【予備試験】憲法(R2)
問題
【出典:法務省ウェブサイト (001340861.pdf)】
解答例
第1 本問では、報道関係者の犯罪被害者等に対する取材等が制限されている。
取材等に係る取材の自由について、表現の自由の沿革は思想・意見の発表の自由にあるものの、かかる発表は取材があって初めて充実するものであり(自己実現の価値)、また当該自由は国民の知る権利に奉仕することから(自己統治の価値)、21条により保障されると解される。判例も博多駅TVフィルム事件において、十分に尊重に値するとは判示している。
第2 しかし、本問立法により、取材等中止命令が発せられ、その違反に対し罰則が科せられることから、取材の自由は制限されている。
第3 もっとも、取材の自由も無制約なものでははく、公共の福祉(12条、13条)による合理的制限を受ける。
この点、取材の自由は上述の通り、権利の性質上重要なものである。他方、本問における規制態様は、最終的には罰則をもってするものであり、強度といえる。
そこで、本問立法の憲法適合性については、①その目的がやむに已まれぬものであり、かつ②その目的が必要不可欠・必要最小限といえるか否かという基準により決せられるものと解される。
第4 ①について
本件立法の目的は、犯罪被害者及びその家族等の保護である。
犯罪被害者等については、犯罪等による被害にとどまらず、悲嘆の極みにあることから、メディア・スクラムが生じた場合、例えば治療を要する程の心理的負担を受ける等の二次的被害が想定される。
これは、犯罪等による被害を拡大するものであり、それを防止すべく犯罪被害者等の保護を図る立法目的はやむにやまれるものにあたる。
第5 ②について
本問法律は、例えば深夜に電話等の過剰な取材をする特定の報道関係者に対する者に限られず、「報道関係者一般」をも対象とするものであり、その対象者は広い。
しかし、かかる一般的な規制により、取材等が一切行われることがなくなり、例えば事件の真相を追及するため、或いは将来の同種犯罪の予防のため、取材に応じていただく等の説得をする機会すら与えられないこととなる。
一般的な制限でなくとも、例えばNHK等の準国営の報道機関と放送法等による適切な規制を受けている民放数社に限定した取材を認め、犯罪被害者等の物的・心的負担を和らげつつの取材を認めることは十分可能である。
よって、本問立法は、「報道関係者一般」について一切の取材を禁止し、その違反について最終的には罰則を以て強制している点において、必要不可欠・必要最小限とはいえない規制手段を用いている。●補足:「捜査機関を同意確認のための主たるルートとすることの問題性」についても。
第6 結論
以上より、本問立法は違憲である。
以上
出題の趣旨
【出典:法務省ウェブサイト (001340861.pdf)

