刑事訴訟法(公訴・公判・裁判)~国際私法の範囲外

「…刑事法等の公法の抵触問題と私法のそれとはその性質が大いにちがうものであるから、…国際刑事法は国際私法の範囲から除外するのが妥当である。」
(江川英文『国際私法(改訂)』(有斐閣、1957)17頁)

目次

【留意点】

●憲法の条文
●具体的な問題の所在
●私見:憲法と同様(当然。憲法の具体化。)
●行政警察活動においては「警察比例」(操作は「捜査比例」)
●重大性については、刑法の法定刑等を示しつつがベター。
●その証拠から、どの事実が証明できるか?
●裁判長の訴訟指揮権(294条)中、特に重要なものは、①尋問・陳述の制限(「相当でないとき」(295条●項)、及び②求釈明(規則208条●項)
●一罪の一部起訴の問題は、全部につき有罪証拠・心証が揃っているが、その一部を起訴する場合(証拠・心証が十分でないため、一部断念することではない。)。
●「法律上の推定規定」(例:公害罪法5条、麻薬特例法14条)と挙証責任の転換(例:刑法207条、230条の2)は異なる。
●「推認」とは、推定による事実認定をいう。
●「誘導尋問」とは、尋問者が希望・期待する答えを暗示する尋問をいう。
●事前準備(規則178条の6)。
●証拠の厳選(規則189条の2)。
●証拠調べについては、法300条前後、規則200条前後。なかんずく、証人尋問については、法150条前後、規則100条前後も。
●被告人質問は証拠調べ手続きには含まれない(広義の人証に過ぎない。)。実務上、弁護人からの申出に基づき、職権証拠調べとして実施(弁護人⇒検察官⇒裁判所の順が一般。)。
●結論:「知覚・記憶・表現・叙述」で行こう。「表現」は誠実性・真摯性。「叙述」は正確性・明確性。●検討:規則199条の6が「表現」を「証人の信用性に関する事項」として整理しているとする文献があるも、逆だろう。文言上は。また、(「知覚・記憶・叙述」ではなく)「知覚・記憶・表現」説もあるはずでは?(それにも条文上の根拠があり。というよりも、上記「逆」を正確に理解してか。いや、違う。文言上、「表現」しかないので。)よって、ごちゃごちゃ考えず、全部入り、ということで。
●訴因変更(罰条):①一罪⇒数罪:事実関係変更なしなら、訴因変更不要。罪数評価可能な限度で補正。ありなら、適宜、罪数補正を伴う訴因変更。②数罪⇒一罪:事実関係変更なしなら、訴因変更不要。常習犯等の場合、常習性の発露等の記載が必要となるため訴因変更となりうる。ありなら、同①。適宜、狭義の同一性の範囲で訴因を1つにする。●認識:あまり
●過失犯の訴因:①前提事実、②注意義務、③義務違反(過失態様)。●認識:「…。よって、…しなければならないところ。…しなかった過失がある。」という話。

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二条 (略)

第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、かつ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

第三十六条 (略)

第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第四十条 (略)

第百九十七条 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。ただし強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。
2 捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
3~5(略)

第百九十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。ただし、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
2 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
3~5(略)

公訴

起訴後取調べ(A)

●問題:「被疑者」(198条1項本文)
●原則:任意捜査(197条1項本文)として可能。
●留保:しかし、公判中心主義(43条1項、282条1項等)・当事者主義(256条6項、298条1項、312条1項)
●理由:そこで、「なるべく避けなれければならない。」
●補足:第一回公判期日前であれば、公判廷外での証拠収集活動(証拠保全(179条)・証人尋問(226条、227条))は可能。
●実務:弁護人の同席は認めていないが。
●補足:必要性の例としては、自白により、無罪となる可能性が出てきた。等。
●判例:最決昭和36年11月21日

第二百五十六条 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
2 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
二 公訴事実
三 罪名
3 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
4 罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。ただし、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずるおそれがない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。
5 数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。
6 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめるおそれのある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。

告訴の追完(B+)

●問題:親告罪(器物損壊罪(刑法261条・264条)、名誉棄損罪(同230条)等)
●反対説:告訴の追完を否定しても、検察官は再起訴が可能。訴訟経済の観点からは告訴の追完を認めるべきとも。
●理由:再起訴までの間に被害者と被告人との間で示談が成立し、告訴が取り下げられる可能性もあり(237条1項)、訴訟不経済を生じるとは限らない。また、親告罪につき告訴なき起訴は、不適法手続につき被告人に応訴を強制する点で瑕疵は重大であるため、起訴の無効を明らかにする必要性が高い。
●結論:告訴の追完は否定すべきである。

訴訟条件存否の判断基準(AA)

●問題点:訴訟条件の存否は、訴因か、裁判官の心証か。
●理由:そもそも審判の対象は、一方当事者たる検察官の主張する具体的事実たる訴因である。
●結論:実体審理の有効要件たる訴訟条件の存否の判断も訴因を基準とすべきである。

被告人(氏名冒用)(AB)

●問題:公訴提起の対象者と起訴状に表示された者とが異なる場合(真犯人が他人の氏名を冒用して取調べを受け、そのまま起訴された)
●理由:公訴提起時点では、起訴状以外に資料がない。
●結論:原則として、起訴状の表示で決すべきと解される。
●例外:起訴状の表示は合理的に解釈すべく、検察官の意思や被告人とされた者の行動も考慮して決される。
●認識:形式の話(他人が犯人の氏名を冒用するのは、身代わり、ではない。現実的可能性なし。)
●認識:表示・意思・行動の多数決で特定、という考え方は妥当ではない。

被告人(身代わり)(AB)

●問題:起訴状に表示された者が形式・実質面から被告人(A)である点に争いなし。身代わり犯人(B)の取り扱いの問題。●認識:かばう(普通の)話。
1.冒頭手続で発覚:Bを手続から排除。Aを召喚。
2.証拠調べ後:Bにつき公訴棄却(338条4号類推)。Aを召喚し冒頭から。
3.有罪判決言渡し後:Bにつき上訴(378条2号又は3号)。Aを召喚し冒頭から。
4.有罪判決確定後に発覚(●争いあり)
・再審説(435条6号)(無罪を言い渡すべき事由あり)か(●B)。
・非常上告(454条)(本来公訴棄却すべきであったところ下された原判決の法令違反)か。

審判対象論(A)

●理由:当事者主義(256条6項、298条1項、312条1項等)の下、
●結論:裁判所の審判対象は、一方当事者たる検察官が主張する具体的事実たる訴因
●展開:(その設定・変更は検察官の専権(248条、257条等))●起訴便宜主義(248条)・公訴取消(257条)等

訴因の特定(原則論・幅のある記載)(A)

●前提:争点明確化・不意打ち防止は、訴因変更(3基準の②等)に限らず、訴訟を通じた過大。例:①予備的主張(検察官)等、又は②求釈明・発問(裁判所)等の有無等。不遵守は訴訟手続きの法令違反(最判昭和58年12月13日)。
●問題:犯行の「日時、場所及び方法」(256条3項))について幅のある記載
●趣旨:訴因の特定の趣旨は、裁判所に対し審判対象を明示する点(識別機能)にあり、被告人に対し防御の範囲を明示する点(防御機能)は、求釈明(規則208条)等を通じ、公判の過程において図れば足りる。
●要件:そこで、他の犯罪から識別可能である限り、
●結論:ある程度幅のある記載も許されると解される(「できる限り」(256条3項))。
●効果(重要):公訴棄却(338条4号)
●補足:訴因逸脱認定は、不告不理の原則違反となり、絶対的控訴理由(378条3号後段)。
●参考:訴因の特定に不可欠な事項⇒裁判所の釈明(規則208条)義務⇒釈明(規則208条)⇒訴因の内容となり特定⇒有効な起訴(状)⇒以降、必要に応じ訴因変更(不要なら適宜争点顕在化措置が問題となるのみ。)。
●実務:訴因の特定の要件:①他の犯罪事実との区別が可能であること、②特定の構成要件該当性判断が可能であること。2点。●認識:各種判例のポイントは①or②いずれか。

訴因の特定(共謀共同正犯)(B+)

●問題:「共謀の上」とのみ記載
●論点:訴因の特定(原則論)
●理由:共謀共同正犯については、①謀議行為自体の具体的特定は困難。他方、②他の共謀者による実行行為が日時・場所・方法等で特定されている以上、共謀自体につきそれらの記載がなくとも、他の犯罪事実から識別可能。
●結論:「共謀の上」と記載すれば足りると解される。
●実務:共謀は「罪となるべき事実」(335条1項)にあたるが、共同実行の合意である(実行行為時に存在すれば足り、謀議行為は、それを推認する間接事実に過ぎない。)。よって、謀議行為の日時・場所・方法等は訴因の特定に必要不可欠ではない。
●補足:実行行為の主体について、共同正犯の訴因としては、明示がなくても特定に欠けない。●理解:共謀についての防御には無関係。
●補足:日時・場所・内容の詳細について、具体的判示までは不要(最判昭和33年5月28日)。

訴因の特定(覚醒剤自己使用罪)(AA)

●前提:覚醒剤自己使用罪は、1回の使用行為毎に1罪が成立し、各罪は併合罪となる(判例)。
●論点:訴因の特定(原則論)
●問題:覚醒剤自己使用罪については、①被害者なし。目撃者なし。日時・場所・方法の具体的特定は困難。他方、②覚せい剤の使用日時・場所・方法に多少の差異があっても、最終使用行為は1回しかなく、他の使用行為との識別は可能。
●展開:そこで、尿の採取時に最も近い使用行為についての起訴(・釈明(規則208条))として、許される。
●理由:尿の客観的な鑑定結果から、犯行は強く推認される。鑑定書は事前に開示される(299条1項本文後段)。
●補足:日時・場所・方法(256条3項)は防御の中心ではなく。その点についての告知機能は重要ではない。自己意思に基づかない点等の立証が重要である。

訴因の特定(起訴状一本主義)(AB)

●問題:起訴状一本主義(256条6項)との関係
●論点:訴因の特定(原則論)
●趣旨:他方、起訴状一本主義は、裁判官の予断を防ぎ、公平な裁判所(憲法37条1項)を実現する制度。
●理由:しかし、一旦抱いた予断を完全に払拭することは困難。
●結論:そこで、起訴状一本主義を優先すべきと解される。
●認識:防御機能は勿論、識別機能すら劣後させる、ということ。ただ、識別できなくてもOK、ではないだろう。よって、論点として意味なし。そもそも起訴状については出ない。

