身体」、差し押さえるべき物「嚥下物」等と記載。
●留保:条件として、「医師をして医学的に相当と認められる方法によること」等と記載(218条6項準用)。
●私見:体腔内に挿入された証拠物は、身体検査(検証)令状(218条1項後段、・222条1項本文後段・131条1項(・2項))。

第二百二十三条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、又はこれに鑑定、通訳若しくは翻訳を嘱託することができる。
2 第百九十八条第一項ただし書及び第三項乃至第五項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第二百二十四条 前条第一項の規定により鑑定を嘱託する場合において第百六十七条第一項に規定する処分を必要とするときは、検察官、検察事務官又は司法警察員は、裁判官にその処分を請求しなければならない。
2 裁判官は、前項の請求を相当と認めるときは、第百六十七条の場合に準じてその処分をしなければならない。この場合には、第百六十七条の二の規定を準用する。

第二百二十六条 犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が、第二百二十三条第一項の規定による取調に対して、出頭又は供述を拒んだ場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。

第二百二十七条 第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日においては前にした供述と異なる供述をするおそれがあり、かつ、その者の供述が犯罪の証明に欠くことができないと認められる場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。
2 前項の請求をするには、検察官は、証人尋問を必要とする理由及びそれが犯罪の証明に欠くことができないものであることを疎明しなければならない。

第二百二十八条 前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。
2 裁判官は、捜査に支障を生ずるおそれがないと認めるときは、被告人、被疑者又は弁護人を前項の尋問に立ち会わせることができる。

供述証拠の収集(A)

1.任意捜査
(1)被疑者の取調べ(197条1項本文・198条)
ア.在宅事件
イ.身体拘束事件→余罪取調べ
(2)被疑者以外の者の取調べ(197条1項本文・223条)●補足:黙秘権の告知(198条2項)以外は被疑者取調べと同様(223条2項)。
→321条1項2号・3号
2.強制捜査
(証言義務あり)
被疑者以外の者の証人尋問請求(197条1項ただし書、226条・227条のみ)●補足:223条では足りない場合
→321条1項1号 ●補足:他に証拠保全請求による証人尋問調書(179条)・他事件の公判調書(判例は(証人としてではない。)被告人供述でも可とする。)等。
●補足:321条2項:前段(既に証人尋問を経ている。類型的に得心状況あり。なので。)、後段(当事者の立会いあり(142条・113条)、成立の真正が類型的に確保。書面化に合理性あり。なので。なお、「裁判官」の検証には、受託裁判官によるもの(142条・125条)と証拠保全(179条)がある。●認識:当該事件の。)

第三十九条 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
2 前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。
3 検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。ただし、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。

「立会人なくして」(39条1項)(A)

●問題の所在:接見後に捜査機関への内容報告
●趣旨:接見交通権(39条1項)は、弁護人依頼権(憲法34条前段)に由来し、身柄拘束を受けている被疑者に弁護士から援助を受ける機会を付与する重要な権利である。また、弁護人等にとって、最も重要な固有権のひとつ
●理由:その有効かつ適切な行使には、自由な意思疎通が必要不可欠であるが、立会人があるとそれが害される。また、事後にでも接見内容が捜査機関に知られるなら、当該意思疎通が萎縮し、有効かつ適切な行使が困難となる。
●結論:そこで、「立会人なくして」(39条1項)とは、接見終了後においても、接見内容を知られない権利(秘密交通権)を保障したものと解される。
●展開:捜査機関は、秘密交通権に配慮すべき法的義務を負う。原則として、①弁護士等との接見における供述について聴取することは禁止されている。供述開始しても制止する義務あり。
●展開:被疑者が自発的に接見内容を供述したとしても、…弁護人固有の接見交通権を保護する必要性は低減しない。
●展開:③接見内容を記載した供述調書の取調べ請求は、弁護人と被告人の「信頼関係を破壊するおそれのある行為」であり、弁護活動において「秘密交通権を行使する機会を持つことについて、心理的な委縮効果を生じさせた。」●補足:類型証拠開示請求(316条の15)もあるため、②調書化自体も独自の違法行為、との考え方もある。
●補足:弁護人に対し捜査機関に対するのと異なる供述をした理由を尋ねることは当然・職責であり、許容されうる。それ以上、踏み込むとOUT。
●裁判例:福岡高裁平成23年7月1日判決

「捜査のため必要があるとき」(39条3項本文)(AA)

