【予備試験】民事訴訟法(R6)
問題
[民事訴訟法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は、1:1)
次の文章を読んで、後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
【事例】
Xは、伝統工芸品の製作を手掛けている芸術家である。Yは、Xの製作活動を支援しており、Aを代
理人として、Xの工芸品を頻繁に購入していた。
Xは、新作の工芸品が完成した旨をAに伝えたところ、Yが300万円で購入を希望しているとAか
ら聞いた。そこで、Xは、いつものようにAを通じて、新作の工芸品を300万円でYに売り渡した
(以下、この契約を「本件契約」といい、本件契約の売買代金を「本件代金」という。)。しかし、本
件代金が支払われないので、XがYに事情を直接聞いたところ、Yは、Xに対し、Aから新作の工芸品
の話など聞いたことはなく、Aにその購入を依頼した覚えもないことから、本件代金を支払うつもりは
ないと答えた。また、Yは、Xに対し、現在、Aとは連絡が取れなくなっていることも伝えた。その
後、Xは、弁護士L1を訴訟代理人として、Yに対し、本件代金300万円の支払を求める訴えを提起
した(以下「本件訴訟」という。)。これに対して、Yは、弁護士L2を訴訟代理人として本件訴訟に
応訴し、XY間の本件契約の成立を争った。弁論準備手続における争点整理の結果、本件訴訟において
は、本件契約における代理権の授与の有無及び表見代理の成否が主要な争点となった。
〔設問1〕
弁論準備手続終結後の人証調べは、前記の争点について行われた。結審が予定されていたその後の口
頭弁論期日において、L2は、YがXに対して有する貸金債権300万円(弁済期は本件訴訟の提起前
に既に到来していた。)を自働債権とし、本件代金に係る債権を受働債権として、対当額で相殺する旨
の相殺の抗弁を新たに主張した。L1がL2に対して、相殺の抗弁を弁論準備手続の終結前に主張する
ことができなかった理由について説明を求めたところ、L2は、「相殺の抗弁は自己の債権を犠牲にす
るものであるから、初めから主張する必要はないと考えていた。」と述べるとともに、「相殺権の行使
時期には法律上特段の制約がなく、判例によれば、基準時後に相殺権を行使したことを請求異議の訴え
の異議事由とすることも許容されている以上、弁論準備手続の終結後に相殺の抗弁を主張することも許
容されるべきである。」と述べた。L1は、本件訴訟の開始前から相殺適状になっており、仮定的抗弁
として主張することができたにもかかわらず、それをしなかった理由について更に説明を求めたが、L
2からは前記の説明以上の具体的な説明はされなかった。そこで、L1は、相殺の抗弁は時機に後れた
攻撃防御方法に当たるとして、その却下を求めた。
この場合において、裁判所は相殺の抗弁を却下すべきかについて、検討しなさい。
〔設問2〕(〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。)
主要な争点が明らかになったため、Xは、Aに訴訟告知をした。しかし、Aは、本件訴訟に参加しな
かった。その後、本件訴訟では、弁論準備手続が終結し、人証調べが行われた。その結果、YはAに代
理権を授与しておらず、また、表見代理の成立は認められないことを理由として、Xの請求を棄却する
との判決がされた(以下「前訴判決」という。)。
前訴判決の確定後、Xは、Aは無権代理人としての責任を負うとして、Aに対して本件代金300万
円の支払を求める訴えを提起した(以下「後訴」という。)。これに対して、Aは、応訴し、AはYか
ら代理権を授与されていたと主張した。
Xは、上記のようなAの主張は訴訟告知の効果によって排斥されるべきであると考えている。Xの立
場から、Aの主張を排斥する立論を、判例を踏まえて、展開しなさい。なお、解答に当たっては、Aが
補助参加の利益を有していたことを前提として論じなさい。
【出典:法務省ウェブサイト ()】
解答例
出題の趣旨
【出典:法務省ウェブサイト ()】