第三百十六条の三十二 公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件については、検察官及び被告人又は弁護人は、第二百九十八条第一項の規定にかかわらず、やむを得ない事由によつて公判前整理手続又は期日間整理手続において請求することができなかつたものを除き、当該公判前整理手続又は期日間整理手続が終わつた後には、証拠調べを請求することができない
 前項の規定は、裁判所が、必要と認めるときに、職権で証拠調べをすることを妨げるものではない。

公判前整理手続

●問題:「証拠調べ」(316条の32)について明文あるのみ。公判前整理手続き終了後の新主張については制限されないか。●理解:被告人側の制限
●趣旨:公判前整理手続は、充実した公判審理を継続的、計画的、かつ迅速に行うため、争点及び証拠を整理するためにある(316条の2)。
●要件:新主張の経緯、内容、重要性等の諸般の事情を総合考慮し、かかる趣旨を没却する場合には、
●結論:新主張は、「その他相当でないとき」(295条1項)に該当し、制限される。

●問題:「証拠調べ」(316条の32)について明文あるのみ。公判前整理手続き終了後の訴因変更は制限されないか。●理解:検察官側の制限
●趣旨:公判前整理手続は、充実した公判審理を継続的、計画的、かつ迅速に行うため、争点及び証拠を整理するためにある(316条の2)。
●要件:①公判前整理手続における請求可能性、及び②認めた場合に審理計画の大幅変更が必要となるかを踏まえ、かかる趣旨を没却する場合には、
●結論:訴因変更は、信義則違反(規則1条2項)として、制限される。
●補足:②の判断要素として、自白がある等により、追加の証拠調べが不要、等の事情がありうる。
●判例:証人尋問の終了前には弾劾対象たる公判供述が存在せず。弾劾証拠(328条)該当性は判断できない。弾劾証拠の取調べ請求は、「やむを得ない事由」に該当する。

公判

第三百十二条 裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
2 裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。
3 裁判所は、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更があつたときは、速やかに追加、撤回又は変更された部分を被告人に通知しなければならない。
4 裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防禦に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防禦の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。

訴因変更(要否)(AA)

●問題:訴因変更手続きを経ない、訴因と異なる事実認定の可否(裁判所が、訴因と異なる事実を認定するに当たり、検察官による訴因変更手続きを経る必要があるか。)
(●注意:検察官が訴因変更請求をした場合、訴因変更の要否は問題とならない。起訴独占主義(247条)・当事者主義(「許さなければならない」(312条1項))から。)
●論点:審判対象論
●結論:事実に変化があれば、訴因変更が必要になると解される。
●理由:しかし、些細な事実の変化でも訴因変更を要すると審理遅延等を招くため、訴因変更を要するのは、重要な場合に限定すべきである。
●結論:そこで、訴因の機能(識別機能(・防御機能))に照らし、訴因変更は、
訴因の特定に必要な事実に変化がなければ、必要ない
②しかし、被告人の防御にとり一般的に重要な事項について、検察官が訴因において明示した場合、それと実質的に異なる認定をするには、原則として必要
③もっとも、審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではなく、かつ認定事実が訴因と比べ被告人にとってより不利益とはいえない場合例外的に不要。と解される。
●補足:①の違反は、不告不理原則違反(絶対的控訴理由(378条3号))。②の違反は、訴訟手続の法令違反(相対的控訴理由(379条))。
●注意:択一的認定とは別問題。事案により、両方検討する。
●参考:検察官による訴因変更は、①証拠の提出に先立つ場合と、②証拠調べの結果、異なる事実が証明された場合と、がある。前者は、一般的な「訴因変更の要否」の問題とは場面が異なり、要件②は問題とならない。極端な場合、事前の場面なので、わずかな事実変更であっても訴因変更すべし、と言いうる。●確認:「平成13年決定は後者」らしいが本当?
●種別:「変更」(交換的)・「追加」(予備的・択一的にする。)・「撤回」(予備的・択一的でなくする。)。本位的訴因への予備的訴因追加が一般的。実務上、交換的はまれ。
●補足:なお、「補正」は、起訴状無効(重大な瑕疵による訴因不特定)回避のための完全化(瑕疵除去)。「訂正」は、そこまでではない場合、という区別。
●参考:公訴事実対象説(訴因の背後にある「真実」)を対象とする場合、訴因は法律構成であることから、法律構成が変化するなら訴因変更が必要、となる。

●補足:縮小認定:潜在的に審判対象となっていた。よって、要件①の範囲外(①の例外は認められず、例外ではない)。ただし、福岡高判平成20年4月22日の事例等、不意打ち防止(争点の明確化)の要請が働く場合、訴訟手続き上の法令違反となる(相対的控訴理由(379条)。●認識:実質的に要件③で処理してOK。
●補足:過失は、①注意義務の根拠事実、②内容、③違反行為からなる。①には拘束力なく訴因変更なく異なる認定可。②は法規範なので記載不要。③は過失態様なので訴因変更必要。
●注意:共同正犯・単独犯問題については、同一構成要件か、異なる構成要件か。適用法条として刑法60条が新規追加されること、その他事案毎の事情を考慮し、要否を検討。

●経緯:具体的防御説v.s.抽象的防御説
・具体的防御説への批判(実際上、不一致が生じるのは、被告人の防御が奏功した場合。ほぼ変更不要となる。)。
・抽象的防御説への批判(変更必要な範囲が広がるが、その帰結たる縮小認定の理論が機能しない事例もある(※1)。訴因の機能は2つある。防御機能に偏り過ぎ。逆では?(※2)
(※1)福岡高判平成20年4月22日:共同正犯→幇助犯は一般的には縮小認定可能。しかし、幇助態様として、有形的・物理的な手段(争点)⇒無形的・心理的な手段(認定)は不意打ち。等。
(※2)一般に、訴因の主たる機能は、審判対象画定にあり、防御機能は副次的(画定されれば限定される)と理解されている。
・そこで、①(審判対象画定の観点)の要件を一次的に(識別説に立てば、識別・防御は表裏一体ゆえ、①は抽象的防御の観点を含む。)。②をそう理解しても良い気がするが。③は具体的防御の観点という説でOKだろう。●検討

●補足:あてはめ
①・殺人→過失致死:不可(「罪となるべき事実」自体が変更。)
・過失態様:不可(訴因の特定のために不可欠。)。
・犯行日時・場所・方法等:可(「罪となるべき事実」自体ではなく、特定に不可欠ではない。他の犯罪事実と識別しうるか否かが基準(識別説)。)
②訴因の特定の問題ではない(争点明確化・不意打ち防止)。
③同上。なお、「かつ」については、判例批判がある。不意打ちでなければ十分では。と。

訴因変更(可否)(「公訴事実の同一性」)(A)

●問題:検察官は、現訴因について公訴取消し(257条)をし、新訴因について別途公訴提起する必要があるか。●補足:一事不再理(337条1号)・二重起訴禁止(338条3号、339条1項5号)の効力範囲を画する。
●論点:審判対象論
●結論:「公訴事実の同一性」は、変更の限界を画する機能的概念に過ぎず、その意義は、被告人の防御権と訴訟の一回的解決との調和の観点から決せられる。
●結論:そこで、公訴事実が、①単一又は同一であれば、「公訴事実の同一性」は認められる。
●基準:①単一性は、実体法上の一罪か。②同一性(狭義の同一性)は、両訴因における基本的事実関係(日時・場所・行為・結果・被害者・被害品等)が同か。不当な結論となる場合、適宜補充的に非両立性(例:同じスーツ事案)を考慮。
●判例:①と②は別問題(「又は」)。特に①が問題とならない場合、一言触れるだけにする。
●あ:②の具体的フレーズ「両事実は、いずれも、…という点で社会的事実して同一であり、単に…の点で違いがあるに過ぎない。」
●補足:そもそも基本的事実関係が異なる場合、非両立性は問題とならない。例:殺人罪の被告人とされたものが身代わりだった場合、真犯人かつ身代わり犯人は非両立。しかし、殺人と犯人隠避とで基本的事実関係は異なる。公訴事実の同一性はない。
●補足:非両立か否かは、証拠調べ開始前は、訴因の記載と検察官の釈明を、証拠調べ進行後は、証拠調べの結果としての認定事実を、各々基礎とすることができる。
●補足:非両立については、事実が両立しない場合と、法的に両立しない場合と、がある。後者の例:窃盗罪と、窃盗犯人の不可罰的事後行為たる盗品等罪。●認識:単一性はクリアしている。一罪の(不可罰的事後行為の)問題なので。●方針:両者は別の説らしいが、両方使えば良い。
●補足:停止(314条)(AB)
●検討:「犯罪の重大性(保護法益・法定刑等)を書く。」?

訴因変更(時期的限界)(AB)

●問題:長期審理後の結審間近に訴因変更請求。訴因変更の時期的限界が問題。
●原則:「許さなければならない」(312条1項)
●理由:被告人の防御活動は、訴因に大きく左右される。
●要件:そこで、検察官による訴因変更請求の機会・時期、被告人の防御の負担に照らし、公判停止(312条4項)では補えない程の防御上の不利益を被告人に及ぼす場合には。
●結論:訴因変更は認められないと解される(権利の濫用(規則1条2項))。

訴因変更(不適法訴因へ)(A)

●前提:起訴状基準:訴訟条件具備。審理結果(事実)基準:訴訟条件を欠く。無罪判決を下した場合、一事不再理効により再起訴は不可。
●前提:非親告罪(40km/h)が縮小認定(20km/h)を許す罪の場合、認定した親告罪につき、訴訟条件不充足として(訴因変更せず)公訴棄却可。以下、縮小認定不可の場合。
●前提:被親告罪(窃盗罪)で起訴したが、親告罪(器物損壊罪)の事実が判明した場合、告訴を得て親告罪に訴因変更することは可。以下は、告訴を得られない場合。
●問題:再起訴可能とするため、敢て訴訟条件を満たさなくなる訴因へ訴因変更した上、公訴棄却判決(338条4号)できるか。
●論点:審判対象論
●理由:不適法訴因への変更は、新訴因について将来の実体裁判のためになされるものであり、真実発見に資する。
●結論:免訴(公訴時効等により将来の実体裁判があり得ない)の場合を除き、訴訟条件を欠く不適法訴因への変更も許されると解される。

訴因変更命令(A)