●前提:客観的証拠が少ない場合、被疑者の供述が重要。他方、自白の有無・内容が焦点となるため、被告側の防御も重要。争い多し。なお、被告人と弁護人との接見制限は不可(当然)。
●注意:接見指定の要件の問題
●問題:「捜査のため必要があるとき」(39条3項)
●理由:接見交通権(39条1項)は、弁護人依頼権(憲法34条前段)に由来し、身柄拘束を受けている被疑者に弁護士から援助を受ける機会を付与する重要な権利である。その制約はできる限り限定的に解すべき。他方、身体拘束の厳格な時間制限(203条から208条の2)に照らし、捜査の必要性にも配慮が必要である。
●結論:そこで、「捜査のため必要があるとき」とは、その中断により捜査に顕著な支障が生じる場合に限られると解される。
●あ:現に被疑者を取調べ中であるとか、実況見分・検証等に立ち会わせている等。それらの間近く確実な予定、は、原則として含まれる。●補足:弁解録取は法律上必要(205条1項参照)
●補足:「原則として」を失念しない。典型的な例示ではあるものの、例外もありえる。
●判例:最判平成11年3月24日(大)
●補足:余罪を理由とした起訴後の接見指定(論点):「被告事件について防禦県の不当な制限にわたらない限り」可。公判期日近し。裁判員裁判対象事件で急ぎ打ち合わせ。等は不可可能性高い。●補足:実務上、本罪の勾留継続(保釈可能性低)の場合、余罪について逮捕・勾留しない場合も少なくない。その場合、接見指定一切不可。当然。
●補足:被疑者の身体利用と関係のない必要性(例:罪証隠滅の防止)は非該当。
●参考:峻別!接見等禁止(80条を根拠とする接見につき、裁判官(第一回公判期日後は裁判所)が、弁護人(となろうとする者)以外の者についてする。逃亡・罪証隠滅のおそれも理由になる。ただし、既にそれらを理由に勾留されている以上、より厳格に判断される。)
●参考:準抗告(430条1項)をしても、その手続き中に接見できるようになる。実益限定的。そこで、国賠で争われることが多かった。最近の主眼は秘密交通権。

「権利を不当に制限」(39条1項ただし書)(初回接見)(A)

●注意:接見指定の内容の問題
●問題:日時・場所を指定する場合、「権利を不当に制限」(39条1項ただし書)に該当するか。
●理由:この点、逮捕直後の初回の接見は、身体を拘束された被疑者にとっては、弁護人の選任を目的とし、かつ、今後捜査機関の取調べを受けるにあたっての助言を得るための最初の機会であり、憲法34条の保障の出発点をなすものであることから、被疑者の防御の準備のために特に重要である。
●結論:捜査機関は、弁護人等と協議し、できるだけ速やかな接見等のための日時を指定しなければならない。
結論:特に逮捕直後の初回接見の指定に当たっては、捜査機関は、弁護人となろうとする者と協議して、(1)即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障を生じるのを避けるとが可能かどうかを検討し、(2)それが可能なときは、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情がない限り、(3)たとえ比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認めるようにするべきである。
●帰結:よって、かかる義務を果たしていない場合には、「被疑者の防御の準備をする権利を不当に制限する」ものといえ、39条3項ただし書に反し違法と解される。

●補足:「捜査に顕著な支障」との文言は、11年判例と同様だが、そちらは弁護士等の申出そのままでは、という場合の話であり、こちらは接見時間を指定した場合の支障の話。
●判例:最判平成12年6月13日③
●補足:この判例は、「逮捕直後の初回の接見」に限定せず妥当すると解されている。
●補足:引致後の所要手続(犯罪事実の要旨の告知等、続く指紋採取・写真撮影等)を終えた後の話。

「権利を不当に制限」(39条1項ただし書)(面会接見)(A)

●問題:「権利を不当に制限」(39条1項ただし書)●確認
●原則:被疑者の逃亡や罪証隠滅を防止でき、戒護上の支障が生じないような設備のある部屋等が存在しない場合、接見拒否は、直ちに違法ではない。
●例外:しかし、弁護人等がなお即時の接見を求め、その必要性が認められる場合、秘密交通権が十分保障されない短時間の接見(面会接見)でも良いか、弁護人等の意向を確かめ、適宜特別の配慮をすべき義務あり。
●結論:検察庁舎内での場所・立会い・方法については、検察官に合理的な裁量権あり。逸脱濫用の場合に限り、上記特別の配慮を怠ったとして違法。

ワヴィニー

日本の刑事法(刑事訴訟法(捜査))は「全く知らない」というのもマズイかと考えまして、試みに…

律子

「『全く知らない』訳ではない」ということだけは、かろうじて理解できました(笑)。

  • X
論点(門戸)

前の記事

法定代位
論点(門戸)

次の記事

相殺