労働契約(東京地裁平成28年9月26日判決)

律子

標記の件、事実の概要は理解しましたが、判旨について質問があります。

【事実の概要】
・X(日本人)は、Y1(雇用主、英国法上のLimited Partnership)・Y2(出向先、米国Delaware州法人)に対し、金融商品取引業務に係る雇用契約(準拠法:英国法)上の地位確認の訴え等を提起した。
・Xは、当該雇用契約の締結は平成20年6月、当初はY1の英国事務所にて勤務し、その後Y2日本支店での勤務(遅くとも平成21年7月頃から)を経て、Y2へ出向し(平成23年1月)、最終的には24年9月4日まで勤務していた。
・Yらは、Xに対し、平成24年5月、雇用契約が同年6月4日に期間満了となる旨告知。併せて新オファーをしたが、Xからは回答なし。
・Xは、最密接関係地法(通則法12条1項)として、労働契約法16条・19条が適用される旨、主張。

・Yらは、英国法に基づき、本件雇用契約が期間の定めのないものになる旨、主張。

【判旨】一部認容、一部棄却。

・(通則法7条により英国法が法選択されている点は認定した上)Xが, …意思表示をしていることから, 通則法12条1項により, …日本法のうちの特定の労働法規の適用ができるかが問題となる」
・「通則法12条1項は, …要件として, 最密接関係地法であることを要するとしているため, …英国法と日本法のいずれであるかが問題となる」
・「通則法12条2項は, 労務提供地の法を最密接関係地法と推定する旨定めているところ, その趣旨は, 労働契約の継続性や集団性鑑み, 同一の職場で働く労働者と同等の保護を保障しようとするものと解され,…現実の労務…最密接関係地法との提供がどこでされたかを基に判断すべき…」
・「…労働契約継続途中に労務提供地が変わった場合…新たな労務提供地の法を最密接関係地法と推定することが可能…」
・「本件では, …日本…労務提供地…最密接関係地法…日本法であると推定…」
(Yら主張に係る事情はいずれも当該推定を覆すものにあたらないと認定し、日本法・強行法規の適用ができるとした。)

・「1個の雇用契約についての雇用の終了とていう一つの場面に関して適用される法を分断…法律関係をいらずらに複雑にする上, 当事者の予測が及ばない不合理な規律を形成して, その適用を可能とするものであって相当性を欠き, にわかに採用し難い。」

律子

他に(も質問がありますが、またの機会に。