●問題:裁判所に訴因変更命令義務があるか。
●論点:審判対象論
●結論:原則として、義務はないと解される。
●問題:もっとも、検察官の権限行使に不備がある場合、その放置は真実発見(1条)を害する。
●要件:そこで、(1)重大な犯罪について、(2)変更後の訴因につき有罪となることが明白な証拠があれば、
●結論:例外的に訴因変更命令義務を認めるべきと解される。
●展開:「ただし、訴訟経過を考慮し、求釈明(規則208条)により事実上訴因変更を促したことにより、訴訟法上の義務を尽くしたといえる場合、更なる訴因変更命令は不要と解される。」
●判例:最判平成30年3月19日
●問題:形成力はあるか?
●結論:否定
●補足:訴因維持義務も同様。犯罪の重大性と証拠の明白性を基準に。
●補足:「不適法訴因への変更命令権限(裁判所)はあるか?」(重要)→否定(312条2項は例外)。●認識:検察官による、とは異なる。裁判所の義務、とも異なる。原則通り。

証拠

第四節 証拠

第三百十七条 事実の認定は、証拠による。

第三百十八条 証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。

厳格な証明(A)

●条文:刑罰権の存否・範囲を画する犯罪事実(「罪となるべき事実」(335条1項))の認定は、厳格な証明、即ち(1)適式な証拠調べ手続を経た、(2)証拠能力ある証拠によることを要する(317条)。●認識:訴訟法上の事実(例:保釈判断のための事実)については、自由な証明で足りると解されている。が、実務上、訴訟の結果に大きく影響しうる事実については、全て厳格な証明によっている。
●補足:(2)を構成する①自然的関連性、②法律的関連性、③証拠禁止非該当は、証拠能力の要件ではなく、証拠能力の制限事由に過ぎない(問題となりうる場合だけ検討すれば足りる。)。なお、証拠禁止は、違法収集証拠排除法則に限らず、一般的概念(例:①ロッキード、及び②強制送還等もある。)。
●補足:自然的関連性:①証拠の取違え・捏造等、証明対象事実を直接証明できない場合、②間接事実は推認しうるが、当該間接事実が主要事実の推認にはほぼ機能しない場合、の2種類。
●参考:それらを推認させる間接事実・必要となる補助事実についても同様。
●理解:「自然的関連性」(必要最小限度の証明力すらなし。)・「法律的関連性」(自然的関連性はあるが、証明力の評価を誤らせうるもの。法律的論理則の話(広い)。以上2概念を区別せず、まとめて「関連性」とも。)・「証拠調べの必要性」(証拠の厳正、最良証拠、ベスト・エビデンスの問題)(「関連性」の他、証明された場合の判決への影響力等の観点から「重要性」の問題とも。)

写し(A)

●前提:該当性認定。
問題:(自然的)関連性
●原則:書面については原本提出(理由:最良証拠の原則)310条参照
●例外:謄本・抄本・写し等のコピー可(東京高判昭和58年7月13日)
原本が存在し、又は存在したこと
写しが原本を忠実に再現すること
●参考:他説は、原本の提出が不可能又は著しく困難であることも要件とする
(上記裁判例は不要とする。理由:最良証拠ないし写し提出の必要性の問題に過ぎず。必要とする説の中にも、コピーは上出来なので、緩和してOKとする。●認識:あまり。)

同種前科事実・類似事実(AB)

●前提:悪性格・犯罪性向(粗暴・激情的等)による犯罪立証活動は、裁判官に不当な偏見を抱かせ誤判を、争点を拡散させ訴訟遅延を、招くおそれ。証拠能力否定ではなく、立証自体が許されない(証拠調べ請求却下となる。)。●補足:仮に悪性格・犯罪性向の評価が正しいとしても、それが現在し、かつ今回もその発現か、推論が弱い。ゆえ二重に弱い。
●前提:同種前科事実・類似事実が間接事実となる場合も、前科証拠・類似事実証拠と同様(最決平成25年2月20日)。●理解:いずれも実質的根拠が不十分な人格的評価を介在させる点で同様。直接証拠でない限り、証拠は何らかの間接事実を証明するもの。当該間接事実と主要事実との関連性こそが、法律的関連性の本質。むしろ前者(事実)が本質的とすら。

1.自然的関連性(同種前科事実)
●定義:自然的関連性とは、要証事実に対し、必要最小限度の証明力を有すること。
●理由:同種前科事実は、要証事実を推認させることから、必要最小限度の証明力は有する。
●結論:同種前科事実には、自然的関連性が認められる。

2.法律的関連性(同種前科事実)
●理由:同種前科事実・証拠から悪性格・犯罪性向さらには犯人性へと二重の推認過程を経るとすると、訴因との因果的結び付きが弱い上、裁判官が不当な偏見を抱くおそれもある。
●結論:よって、原則として、法律的関連性が欠けると解される。
●問題:しかし、真実発見(1条)のため、かかるおそれがない場合
には、例外的に法律的関連性が認められると解される。
●具体例:そこで、同種前科事実が顕著な特徴を有し、かつそれが起訴事実と相当程度類似することから、

被告人の犯人性が合理的に推認される場合(●これが要件・ポイント)、又は
既に犯罪の客観面(犯人性も含む)が立証されている場合において、被告人の故意等の主観的要素が合理的に推認されるときは、●認識:犯人性が立証されていて初めて可能
同種前科事実に自然的関連性が認められる。
●判例:最判平成24年9月7日②(争点拡散の弊害を指摘した。)●方針:幹は(伝統的理解も)関連性なので、それで良い。事案次第で補充的に。

補足:前科・常習性等が構成要件の一部となっている場合は当然許容される。
●補足:「顕著な特徴」ゆえ、かなり個性的と理解すべき。手口が特殊・類似でも、道具が入手容易なら、否定方向。
●応用:類似事実(①併合審理中・②余罪)については、確定判決ない分、偏見は弱いが、推認力も弱い。また、争点拡散の弊害(①は、他の証拠から認定可能なら左程だが。特に②は問題。)。類似事実が短期間に連続発生(日時・場所が近接)した場合、経験則上、第三者による犯行は否定方向。それでも、間接事実頼り立証構造ではシンドイはず。●参考:司法令和2年

ポリグラフ検査結果回答書(証拠能力(自然的関連性))(AB)

●問題:科学的証拠については、証拠価値・信頼性を見誤るおそれがあり、かつ裁判結果に重大な影響を及ぼす危険性がある。
●定義:自然的関連性とは、要証事実に対し、必要最小限度の証明力を有すること。
●理由:ポリグラフ検査等の科学的方法によって得られた証拠の証明力は、その基礎事実の安定性・信頼性に依存する。
●要件:①使用機器の性能等から、検査結果に信頼性が認められ、②検査者が必要な知識・技能を有する適格者であり、かつ③被検査者の心身の状態が正常であれば、
●結論:要証事実に対する必要最小限度の証明力があるといえる。
●補足:ゼロ番目の要件として、「科学的原理の理論的正確性」を要する方法(例:DNA鑑定)と、それを経験則で代替する方法(例:臭気検査等)と、2種類ある。
●警察犬による臭気選別(最決昭和62年3月3日):②専門的な知識・経験を有する指導手が、①臭気選別能力に優れ、選別時の体調も良好で、その能力が保持されている警察犬を使用、③臭気の採取・保管・選別の過程に不適切な点がない場合には、自然的関連性が認められる。
●認識:DNA検査(ほぼ信頼性が確立。収集・保管における汚染不存在等が現在の中心的争点。)・筆跡鑑定等は、(ゼロ番目の要件と)①客体・②主体・③手法の応用。●認識:ゼロ不要

排除法則(AA)

●方針:違法の重大性がポイント。排除相当性の検討過程において、違法行為と証拠との因果性(密接関連性)を検討。全て毒樹の果実(違法性の承継に依らず。)。近時判例傾向。
●問題:物的証拠については、自白法則(憲法38条2項、法319条1項)のような規定はない。証拠の証明力は変わらない。
●理由:①適正手続(憲法31条等)②司法の廉潔性(国民の信頼確保のため)、③将来における違法捜査抑止
●原則:原則として、違法収集証拠の証拠能力は否定。
●問題:しかし、軽微な違法があるに過ぎない場合にも、常に物それ自体の証拠能力を否定することは真実発見(1条)に反しうる。
●要件:そこで、①証拠物の押収等の手続に、令状主義(憲法35条、法218条1項等)の精神を没却するような重大な違法があり(●注記:司法の廉潔性(上記②))、かつ(●注記:通説)、②これを証拠として許容すること将来における違法捜査抑止の見地から相当ではないと認められる場合(●注記:排除の相当性(上記③))に、
●結論:証拠能力を否定されると解される(刑訴法1条)
●理解:趣旨①違反は(重大なら)即OUT。②・③は政策論。
●展開:違法の重大性(2段階審査の2段階目には甘い傾向):必要性・緊急性(1段階目では考慮不可)・主観面(例の事件では潜脱意図あり。2段階目だが排除された。)等。
●判例:最判昭和53年9月7日:「憲法及び刑訴法になんらの規定もおかれていない…刑訴法の解釈」と述べた。趣旨①は直接の根拠ではないと一般に解されている。あくまで刑訴法1条の解釈論。もっとも、憲法31条・35条には言及していることから、当該解釈論において、当該趣旨①をも斟酌はしてはいる。
●認識:排除相当性につき、事件の重大性や証拠の重要性等を考慮するとの考え方あり。反対。●方針。①の重大な違法があれば人権保障を害するところ、単に真実発見を優先する結果になるので。●方針:一般的な真実発見の見地から、考慮することは可能。但し、補充的に。としておこう。
●応用:排除申立て適格(権利侵害された者以外):趣旨①を重視すれば否定。②・③を重視すれば肯定。

毒樹の果実(A)

●問題:違法捜査(毒樹)により発見された一次証拠(果実)に基づき、更に発見された派生的証拠(果実)も証拠排除されるか。
●理由:この点、派生証拠も排除しなければ、違法収集証拠の排除は骨抜きとなってしまう。しかし、あらゆる派生証拠を排除することは真実発見(1条)を害する。
●結論:そこで、違法収集行為と派生証拠の間に因果性(密接関連性)がある場合には、派生証拠も証拠排除されうると解される。
●考慮要素:具体的には、①一次証拠の収集方法の違法の重大性、②派生証拠の重要性(・立証対象たる犯罪の重大性)(●方針:事案次第。本来考慮すべきではないのでは?という個人的疑問あり。)、③両証拠(一次証拠・派生証拠)の関連性等を総合考慮。
●展開:③については、独立入手源不可避発見(●補足:仮定である点、批判あり。それが正しい可能性が高い・具体的であるべき、という制限あり。)という観点と、いわゆる希釈要因についての検討が重要。●補足:希釈要因としては、任意性ある自白の介在・令状審査の介在・それらの回数等がある。
●判例:最判平成15年2月14日②(・最判昭和61年4月25日②)
●補足:捜索差押に緊急執行(201条2項、73条3項)制度はない。

