離婚(無効確認)(東京高裁平成30年7月11日判決)
標記の件、事実の概要は理解しましたが、判旨について質問があります。
【事実の概要】
・X(日本国籍)とA(日本国籍)は、共に日本で出生し、婚姻し、婚姻生活を送っていた。
・その後、米国加州に移住、米国籍を取得(日本国籍喪失)。
・その後、Aは、B(日本国籍)と交際開始。
・Aは、協議離婚の届について、Xの真意に反し署名させ、虚偽記載をし、X押印を美装し、サンフランシスコ総領事に提出。
・Xは、Aの暴力に耐えられず、日本へ帰国し、居住している。
・Aは、Bに対し全財産を付与する旨の遺言書を作成した後、死亡。
・Xは、検察官に対し、当該協議離婚の無効確認訴訟を提起(@東京地裁)。
・Bは、当該訴訟に補助参加し、国際裁判管轄・訴えの利益を否定する旨の主張。
・なお、Xは、Bに対し、別途自己の所有不動産からの退居及び明渡等の請求訴訟を提起している(@米国加州裁判所)。その理由として、当該協議離婚の無効を主張。
骨子だけなら、答えられますよ。
【判旨】原判決取消し・差戻し
・Xは、Aに遺棄され、日本への常居所移転を強いられた。よって、国際再裁判管轄を肯定。その他の補強事情として:
・X・A・B(日本で出生後、相当の期間、日本に居住。米国籍取得までは、日本国籍。)の属性等から、「本件無効確認訴訟は日本と密接な関係がある。また, 当事者その他の関係者は全員日本語を解するので, 日本の裁判権…権利行使を困難にするとはいえない。」
・Xの健康状態に鑑み、米国加州裁判所への出頭は困難。Bによる東京の裁判所への出頭につき、同様の事情を認めるに足りる証拠はない。
・主な証拠はに日本語で作成されている。英訳によっても、日本・日本人(女性)について知識等がない者には「正確な理解が困難…, …手間や費用の負担も大きい」一方、英語による証拠(和訳付き)を日本の裁判官が理解することは容易。
・協議離婚…日本独自の制度等は、知識がない者には理解困難。
・離婚の準拠法が米国加州法であっても日本での審理は特段困難ではない。
・米国加州裁判所において係属中の訴訟は、そこで提起するしかなく、そこで当該協議離婚の無効につき既判力ある判断がされるか否か不明であることから、国際訴訟競業は、日本の国際裁判管轄や訴えの利益を否定する理由にならず。
他にも質問がありますが、またの機会に。