「法廷地漁り」
「『法廷地漁り』は問題だ。」という説明を聞いたのですが、明確なイメージが持てません…
「法廷地漁り」は、原告が自己に「有利」な法廷地を選んで訴え提起等することを言いますが、当該「有利」についての説明が詳しくはなかったのではないでしょうか?
例えば債権の消滅時効について言えば、消滅時効を(日本の民法における判例・通説同様の「実体」上の制度ではなく)「手続」上の制度と位置付ける法廷地において、(「手続は、法廷地法による」との準拠法ルールに基づき)当該法廷地法が適用される結果、債権の消滅時効が完成していないこととなる場合、原告は、そこで訴えを提起すれば、債権が時効消滅していないことを前提に自己に有利な判決を得ることができます。
「有利」とは、その点を指していると理解しましたが…
確かに「有利」である旨の説明としては正しいのですが、その「前提」として、当該法廷地に強制執行可能な被告所有の財産がなければ、法律(ひいては判決)の内容だけ原告に有利であっても意味が無いのではないでしょうか?
そこで、「法廷地漁り」の問題性(原告にとっての有利性)を説明する場合には、法律(ひいては判決)の内容に加え、強制執行の観点でも原告に有利な場合を例示(法廷地に強制執行可能な被告所有の財産がある点まで例示)する方がベターだと私は考えています。
法廷地に強制執行可能な被告所有の財産がない場合、法廷地漁りの例示としては相応しくないのでしょうか?
いえ、「法廷地漁り」の「展開」として、例えば原告に有利な法律適用の結果下された判決を以って、被告所有の財産が所在する国において容易に強制執行が可能であれば、そのような場合を例示しても良いでしょう。
「法廷地漁り」の「前提」・「展開」についての説明がなかったため、イメージが持ち難かったのだと理解しました。
殊更に行う「漁り」には最終的な目的があるはずですから、そこまで含めた例示・説明をする方がむしろ自然と言えるかも知れません。
そのような「前提」・「展開」について例示・説明があれば、単に法律(ひいては判決)が原告に有利である、という理解を超え、より具体的なイメージが持てるでしょう。
以上、説明の便宜上、財産権上の訴えに絞って説明しましたが、国際私法における他の分野、例えば人事・家事分野についても、自分なりに考えてみて下さい。