第三百十九条 強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない
2 被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。
3 前二項の自白には、起訴された犯罪について有罪であることを自認する場合を含む。

自白法則(A)

●補足:自己負罪拒否特権(憲法38条1項)については、対象は黙秘権よりも狭いが、主体は広い(「何人」)。刑訴法上の黙秘権は、それらを拡大・限定したもの。
●大前提:黙秘権(憲法38条1項、法311条1項)の意義。利益原則はあるものの、経験則上、反論できないから沈黙されると推認されがち。そこで、(単に黙る権利ではなく)黙っていても不利益を受けない特別な地位まで保障(当該経験則につき自由心証主義の例外を課したとも言える。)。捜査機関との力の差がある前提において、当事者対等を確保。
●補足:「強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」は証拠能力否定(争いなし)。ただ、特に「強制」・「不当」については、該当性が争われうる。
●補足:「その他任意にされたものでない疑のある自白」との文言は憲法38条1項にはない。
●条文:自白法則(憲法38条2項、法319条1項・3項)・補強法則(憲法38条3項、法319条2項・3項)
●前提:不利益な事実の承認(自白以外)にも自白法則は適用される(322条1項ただし書き、319条1項)。が、補強法則は適用されない。
●前提:自白・承認については、自白法則により証拠能力が否定されない場合に限り、かつ必要に応じ、伝聞証拠法則を検討することが必要十分。
●補足:被疑者については、告知義務(198条2項)を通じ、同様の保障があると解されている。
●補足:任意性に疑いのある第三者供述:319条1項の適用なし(争いなし)。「強制、拷問又は脅迫」人権擁護的な問題(類推し証拠能力否定)。虚偽排除的な問題(証明力の問題として処理)。でOK。

●方針:①明文ある任意性(虚偽排除・人権擁護(黙秘権))を検討⇒②(「その他」の前と黙秘権侵害を含め)排除法則検討。●確認:2元説?
●定義:自白とは、自己の犯罪事実の全部または主要部分を認める供述をいう(●重要)
●前提:自白は直接証拠であり、推認力が非常に強く、また、人は自己に不利益な虚偽供述はしないという経験則があり、信用性も高いと考え得る。
●前提:自白該当性認定
●問題:しかし、「…任意にされたものではない疑のある自白」の証拠能力は認められず、その意義が問題となる。
●趣旨(「任意にされたものでない疑のある自白」の証拠能力が否定される趣旨):①かかる自白は虚偽であるおそれが類型的に高く、誤判を招くおそれがあること(真実発見の見地)、及び②かかる自白の証拠能力を否定することにより、被疑者・被告人の黙秘権(憲法38条1項、法311条、198条2項参照)の侵害を防止すること(人権保障の見地)にあると解される(任意性説)。●理解:ここでの人権は、黙秘権のみ(直接的な問題ゆえ)
●結論:そこで、かかる自白か否かは、①虚偽自白を誘発する状況、及び②黙秘権を中心とする人権を不当に抑圧する状況により判断
●効果:自白の証拠能力否定(自白に基づいて発見された凶器等は、自白に基づいて発見されたと認定できない。)
●要点:任意性説は、「被疑者の『心理』」(Keyword)に強い影響を与えたか、が最重要ポイント
●参考:違法排除説の場合、自白と獲得手段・状況との因果関係を要しない(⇔任意性説)。

●具体例(不起訴約束・偽計等):①呈示利益、②呈示主体、③呈示態様等。なお、④黙秘権一切不告知も、任意性を疑わせる一事情となる。⑤接見制限も。
●確認:不起訴約束による自白について、人権擁護説からは、動機に影響するものの自由自体の制約ではない、と解するのが一般的。そこから、違法排除説では説明が難しいとされている。約束・利益供与を違法とするのは困難(通説)。●方針:それで良い。裁量もあるし。●検討:ただ、詐欺同様ならOUT。瑕疵ある意思表示を誘引。判例にあるように新事実・証拠が出てきて起訴せざるをえなかった場合はOK。●補足:偽計とは異なる。偽計を違法ではないと言う向きもあるが無視でOK。偽計は違法(例えば権利濫用(規則1条2項))。
●具体例:証拠能力がない(獲得が違法とまではいえない)自白を疎明資料として令状を取った場合、逮捕等自体の違法性(要件不充足)へ、そこから排除法則・毒樹の果実の問題へ。
●注意:令状が関係しない場合、「令状主義の精神を没却する」については、「憲法・刑訴法の所期する基本原則を没却するような重大な違法」(下級審裁判例での表現)にアレンジ。

反復自白(A)

●前提:それ自体の任意性の問題
●結論:第一自白の不任意性の原因である心理的誘因・圧迫等の解消の有無次第(遮断(検察官の「遮断義務」に基づく)があるか)
●考慮要素:各取調べの主体・目的の異同、時間的場所的近接性、第二自白の際の取調官の挙動、第一自白後の弁護人との接見の有無、被疑者・被告人の認識(第一自白が証拠能力を欠くと説明を受け安心したか。捜査官に厳重注意をしたと伝えたか等もありうる。)等。
●補足:不任意自白の後、①任意自白、②裁判所の手続が介在する等のケースあり。
●注意:上記は自白法則(任意性説)により第一自白の証拠能力が否定されたにとどまる場合。違法とまで認定された場合、毒樹の果実の問題。
●帰結:いずれにしても、①捜査機関による、②取調べ、である点であれば、遮断なし・希釈なし等となるだろう(cf.勾留質問における裁判官に対する供述とは異なる。)。

補強法則(範囲)(A)

●前提:憲法上、公判廷における自白には補強証拠不要(判例)。自認による有罪答弁制度(米国)許容。が、現行法上、有罪自認にも補強法則必要(319条3項・2項)。「公判廷における自白であると否とを問わず」(319条2項)として、憲法38条3項よりも保障範囲拡大。
●前提:補強法則は、任意性ある場合の話。任意性に関する証拠の話ではない。
●注意:補強なので、理論上、自白から心証形成できている場合の話(いわゆる完全な自白(任意性あり。信用性高い。裁判官が有罪心証形成済み。)への上乗せ(穴埋めではない。)。更に、実際上、自白自体も、自白以外の証拠により支えられている(自白のみで公訴提起ありえず。)。ゆえ、補強法則の適用場面は限定的。●認識:判例が正当化される。

●問題:いかなる範囲で自白の補強を要するか(憲法38条3項、法319条2項・3項)。
●趣旨:自由心証主義(318条)による心証形成の例外として、自白偏重による誤判を防止するため。
●理由:自白のみから心証形成することは不可能であり、自白から心証形成するためには、既に自白を支える証拠が存在することが前提である
●結論:そこで、自白の真実性を担保する範囲(犯罪事実の一部)(※)の証拠で足りる(実質説)。●認識:証拠と争点が付合していなくとも良い。
●補足:自白(支える証拠は当然あり)による心証形成に至っていない場合、当然他の証拠が必要となり、補強法則は問題とならない。至っている場合の問題。
●展開:犯人性・主観的要素(故意等)についての自白に補強証拠を要しないのは当然である。
●判例:最判昭和23年10月30日
●補足:(※)あくまで犯罪事実に限定される。自白の定義およびそれを補強する趣旨から。よって、経緯・動機や犯行後の行動等についてあっても足りない。
●批判:①基準不明確、②301条は、補強証拠による十分な証拠調べの後に自白調書等が取調べられることを予定している。
●反論:補強法則は、自白を含む証拠調べ終了後の事実認定段階の問題なので、301条段階ではない。

●反対説:罪体説(自白だけで心証形成ありえず、その発想自体が危険、という発想)
●理由:補強を要する事実の範囲については、できる限り客観的かつ明確な基準を用いるべき。
●結論:そこで、補強を要する事実の範囲は、犯罪事実の客観的側面の主要部分(罪体)であると解される。●イメージ:構成要件の名称・文言。
●展開:もっとも、無理な証拠収集・事実認定を避けるべく(、また事実認定が偶然に左右されないよう、)●検討
●結論:犯人性及び主観的要素(故意等)については、自由心証に委ね、慎重に事実認定することで足りると解される。
●批判:最も誤判で問題になる。
●実務:差が出る場面はさほどない。

補強法則(程度)(AB)

●問題:補強証拠による証明の程度は?
●趣旨:補強法則
●理由:自白から心証形成するためには、既に自白を支える証拠が存在することが前提である。
●結論:自白の真実性を担保する程度で足りる。●理解:実質説からの帰結。●認識:実質説では、範囲・程度はほぼ同じ話。●認識:ゆえ「あまり書かず。」。
●判例:最判昭和24年4月7日(●方針:「自白と相まって」と表現するが、補強法則の話なので、その部分は採用しない。)
●反対説:補強法則のみにより、一応の証明がなされる必要があると解される。①自白自体の証明力とは無関係に要求、②301条。●認識:自白を支える証拠自体の話では?

