「住所」
日本の国際私法の中軸たる「法の適用に関する通則法」(通則法)は、いわゆる属人法の決定基準として、国籍の他に常居所を採用したのみであり、「住所」は採用されていない、と聞いたのですが…
通則法の中には、「住所」との文言が3つ残っているようです。
以前にもご説明したはずですが、通則法の規定の中で「日本法」との文言を使用している条文を見てみましょう。
(後見開始の審判等)
第五条 裁判所は、成年被後見人、被保佐人又は被補助人となるべき者が日本に住所若しくは居所を有するとき又は日本の国籍を有するときは、日本法により、後見開始、保佐開始又は補助開始の審判(以下「後見開始の審判等」と総称する。)をすることができる。
(失踪の宣告)
第六条 裁判所は、不在者が生存していたと認められる最後の時点において、不在者が日本に住所を有していたとき又は日本の国籍を有していたときは、日本法により、失踪の宣告をすることができる。
2 前項に規定する場合に該当しないときであっても、裁判所は、不在者の財産が日本に在るときはその財産についてのみ、不在者に関する法律関係が日本法によるべきときその他法律関係の性質、当事者の住所又は国籍その他の事情に照らして日本に関係があるときはその法律関係についてのみ、日本法により、失踪の宣告をすることができる。
結論としては、日本の裁判所の国際裁判管轄の管轄原因として「住所」を規定しているものです。したがって、属人法の決定基準として、少なくとも通則法においては「住所」が採用されていない、というのは正しいです。
しかし、「住所」との文言の後に、各々「日本法により」との文言がありますが…
その点については、通則法5条・6条自体の復習をしておいて下さい。
なお、通則法以外の特別法においては、属人法の決定基準として「住所」が使用されている例もあります。しかし、ここではこれ以上立ち入りません。