先取特権(保険)(東京高裁平成29年6月30日決定)

律子

標記の件、事実の概要は理解しましたが、判旨について質問があります。

【事実の概要】
・日本船籍の漁船(被害者・日本法人X所有)と韓国船籍の貨物船(加害者・韓国法人Y所有)とが公海上で衝突。
・YとZ1・Z3(韓国)及びZ2(英国)との間で責任保険あり。
・Yについて、韓国において倒産手続開始。日本において手続承認決定(外国倒産手続承認援助法22条1項)。強制執行等禁止の援助処分(同法28条1項)。
・Xは、不法行為に基づく損害賠償請求権を被担保債権・遡及債権として、先取特権(保険法22条1項)に基づき保険金支払い請求権の差押命令を求め申し立て。
●東京地裁が発令。執行抗告申立て。

ワヴィニー

骨子だけなら、答えられますよ。

【判旨】破棄自判(確定)。申立て却下
・「債権先取特権…通則法…明文の規定を設けていない。…条理に従って…。」

・「法定担保物権の成立の準拠法…目的物の所在地法…被担保債権の準拠法を累積適用。…物権の問題であるとともに, …法定担保物権…被担保債権の準拠法が…認めていないときにまで…認める必要がない…。」

・「もっとも, …債権…通則法13条1項にいう目的物の所在地法を観念することはできない。しかし, 同項…目的物の所在地法…物の排他的支配…目的物の利害と密接な関係を有することによる…。債権先取特権…客体である債権を支配…客体である債権自体の準拠法による」

・「本件先取特権の客体である債権…準拠法は, いずれも英国法」

・「公海上で起きた…通則法17条本文にいう『加害行為の結果が発生した地の法』が存在せず, 同条は適用されない。」
・「衝突船舶委の旗国法を累積適用」

・「英国法と日本法と韓国法が累積適用」

・「日本の保険法22条1項…成立する旨を規定するけれども, 英国法及び韓国法…相当する制度は存在しない。」
・「したがって、成立しない。」

律子

他にも質問がありますが、またの機会に。

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