補強法則(適格)(AB)

●結論:被告人の自白から独立していること。
●趣旨:補強法則
●原則:被告人の自白は被告人の供述により補強できない。
●例外:もっとも、捜査と無関係に独立して作成された記録等であれば、
●結論:適格あり。
●判例:最決昭和32年11月2日
●注意:結構大切
●理解:手紙・日記等は、(323条2号により証拠能力が認められ、かつ(別観点から)類型的に信用性も高い)帳簿等(誰が作成しようが没個性的)と異なり、捜査と無関係とは言えない。(個人的)創作の可能性あり。その点を踏まえ判断するなら、規範としては上記でOK。

第三百二十条 第三百二十一条乃至第三百二十八条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない
2 第二百九十一条の二の決定があつた事件の証拠については、前項の規定は、これを適用しない。ただし、検察官、被告人又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものについては、この限りでない。

伝聞証拠(AA)

●処理:①争点(犯人性?罪体?(全部?一部?どれ?)確認、②証拠構造(直接証拠型?間接事実・間接証拠型?)分析、③要証事実(具体的に認定すると後が書き易い。)
●問題:本件書面は公判期日外の供述を内容とするため、伝聞証拠にあたり、原則として証拠能力が否定されないか、伝聞証拠(321条1項)の意義が問題となる。
●趣旨:原則として伝聞証拠の証拠能力が否定される(320条1項)趣旨は、供述証拠が知覚・記憶・表現・叙述(●注記:「表現」(規則199条の6)で足りうるが「叙述」も書くのが多数のようなので。)の過程を経るために誤りが混入し易く、その内容の真実性につき公判期日における反対尋問(憲法37条2項前段参照)等(※)による確認を要するところ、伝聞証拠ではそれができないためである。
●結論:そこで、伝聞証拠とは、①公判期日外の供述を内容とする証拠であり、②要証事実との関係でその供述内容の真実性が問題となる(●要点:供述者が直接体験した事実の立証に用いられるか)ものと解される。
●補足:公判廷供述の信用性担保:①反対尋問(憲法37条2項前段、法157条以下)、②宣誓(159条)・偽証罪(169条)、③直接主義(315条本文参照)
●参考:立証趣旨(規則189条1項)は、伝聞法則(320条1項)の潜脱・無意味等でない限り、原則として、検察官(厳密には「証拠調べ請求した当事者」)主張のもの(最決平成17年9月27日)。●重要:検察官の立証趣旨の考慮は必須(当事者主義)。しかし、不合理・無意味な場合も。実質的な解釈・認定をする(場合分けせず。)。他の主張・立証状況・裁判官の心証次第では、他の有力証拠(例:客観証拠に支えられた任意の自白)があれば足り、必要性が低い場合もある(逆もある。)。
●認識:当然ながら、「表現」は、問題文にある。「知覚」・「記憶」は不明・曖昧等はありえる。●認識:特に意味なし。
●実務:伝聞例外の該当性判断が難しい場合、一旦異議を却下し尋問継続。証拠能力なしと判断した時点で排除する運用。やむを得ない面あるも、裁判員裁判では心証形成に悪影響%
●反対説:実質説(原供述自体を伝聞証拠とする説。批判:320条1項の文言上ありえず。):要件①が問題となる場合(裁判所の面前で検察官の主尋問に応えた者が、次回期日における反対尋問前に死亡した場合等に差異が生じる。●私見:書面では問題とならない。)●方針:類推適用すれば良い。●検討

精神状態供述(A) 

●前提:伝聞証拠排除法則(原則)
●反対説:確かに、原供述者の心理状態という供述内容の真実性が問題となる点、形式的には伝聞証拠にあたる。
●理由:しかし、①人の心理状態については、本人の当時の発言が最良証拠(●認識:後で思い出して証言は本人でも難しい。)であり採用の必要性が高い一方、②心理状態の供述は、(通常の供述証拠とは異なり)知覚・記憶の過程を欠き、誤りが入る危険性は低く、また③表現の真摯性・叙述の正確性については、他の証拠同様に一般的関連性(自然的関連性)の問題として検討すれば足りる。具体的には、原供述時の状況・供述態度等につき、伝聞供述者を反対尋問すれば足りる。●認識:③については、それを言うなら、全て知覚・記憶のみ問題とすれば良くなる。そうではなく。通常の伝聞証拠の場合、一般的関連性の問題を超えて、表現の真摯性・正確性を確認するのは、知覚・記憶の危うさから特に。精神状態供述の場合には、その必要性がは低い、ということ。●私見:「表現」はあるが、「知覚」「記憶」の対象が多大というのみでは?
●結論:そこで、精神状態供述には、原則の趣旨(反対尋問によるチェックの必要性)が妥当せず、例外的に非伝聞(通説)と解される。●補足:伝聞証拠説も有力。
●判例:最判昭和30年12月9日:例の事案において、「伝聞証拠であることは明らかである」とした。犯人性が争点だったので。それを推知させる動機の証拠として。
●注意:(当時ではなく)過去の精神状態供述については、同様に「知覚」はないものの、「記憶」があるため、伝聞証拠。
●補足:「共謀を立証」という場合、①共謀の存在を立証する場合、②正犯意思を立証する場合、がある。らしい。●検討:他は?
●参考:精神状態供述が非伝聞でも、立証趣旨との関係において(自然的)関連性がなければ、証拠能力は否定。例:共犯者と疑われる者との通話内容メモからは共謀立証できない場合

犯行計画メモ 

●前提:共謀は規範的要件であり、間接事実による立証を要する。
●前提:書面の「存在と内容」と言う場合、「存在と記載自体」(非伝聞)という意味(常識)。●認識:他は多義的。●認識:いずれにしせよ文言の形式的・機械的解釈は不可。
●分類
1.精神状態供述類似(事前謀議の存在・内容を立証):一人が謀議時に書記的にメモ(非伝聞・通説)。各自の署名あり。も。他方、他の証拠(証言等)から、意思の合致がメモされたことは立証済みであれば。ただ、共謀の存在が争点となりつつ立証されていない事案が多く、そのように機能する場面は限定的。
2.意思連絡行為自体(共謀におけるメモの使用は他の証拠(証言等)により立証済み)
3.メモの「存在と内容」を立証:記載と犯行態様と一致:①所持・関係先に存在した。②被告人の関与につき記載あり。③作成者が別途立証されていれば、作成者の関与が推認。
(4.その他、指紋が残っていれば、通常共犯者以外の者が触れない書面である以上、共謀が推認できる場合もある。証拠物であり、非供述証拠。)

第三百二十一条 被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。
一 裁判官の面前(第百五十七条の六第一項及び第二項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異なつた供述をしたとき。
二 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。
三 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。
2 被告人以外の者の公判準備若しくは公判期日における供述を録取した書面又は裁判所若しくは裁判官の検証の結果を記載した書面は、前項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
3 検察官、検察事務官又は司法警察職員の検証の結果を記載した書面は、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、第一項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
4 鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについても、前項と同様である。

全体像

●前提:署名・押印は、録取者の知覚・記憶・表現の過程の正確性の問題がないことを担保する。供述書と同視可能になる。拒否は重要な防御手段。
●認識:「供述書」(署名・押印不要)については、「作成した」の事実認定をするケースもある。例:誰も触れないパソコン。という旨の証言あり。信用できる。機械的な再現。等
●認識:さらには、供述録取書において、署名・押印がない場合においても、同様の論理で肯定できる場合もある。らしい。●確認
●論証:伝聞証拠排除法則
●理由:しかし、真実発見(1条)のため証拠とする必要性が高く、かつ反対尋問に代わる信用性の状況的保障がある場合には、例外的に伝聞証拠にも証拠能力が認められる(321条以下)。
●注意:伝聞(書面ではなく)供述の場合、異議を申し立てなければ同意があったものと扱われる(最決昭和59年2月29日)。●補足:同意の擬制(326条2項)とは異なる。

特信性(321条1項2号前段)(AB)

●問題:321条1項2号前段が適用されるためには、特信性が要求されるか。
●理由:明文なし
●結論:同号前段が適用されるためには、特信状況は不要(判例)。
●補足:実務では、証明力の評価の段階で検討されている(ことになっている。)。

例示列挙(321条1項2号前段)(A)

●前提:まず、例示への該当性を判断する。否定されれば、例示列挙か否かが問題となる。
●問題:321条1項2号前段の供述不能事由は、限定列挙か、例示列挙か。
●理由:この点、同号前段の供述不能事由は、原供述者の供述が得られない典型的事由を示したにとどまる。
●結論:例示列挙と解される。

供述不能(記憶喪失・証言拒絶)(A)

●問題:321条1項2号前段が例示列挙である場合、記憶喪失・証言拒絶も同号前段の供述不能事由に含まれるか。
●理由:この点、誘導尋問等によっても証人の記憶喚起ができず全く供述が得られない場合、又は一切の供述を拒否した場合については、供述が全く得られない点で供述者の死亡等の場合と同様。
●要件:そこで、全面的に供述が得られなかった場合には。
●結論:記憶喪失・証言拒絶も、同号前段の供述不能事由にあたると解される。
●補足:証言拒絶権(146条)
【補足】
●供述不能の判断時期
●結論:証拠調べの時点(請求時点ではない)
●理由:将来の証人尋問の可能性を根拠にした訴訟遅延は真実発見(1条)に反する、
(反対説:弁論終結時説。理由:被告人の反対尋問権の保障)

強制退去(AB)

●前提:供述不能が要件。「国外にいる」は理由。ある程度継続的で、かつ可能な手段を尽くしても出頭させることができない場合(東京高判昭和48年4月26日、東京地決昭和53年9月21日)。
●問題:証人が国外強制送還された場合、「国外にいる」(321条1項2号前段)にあたり、送還前に作成された検面調書を証拠とできるか。
●原則:事実に照らし、また強制送還手続と刑事手続は別個の手続であることから、「国外にいる」にあたると解される。
●問題:しかし、被告人の証人尋問権(憲法37条2項)保障の重要性から、検察官による証拠請求が手続的正義の観点から公正さを欠くと認められる場合(●理解:これが要件事実)には、証拠能力が認められないと解される。
●例示:①検察官が国外強制送還を殊更利用した場合は勿論、②裁判所による証人尋問決定後に国外強制送還された場合等。他にも、③強制退去可能性を弁護人に伝え、証拠保全(179条)の機会を与えるか、検察官が証人尋問(227条)を請求する等、相応の尽力をしなかった場合も(東京地判平成26年3月18日)。
●参考:入管当局は速やかに退去させる義務あり(大阪地判平成7年9月22日)。自費(入管法52条4項)でも(日本の国費でも・国際慣行上の運送業者負担でも)強制送還であることに変わりなし。
●補足:321条1項2号の解釈論か、一般的な証拠禁止の観点か、議論あり。●方針:321条1項2号でOK

より詳細な(AB)

●補足:321条1項2号後段の検察官面前調書の取調べ請求義務(300条)。
●問題:検面調書の記載が、公判廷供述と比しより詳細である場合、「実質的に異なった」(321条1項2号後段)供述か。
●理由:そもそも検面調書は、一方当事者たる検察官が作成した書面であり、裁面調書よりは信頼性の状況的保障に欠けるため、その必要性は厳格に吟味する必要がある。
●結論:そこで、「実質的に異なった」とは、少なくとも公判廷における供述とは異なった結論を導く場合に限られると解される。
●判例:内容において詳細なものであれば、当たらないとはいえない、と。●検討
●補足:1号では、証明力の差があれば足りる、とされている。

取調調書(証人尋問後)(AB)

