【第24回】 準正の準拠法
…というわけなんです。
本事案については、家族会議の際に議題になったに過ぎないのですが…
目次
テーマ
1.国際裁判等管轄等
● 国際私法の適用場面
2.準拠法選択等
● 準正の準拠法
● 不統一法国(地域的・人的)に属する者の本国法
3.外国判決等の承認・執行等
● 国際私法の適用場面
事案
● 律子の伯父A(日本人)は、B(甲国人)と知り合い、日本において同棲している。
● その後、Bは懐胎中にAと旅行していた際、乙国において、Aの子C(乙国人)を出産した。
● その後、AとBは婚姻し、Aは、乙国法に基づき、Cを認知した(なお、日本法(民法789条)・甲国法に基づく認知はしていない)。
● ある日の家族会議において、CはABの嫡出子としての身分を有しているのか、議題となった。
本事案も、甲国・乙国・日本に跨ることから、「国際的私法関係」に属しますね。
1.国際裁判等管轄等
(1)該当なし
本事案については、家族会議での議題になったに過ぎないということで、行政(戸籍窓口への届出等)・司法(国際裁判管轄等)等の話は不要ですね。
国際私法(立法)は、それら行政・司法等が関係しなくとも常に実体的に適用されているという点については、良い機会ですので再確認しておきましょう。
ただ、もし本事案が人事訴訟等に発展したらどうなるのか?、については、自分なりに考えてみて下さい。
甲国法・乙国法・日本法の全部又は一部が異なっていることから、次に準拠法選択が問題となりますね。
2.準拠法選択等
(1)非嫡出親子関係の成立(子の出生の当時)
法の適用に関する通則法
(準正)
第三十条 子は、準正の要件である事実が完成した当時における父若しくは母又は子の本国法により準正が成立するときは、嫡出子の身分を取得する。
2 (略)
● 趣旨
(通則法30条1項が、父若しくは母の本国法に加え、子の本国法をも選択的に準拠法とした趣旨)
1.「嫡出親子関係の準拠法との平仄」(父若しくは母の本国法を準拠法とした趣旨)
2.「認知の成立につき子の本国法も準拠法として認めていることから、子の保護の観点もあり、子の本国法に基づき認知があった場合の認知準正も想定して」(子の本国法をも選択的に準拠法とした趣旨)
【南・解説 132頁参照】
● 単位法律関係
・ 婚姻準正
・ 認知準正 等
● 連結点
選択的連結
・ 父の国籍(要件である事実が完成した当時)
・ 母の国籍(要件である事実が完成した当時)
・ 子の国籍(要件である事実が完成した当時)
● 準拠法
・ 父の本国法(要件である事実が完成した当時)
・ 母の本国法(要件である事実が完成した当時)
・ 子の本国法(要件である事実が完成した当時)
本事案においては、Aは、Cについて、「日本法(民法789条)・甲国法に基づく認知はしていない」とのことですから、父母たるABの本国法上、CはABの嫡出子としての身分を取得していません。
しかし、「Aは、乙国法に基づき、Cを認知した」とのことですから、子たるCの本国法上は、CはABの嫡出子としての身分を取得しています。
さて、本事案には関係ありませんが、通則法30条にも28条2項・29条3項と同様の条項がありますので、一読しておきましょう。
(2)死亡の場合
法の適用に関する通則法
(準正)
第三十条 子は、準正の要件である事実が完成した当時における父若しくは母又は子の本国法により準正が成立するときは、嫡出子の身分を取得する。
2 前項に規定する者が準正の要件である事実の完成前に死亡したときは、その死亡の当時におけるその者の本国法を同項のその者の本国法とみなす。
● 趣旨
(通則法30条2項)
・父・母・子が準正の要件である事実の完成前に死亡した場合、それらの者の「本国法」が存在しなくなることから、かかる事態に対応するための見做し規定。
そういえば…
家族会議で雑駁な話をする中、Cの本国法である乙国は、(1)地域により法律が異なる、或いは(2)人により適用される法律が異なる、等の話もされていたようです。
結局、いずれでもなかった、ということのようですが…
(3)不統一法国(地域的・人的)
【設例(その1)】
● 本事案において、Cの本国である乙国は、地域により法を異にする。
法の適用に関する通則法
(本国法)
第三十八条 (略)
2 (略)
3 当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。
● 趣旨
(通則法38条3項)
1.「ヘーグ国際私法会議の作成した各種の条約がいずれも間接指定方式によっていること」
2.「間接指定方式によれば、当該当事者がその本国で裁判がされる場合と同じ法律によることができ、指定方式としては、この方が優れている」
【南・解説 183頁参照】
● 間接指定方式
不統一法国に属する者の本国法につき、本国法の規則に従い間接的に指定する方式をいう。
(法廷地(が日本であると仮定した場合の日本)の国際私法に基づき直接指定する方式との比較において「間接」。)
本設例(その1)においては、丙国の「規則」が不明ですが、それに基づき指定される法をCの本国法とする、ということですね。
【設例(その2)】
● 本事案において、Cの本国である乙国は、人的に法を異にする。
(人的に法を異にする国又は地の法)
第四十条 当事者が人的に法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある法)を当事者の本国法とする。
2 前項の規定は、当事者の常居所地が人的に法を異にする場合における当事者の常居所地法で第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)、第二十六条第二項第二号、第三十二条又は第三十八条第二項の規定により適用されるもの及び夫婦に最も密接な関係がある地が人的に法を異にする場合における夫婦に最も密接な関係がある地の法について準用する。
● 趣旨
(通則法40条1項)
通則法38条3項同様
【南・解説 203頁参照】
本設例(その2)についても、本設例(その1)と同様の処理がされるのですね。
なお、通則法40条2項は、1項の連結点(国籍)とは異なり、常居所・最密接関係地が連結点となる場合においても、1項と同様の処理をする趣旨の規定だと理解しました。
2項については、現時点では、一読しておけば十分でしょう。
3.外国判決等の承認・執行等
(1)該当なし
本事案については、家族会議での議題になったに過ぎないということで、外国における行政(戸籍窓口等への届出)・司法(国際裁判管轄等)等の話は不要ですね。
国際私法(立法)は、それら外国の行政・司法等が関係しなくとも常に実体的に適用されているという点については、良い機会ですので再確認しておきます。
ただ、もし本事案が外国において人事訴訟等に発展したらどうなるのか?、については、自分なりに考えてみます。
まとめ
1.国際裁判等管轄等
● 該当なし
2.準拠法選択等
● 通則法30条1項・2項
● 通則法38条3項
● 通則法40条1項・2項
3.外国判決等の承認・執行等
● 該当なし
最後に、甲国法等の外国法への向き合い方については、こちらを参照しておいて下さい。
●「外国法(向き合い方)~準拠法として」
さて、様々な話をして来ましたが、もう夜中になってしまいましたね…明日は早朝から所用がありますので、お話はこれぐらいにしておきましょうかね。
「用事」といえば…
【第25回】 養子縁組の準拠法