●問題:証人による公判廷供述後、検面調書が作成され、その後再度の公判廷供述がされた場合、当該検面調書は「前の供述」(321条1項2号後段)にあたるか。
●理由:再度の供述との関係では、「前の供述」にあたる。

●結論:証拠能力が認められる。
●判例(最決昭和58年6月30日):肯定(文言通り)。その上で特信性を厳格に検討する
方がベターという発想。
●補足:しかし、その証拠採用(321条1項3号)は公判中心主義(43条1項、282条1項等)に反する。また、2回同趣旨の公判廷供述があることから、むしろ当該検面調書の信頼性にこそ疑義が生じる。そこで、そのような場合には、特信状況(321条1項3号ただし書)が否定され、同号後段に該当しないものと解される。との説も。
●補足:公判前整理手続があるので、2回目の尋問自体がレアケース。●認識:ゆえあまり。

特信性(判断基準)(AB)

●問題:「前の供述を信用すべき特別の情況」(321条1項2号ただし書)の判断基準
●理由:この点、証拠能力の問題である以上、
●原則:供述内容自体ではなく、その外部的事情を基準とすべきである。
●例外:もっとも、供述内容自体を、その推知資料とすることは許されると解される。●補足:脅された・頼まれた等の外部的事情がないこともある。●認識:その方が多いのでは?
●具体例:整理整頓されている・他に裏付け証拠あり等から、(供述内容の信用性ではなく)真摯な供述・適法妥当な取調べと推知。逆(雑故…)もまたしかり。
●補足:客観的認定と一致する内容から全体的な信用性・担保事情の推認根拠とすることは認められる。
●参考:相対的特信状況とは、各供述の際の状況を比較し、検察官面前供述の方が信用できる状況があること(公判供述の方が信用できない特段の事情がある場合を含み、それが実際でもある。)。●重要

不可欠性(321条1項3号)(B)

●前提:321条1項3号は、伝聞例外の原則的形態。最厳格(実務上はまず出せない。)。3要件(供述不能・不可欠性・絶対的特信情況(それ自体が類型的に高い信用性具備))。
●結論:当該証拠の有無により、事実認定に著しい差異が生じ、有罪無罪や量刑に強く影響する可能性があることを要する。
(他の証拠と一体として事実認定可能だとしても非該当。)

●参考:3号の特信性についても2号同様、内容自体を推知資料として良い(3号限定で反対説あるも。)
●注意:まず、例示への該当性を判断する。否定されれば、例示列挙か否かが問題となる。

実況見聞調書(321条3項適用)(A)

●論証:「本件実況見分調書は、…であるから、「検証の結果を記載した書面」にあたる。よって、作成者…が、「真正に作成されたものであること」を供述すれば、伝聞例外として証拠能力が認められる。しかし、…は、説明、…は、写真…。そこで、以下それらの証拠能力を検討する。」●認識:例の論証を前提として軽く。

●問題:実況見聞調書につき、検証調書に関する321条3項が適用されるか。
●趣旨:同項が比較的緩やかに伝聞例外を認める趣旨は、(1)検証は専門的訓練を受けた捜査官が行う技術的行為であり恣意の入る余地が狭く、また(2)技術的な事項の報告は書面による方が正確性を確保できる点にある。
●理由:そして、その趣旨は、任意処分とはいえ、実況見聞の実質についても妥当する。
●結論:したがって、実況見聞調書も「書面」に含まれ、同項の適用があると解される。

【補足】
●問題:私人作成の実況見聞調書(B)●結論:適用なし●理由:検証調書同様の類型的信用性なし。●私人たる意思作成に係る診断書も同様(裁判を想定して作成しても…)
【参考】
●結論:私人作成の燃焼実験報告書:元消防署職員担当であり、経験豊富な会社作成なら可(3項については主体ではなく不可。321条4項準用。)(最決平成20年8月27日②)
●参考:真正作成供述は、(1)作成名義の真正、(2)記載内容の真正(見たまま書いた、というだけ。真実、ではない。)の両方を指す。●ときに重要
●参考:裁判所・裁判官による検証とは異なり、当事者の立会権(142条、113条)はない(222条1項が113条を準用せず。)。
●参考:司法警察員が再現している場合、供述通りの再現となっていることが担保されていない場合もありうる。
●判例:最決平成17年9月27日②:立証趣旨が「犯行再現状況」「被害再現状況」とされていても、実質的には再現通りの犯行事実の存在が要証事実と認定した。その上で、再現者の供述録取部分については、再現者の署名押印を欠くため証拠能力を否定。犯行再現写真については、撮影・現像等の記録の過程が機械的操作によるため署名押印不要と。●認識:常識。
●注意:捜査官がPCからメールを印刷して添付した「捜査報告書」は、「類似するものであるから」同様に、と書く。●確認:そのものではない、という前提の模様。
●注意:「捜査報告書」については、様々な性質がある。内容から、実況見分調書なのか、その他の書面にあたるのか等、実質的に検討・判断する。
●認識:税関職員作成の写真撮影報告書(犯則事件調査時)も本項の書面に含まれるとする(東京高判平成26年3月13日)。●認識:緩い文言解釈。
●参考:検視調書(229条)も3項書面でOK。
●参考:目撃者については、面割り等をし、犯行目撃供述+犯人識別供述まで得られれば、当該供述を直接証拠とすることができる。●検討:前者のみでは?

鑑定書(鑑定受託者作成)(321条4項準用)(AB)

●前提:裁判所・裁判官の命じた鑑定人(165条・179条)が文言。宣誓・制裁等による担保あり。反対説はその点を根拠とするが。●方針:無視
●問題:鑑定受託者(223条1項)作成の鑑定書につき、鑑定人に関する321条4項を準用できるか。
●趣旨:同項が比較的緩やかに伝聞例外を認める趣旨は、(1)鑑定は専門的知見を有する鑑定人によるものであり信頼性が高く、また(2)専門的な事項の報告は書面による方が正確性を確保できる点にある。
●理由:そして、その趣旨は、任意処分とはいえ、鑑定受託者による鑑定の実質についても妥当する。
●結論:したがって、鑑定受託者の作成した鑑定書にも、321条4項を準用しうると解される。
●参考:ポリグラフ検査結果回答書の証拠能力(法律的関連性)
●参考:被告人・弁護人は179条が使えるので必要ない。
●判例:最判昭和28年10月15日
●補足:医師の診断書も該当でOK
●判例:臭気選別については、「3項」としており、鑑定と位置付けていない可能性あり。●方針:鑑定と位置付け、4項(3項と同じ)、という理解で良い。●検討

(現場)写真(A)

●問題:(現場)写真は供述証拠か。仮にそうであれば、伝聞法則(320条1項)が適用されうることから問題となる。
●理由:(供述録取書とは異なり)機械的記録であり、正確性が担保されている。
●結論:よって、非供述証拠(署名押印不要)である。
●判例:最決昭和59年12月21日②

録音(A)

●問題:署名・押印が必要か。
●理由:この点、写真は機械的方法による事実の記録であるから、録取の正確性は問題とならない。
●結論:よって、署名・押印の要件は不要と解される。
●参考:他説:①「供述書」と同視される。②そもそも非供述証拠である。●認識:間に人が入っている以上、①ではない。また、②は、変。

指示説明(現場指示・現場供述)(A)

●現場指示(実施者の体験した事実)
実況見分調書記載の供述が、実況見分の端緒・動機・経緯等として用いられる場合(●理解:裁判所はそれを超えた解釈・認定不可)
→調書と一体として321条3項

●現場供述(立会人の体験した事実)
実況見分調書記載の供述が、犯罪事実を要証事実とする場合
→真実性立証のための証拠(伝聞証拠)として、321条3項に加え、321条1項2号・3号、又は322条1項の要件充足が必要。通常署名・押印なく証拠能力なし

●参考:実際には区別困難な場合も。犯罪捜査規範は現場指示を超える記載をしないよう注意喚起し、また検察官から司法警察職員に対し詳細部分を削除する指示をする場合も。

犯行再現(動作・供述・写真等)(A)

●前提:録音・録画等の全てに妥当
●理由:再現通りの犯罪事実の存在が前提となっていると考えなければ、無意味なもの。
●展開:現場供述(再現供述)について妥当し、また再現写真についても実質的には録取と同様と言える。
●結論:再現者が被告人なら322条1項、被害者等なら321条1項2号・3号の準用
●展開:再現供述の場合、現場供述としての処理(供述者毎の処理)となる。通常署名・押印なく証拠能力なし。
●補足:立会人の説明に基づき捜査官が動作した場合、当該動作は実質的には供述録取と同様であり、言供述者の署名・押印要と考えられる。録取自体ではなく、321条1項3号類推等になるが。

●問題:写真の場合、(行動により表現された供述と言えるが)署名・押印の要否
●理由:写真は機械的に作成されるため、記録の正確性は確保されている。
●展開:署名・押印は不要●補足:そもそも二重の伝聞ではない(非供述証拠である)でも良い。●検討
●参考:タイトルは諸々(「実況見分調書」の他、「写真撮影報告書」、「再現状況報告書」等)

●要点:全体(321条3項):①現場指示(問題なし)、②現場供述・再現供述、③再現写真、④現場写真(一体でOK)

●補足:犯行・目撃の物理的可能性を証明する場合はある。可能であることを実施者が知覚等することから、321条3項と一体でOK。場所・物・人等の客観的条件が一致していることは前提。なお、過去に可能性があったこと、は別問題。可能であったこと、即ち補助事実の立証(実質証拠(犯罪事実の存否のための証拠)ではない。)(のための補助証拠)。厳格な証明を要すると考えるのが一般。

第三百二十一条の二 被告事件の公判準備若しくは公判期日における手続以外の刑事手続又は他の事件の刑事手続において第百五十七条の六第一項又は第二項に規定する方法によりされた証人の尋問及び供述並びにその状況を記録した記録媒体がその一部とされた調書は、前条第一項の規定にかかわらず、証拠とすることができる。この場合において、裁判所は、その調書を取り調べた後、訴訟関係人に対し、その供述者を証人として尋問する機会を与えなければならない。
2 前項の規定により調書を取り調べる場合においては、第三百五条第五項ただし書の規定は、適用しない。
3 第一項の規定により取り調べられた調書に記録された証人の供述は、第二百九十五条第一項前段並びに前条第一項第一号及び第二号の適用については、被告事件の公判期日においてされたものとみなす。

第三百二十二条 被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。ただし、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。
2 被告人の公判準備又は公判期日における供述を録取した書面は、その供述が任意にされたものであると認めるときに限り、これを証拠とすることができる。

322条(A)

●前提:供述の相手方につき区別なし。
●趣旨:322条1項本文全体(憲法37条2項前段の保障は趣旨ではない。被告人自身による反対尋問はありえないため。)
●趣旨:322条1項本文前段(被告人が虚偽の不利益事実を述べることはないはず(経験則)。よって、検察官による反対尋問を考慮する必要がないため。)
●趣旨:322条1項本文後段(検察官による反対尋問の代替として。):多くはないが。普通は純粋な気持ちで真実を述べる状況。や、当該刑事事件上は有利でも他の刑事、或いは民事上は不利な場合。等。いわゆる被疑者ノートについて、適用が問題となるが。マメにそのまま書いていればOKだろう。と言われつつも、実務では、物としてか、被告人質問時の提示ぐらいらしい。
●趣旨:322条1項ただし書(「承認」(322条1項ただし書)の話であり、自白(319条1項)・自認(319条3項)とは別の話)●補足:文言上は「書面」限定だが、口頭にも準用すると解されている。
●趣旨:322条2項(公判準備・期日において、検察官による被告人質問の機会が与えられているため。)

第三百二十三条 前三条に掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。
一 戸籍謄本、公正証書謄本その他公務員(外国の公務員を含む。)がその職務上証明することができる事実についてその公務員の作成した書面
二 商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面
三 前二号に掲げるものの外特に信用すべき情況の下に作成された書面

323条

●前提:各号共通(趣旨:高度の信用性と書面の証明力の高さ。)。
●条文:323条3号は、「作成目的」・「作成方法」に照らし、1・2号文書と同様の高度の信頼性があるか否かにより判断。
●補足:作成者以外の者の目に触れる機会が多いか。業務活動の基礎となるか。も考慮要素となる。肯定されれば、認められ易い。が、決定的要素ではない。
●裁判例:京都地決昭和53年6月29日
●判例:各号とも、特信情況下で作成されたか否かにつき、書面自体に限らず、作成者の公判廷供述も考慮可能(最決昭和61年3月3日)。
●補足:1号・2号に個別対応書面(例:診断書・契約書等)は含まれない。カルテは2号に含まれる。

第三百二十四条 被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用する。
2 被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人以外の者の供述をその内容とするものについては、第三百二十一条第一項第三号の規定を準用する。

324条

●条文:324条
●参考:1項の「322条」はその1項のみ。●確認:理由は、その2項は、被告人自身の話なので。
●事例:メールの場合、被告人自身の供述(324条1項、322条1項)、被告人以外の供述(324条2項、321条1項3号)
●認識:321条1項3号等により、証拠能力が認められる書面は、「324条1項類推」により322条によれば良い。あたかも書面が供述したかのように。
●補足:324条による322条1項・321条1項3号の準用に際し、署名・押印不要(性質上当然)。同様に、再伝聞で324条類推適用(条文適示)する場合も、署名・押印不要でOK。
●確認:被告人がそれ以外の、は、①被告人に不利益なら(反対尋問権放棄と解し)322条1項準用。②不利益ではないなら、321条1項3号(検察官による反対尋問のため。)。以上多数説。●検討:①については、被告人質問はすれば良いのでは?ただ、結論同じか。
●確認:被告人が被告人の、は、被告人質問(322条2項)にて?

第三百二十五条 裁判所は、第三百二十一条から前条までの規定により証拠とすることができる書面又は供述であつても、あらかじめ、その書面に記載された供述又は公判準備若しくは公判期日における供述の内容となつた他の者の供述が任意にされたものかどうかを調査した後でなければ、これを証拠とすることができない。

●注意:あくまで「調査」に関する規定。「証拠とすることができない」は判決の基礎とできないという意味(証拠調べはできる)。「あらかじめ」も判決の基礎とするまでにという意味。以上、通説。
●補足:信用性の状況的保障がないことになるので、実務上、想定され難い。
●判例:326条の同意がされれば適用なし(最判昭和30年11月29日)。
●帰結:第三者供述に任意性を要求する根拠規定とはならない。
●判例:最決昭和54年10月16日

第三百二十六条 検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認めるときに限り、第三百二十一条乃至前条の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
2 被告人が出頭しないでも証拠調を行うことができる場合において、被告人が出頭しないときは、前項の同意があつたものとみなす。ただし、代理人又は弁護人が出頭したときは、この限りでない。

同意書面(A)

●前提:「その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認めるときに限り」だぜ。一応。
●問題:同意の法的性質
●結論:証拠能力を付与する積極的訴訟行為
●理由:当事者主義に基づき、証拠一般につき、処分権を認めたもの。
●帰結:違法収集証拠についても同様。ただし、重大な違法等の場合の同意は無効。
●背景:主尋問成功⇒反対尋問成功⇒書類が出て来る。本末転倒?⇒まず出させ。必要に応じ証人尋問請求。という実務。なお、近時、主尋問成功しており書面不要、と裁判所が判断する傾向も。
●参考:反対尋問権放棄説

●問題:出頭拒否(286条の2)・退廷命令(341条)の場合、326条2項は準用されるか?
●結論:肯定(最高裁判例)
●理由:公判手続の円滑な進行確保という趣旨妥当。
●参考:否定説(趣旨を同意意思推定規定と解し)

●補足:同意により任意性に疑いない状況が推認されるので、他の証拠によりそれが覆されない限り、任意性の立証不要。

●補足:同意した際の立証趣旨と異なる趣旨で使われる場合も。よって、留保付きで、が重要。裁判所が確認すべきとも。

第三百二十七条 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人が合意の上、文書の内容又は公判期日に出頭すれば供述することが予想されるその供述の内容を書面に記載して提出したときは、その文書又は供述すべき者を取り調べないでも、その書面を証拠とすることができる。この場合においても、その書面の証明力を争うことを妨げない。

再伝聞(AB)

●問題:再伝聞に証拠能力が認められるか、明文なく問題となる。性質上、原供述者の署名押印がないことが問題の所在。
●理由:この点、再伝聞の各過程につき要件(321条乃至324条)を満たせば、認めても実質的に不当ではない。また、認めない文理上の根拠も必ずしも十分ではない。
●結論:そこで、再伝聞の各過程につき321条乃至324条の要件を満たせば、証拠能力が認められると解される。
●参考:供述に限られない。書面(伝聞供述代用書面)も。書面も該当する根拠条文は324条類推(東京高判昭和30年4月2日)。ただ、書面ではない場合同様、条文適示不要でOK。
●認識:再伝聞の問題と伝聞供述代用書面とは別問題。●検討
●注意:実は学説批判強い。実務上、原供述者への確認、供述者の証人尋問等を行っている。また、そもそも他に証拠がない場合等の必要性が高い場合に限定している。

第三百二十八条 第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。

弾劾証拠(A)

●前提:実質証拠(主要事実(刑罰権の存否・範囲を画する事実)証明のための直接証拠・間接証拠)・補助証拠(実質証拠の証明力に影響する事実(補助事実)証明のための証拠)
●定義:供述の証明力を弾劾する補助事実を証明するための補助証拠
●前提:公判廷供述がなされた場面。どの供述を問題とするのかを指摘。
●問題:「証拠」(328条)は、同一人の自己矛盾供述に限られるか。
●理由:この点、供述の信用性は、同一人の自己矛盾供述の存在自体により減殺され、その内容の真実性は問題とならないことから、同条は非伝聞に関する注意規定であると解される。
●結論:そこで、「証拠」とは、自己矛盾供述に限られる。
●補足:正反対である必要はなく、いずれかが正しい、或いは真摯に公判廷供述した者であれば述べそうにないと合理的に考えられる供述等も含む。よって、厳密には、「自己矛盾」よりは「不一致」が正確。
●補足:厳格な証明を要すると考えるのが一般的。
●参考:署名・押印も必要(最高裁判例?●確認:H.18.11.7)。録取の伝聞性を払拭するため(●重要)。●補足:原供述者の供述録取書ではなく、原供述者の供述についての供述書であると構成すれば、当該供述書の供述者の伝聞性が払拭さえすれば使える、という学説もある。らしい。●検討
●注意:供述者の供述を聞いた者による公判期日における供述も該当する(伝聞証拠ではない。)。なお、原供述者の供述が記載された捜査報告書については、原供述者の署名・押印がなく、用いることはできない(捜査官の供述書と見ることは可能だが、3号要件充足は想定し難い。)。
●注意:「証拠とすることができない書面又は供述であっても」は、「そうでなくても」という趣旨。伝聞例外として認められる証拠を弾劾証拠として使用することは当然可能。よって、検察官が弾劾証拠として請求した証拠につき、当事者主義から、伝聞例外該当性を論じる必要性・許容性なし。なお、被告側への不意打ちにもなる。
●補足:証拠能力が認められる場合も、実務上、まずは反対尋問により信用性を減殺させるのが効果的であり、多い。成功すれば、証拠調べの必要性はなくなる。(裁判員裁判ではそもそも供述証拠の証拠調べは抑制的に運用されている。)●検討

「証明力を争う」(AB)

●注意:文言は「公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述」だが、書証(伝聞例外にあたり採用・証拠調べされた供述書・供述録取書等)にも類推適用(通説)。
●問題:(本問甲の供述は…という点で弾劾された供述の証明力を回復するが、)同一証人の以前の一致供述を提出できるか、「証明力を争う」(328条)の範囲が問題となる。
●理由:この点、かかる証拠により、基本的には一致供述をしており、矛盾供述は例外であることが明らかになり、実質的に弾劾証拠の証明力を減殺するため、証明力を「争う」場合といえる。
●結論:そこで、提出は可能と解される。
●判例:なし。裁判例(東京高判昭和54年2月7日)
●補足:弾劾証拠としての自己矛盾供述自体の信用性を問題にする意味はなく、弾劾する意味もない。むしろ変遷するため信用性低下ゆえ原則不可。ただし、(例えば「Aが犯人」とのB証言が、(弾劾証拠(328条)ではないC証言「Bは証言直前にAと口論していた」等により弾劾された場合において、Bが事件直後(口論前に)「Aが犯人」と証言していたとき(いわゆる利害関係による弾劾についての自己矛盾供述による回復)等)変遷の合理的理由があれば例外的に。という反対説も有力。なお、供述を変遷された理由が供述録取書等に記載されている場合、その部分(補助事実)についても、(弾劾証拠部分と同様)厳格な証明を要すると考えられる。よって、原則として、伝聞証拠によれないこととなる。なお、実務では、供述変遷について反対尋問で指摘され、再主尋問で理由説明することとなる(●認識:書面を出さない・出せない場合)。●検討
●検討:論点となる理由
【補足】増強証拠(AB)
●結論:不可(福岡高判昭和31年4月4日)
●理由:供述の一貫性から供述の信用性は認められない(●補足:一貫性がなければ、信用性はないが。)。実質的証拠として許容するに等しいため。「争う」と言えないため。
●参考:可(東京高判昭和31年4月4日)

弾劾証拠(作成時期)(AB)

●問題:328条に基づき提出される書面・供述が、争う対象たる供述より後に作成・供述された場合、提出が許されるか。弾劾証拠の範囲が問題となる。
●理由:①321条1項2号後段のような明文「前の供述」なし、②補助証拠に反対尋問権(憲法37条2項)の保障なし、③存在自体は非伝聞であり時期限定の必要なし。
●結論:許される。
●判例:最判昭和43年10月25日(平成18年判例後に先例性あるか不明、との考えもあり。)
●実務:特段の事情がないと出さない。虚偽だと判明・承認した場合等において、再度証人尋問するも調書同様の証言見込みなき場合に限り、としている模様。●検討
●反対説(多数説か):●理由:公判中心主義(43条1項、282条1項等)の見地から。
●結論:弾劾証拠として提出できるのは、弾劾対象たる証拠以前の書面・供述に限定されると解される。
●展開:よって、提出は許されない。

共犯者・共同被告人

公判廷供述の証拠能力(共犯者たる共同被告人)(AB)

●前提:共犯者・共同被告人を区別(現実的には一致が多いが理論上)
●前提:(共同)被告人には証人適格なし。包括的黙秘権(憲法38条1項、法311条1項)があり、宣誓・証言義務(154条、160条、161条)を負う証人とは相容れない。
●事例:共同被告事件において、一方が自白し、他方が否認している場合、自白している者の供述の問題。●理解:3つの方法:①併合審理のまま、②分離、③供述調書提出
問題:共犯者たる共同被告人の公判廷供述(311条2項)に、他方被告人に対する関係で証拠能力が認められるか。
●理由:相被告人には反対質問権(311条3項)は保障されており、また直接主義(●条文)により、裁判官の自由心証による証明力評価が可能である。
●結論:よって、かかる公判廷供述(自白)についても証拠能力が認められる。●判例。●私見:当然
●認識:伝聞自体の話ではない。が、反対尋問権が認められない点で類するため、(違法収集証拠とまでは言えないだろうが)法律的関連性一般の問題か。

●反対説
・公判廷供述につき、知覚・記憶・表現の過程に虚偽の介在する危険のある場合、証拠採用のためには反対質問(311条3項)による吟味が不可欠である。
・しかし、形式的には質問の機会があっても、被告人は包括的黙秘権(憲法38条1項、法311条1項)に基づき質問に応じない可能性がある。
・そこで、共同被告人が黙秘権を行使せず、反対質問に十分答え、事実上反対尋問が行われたといえる場合等に限り。共同被告人の公判廷供述は、他方被告人に対する関係において、証拠能力を認められると解される。
・行われなかった場合には、職権による証拠排除決定(規207条)

手続分離による証人尋問の可否(共同被告人)(AB)

●前提:弁論分離義務(313条2項、規則210条)
●問題:手続を分離した場合、共同被告人に証人適格が認められるか。
●理由:この点、自己負罪等について、証言拒絶権(146条等)が認められており、黙秘権(憲法38条1項、法311条1項)を侵害しない。●判例
●結論:よって、証人適格が認められる。その結果、証拠能力が認められる。●私見:当然
●認識:黙秘権侵害か。という問題。か。●認識:違法収集にならない、ということ?法律的関連性一般の問題?

●反対説
・この点、証人喚問された場合、拒絶権に基づき証言を拒否すれば、自ら有罪であることを暗示させる(146条参照)一方、拒否せずに証言すれば、偽証罪(刑法169条)の制裁の下、反対尋問により供述を強要される。よって、手続を分離した場合における元共同被告人に証人適格が無制限に認められるとすると、包括的黙秘権(憲法38条1項、法311条1項)の保障を全うできない。
・そこで、手続を分離しても、被告人の意思に反する場合、又は供述者自身の犯罪事実との関係においては、証人適格が認められないと解される。被告人の反対尋問権は、被告人質問(311条3項)の限度で保障される。
・被告人が無罪を主張していない場合、認められると解される。

公判廷外供述の証拠能力(共犯者たる共同被告人)(A)

●問題:共犯者たる共同被告人の公判廷外供述(・調書)について、被告人の同意がない場合、伝聞例外として証拠能力を認められるか。
●理由:この点、①共同被告人間の利益相反の可能性に照らし、被告人の反対質問(311条2項)の機会を確保する必要がある。また、②共同被告人も、該被告人との関係では、「被告人以外の者」(321条1項)である。
●結論:そこで、(322条ではなく)321条1項各号の要件を充足した場合には、伝聞例外として、証拠能力が認められる。
●補足:共同被告人なので問題(そうでなければ問題なく(322条ではなく)321条1項各号)
●参考:重要・頻出

補強証拠の要否(共犯者の自白)(AB)

●問題:共犯者の自白に補強証拠が必要か、共犯者の自白が「自白」(憲法38条3項、法319条2項)に含まれるか、問題となる。
●理由:この点、①自由心証主義(318条)の例外である以上、厳格に解釈すべき(必要性)。②裁判所は、共犯者供述の有する引っ張り込みの危険(しかも迫真性あり)に留意する等、本人の自白とは異なり、信用性について慎重な吟味を行う(許容性)。●理解:②は証明力の問題
●結論:そこで、共犯者の自白は「自白」にあたらず、補強証拠は必要ないと解される。●理解:実務上、共犯者の自白のみで有罪とできることはまずない。
●参考:「また、自白した者が無罪となり、否認した者が有罪となることも、自白が「反対尋問を経た供述」(※)より証明力が弱い以上、少なくとも不合理ではない。」という理由を書くこともある(どちらでも)。
(※)公判廷における証人尋問における自白の場合の話。
・共同被告人への被告人質問の場合:「事実上の反対尋問を経た供述」
・公判廷外の場合:「反対尋問に代わる信用性の状況的保障のある供述」
●前提:判例は、(単なる共犯者は勿論)共同被告人であっても、という話(●認識:それでOK)。●認識:学説は、反対尋問を経た場合に限定する。が、反対尋問を過信し、公判廷外供述が伝聞例外として許容されることを軽視している、等と批判される。
●参考:自白に補強証拠を要するのは、自白の場合には反対尋問されないから。●確認:らしい
●参考:「あたる」説では、①共犯者の自白は相互に補強証拠となりうるか。②共犯者2名の自白があれば被告人を有罪とできるか。も論点。が、上記判例からは当然肯定。
●判例:練馬事件(最判昭和33年5月28日(大))、最判昭和51年10月28日①

裁判

【知識・留意点】
●条文:「第二編 第一審」⇒「第三章 公判」⇒「第五節 公判の裁判」(第329条~第350条)。●認識:330番台の条文が重要(340・350はあまり)
●条文:「犯罪の証明があった」(333条1項)ときは、判決で刑の言渡をしなければならない。●認識:択一的認定等で問題
●条文:有罪の言渡をするには、「罪となるべき事実」(335条1項)等を示さなければならない。●認識:択一的認定等で問題
●条文:「犯罪の証明がない」(336条)ときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。●認識:「利益原則」(憲法31条、法336条後段)(●認識:裏あり。確定。)
●条文:免訴(337条)・控訴棄却(判決)(338条)・控訴棄却(決定)(339条)
●判例:共謀の事実の存否は、罪となるべき事実に属し、厳格な証明を要する(最判昭和33年5月28日)。
●参考:上訴(第351条以下)・最終条文は第507条。
●条文:不告不理の原則(378条3号)

黙示的択一認定(論理的択一関係あり)(AB)

●前提:実質的には、①「犯罪の証明があった」(333条1項)か?(裏から336条1項が問題)(と刑法的だが、罪刑法定主義(合成的構成要件?)の視点も。)、②、(①が肯定される場合、形式論として)②「罪となるべき事実」(335条1項)の適示という2つの問題。後者の違反は理由不備(378条4号参照)。
●前提:同一構成要件内の択一的認定(概括的認定の一種):概括的認定:構成要件該当性判断が可能な程度具体的に事実を示せば足りる(最決平成13年4月11日)。ただし、量刑に影響を及ぼす犯情差異がある場合、利益原則に照らし、犯情が軽い方を認定すべき(裁判実務家では有力)。
●事例:保護責任者遺棄罪と死体遺棄罪、故意犯と過失犯等
●問題:異なる構成要件が論理的択一関係にある場合、軽い方の犯罪事実認定は許されるか。(例:保護責任者に遺棄された被害者が生死不明)
●理由:この点、いわゆる利益原則(憲法31条、法336条)は、事実認定に際し価値判断を加えつつ論理的判断をし、存否不明の事実を「否」と認定するものである。
●理由:それと同様
●結論:重い犯罪事実につき価値判断上不存在と認定する一方、論理的に軽い犯罪事実を認定することも許されると解される。
●補足:その場合でも、手続上別途、当初から予備的訴因・択一的訴因か、審理途中において明示的に予備的・択一的訴因追加、が必要。
●参考:「罪となるべき事実」(335条1項):構成要件に該当する具体的事実をその該当性判断に足りる程度に判示する(●重要)。

黙示的択一認定(論理的択一関係なし)(AB)

●事例:窃盗か盗品等無償譲受けが成立との心証に至った。
●問題:犯罪事実が論理的択一関係にない場合、軽い方の犯罪の認定が許されるか。
●理由:重い方の犯罪事実の不存在は、論理的に軽い方の存在とはならないため、その存在認定は利益原則(憲法31条、法336条後段)に反する。
●結論:よって、軽い方の犯罪事実を認定することは許されないと解される。
●補足:①256条5項のような規定なし。②合成的構成要件を創出し、罪刑法定主義に反する。も含め、3点セットが理由だが。●方針:ほぼ形式論ゆえ無視

択一的認定(単独犯・共同正犯)(A)

●前提:共謀の事実の存否は罪となるべき事実に属し厳格な証明を要する(最判昭和33年5月28日)。
●実務:「私が一人でやりました。ただ、…の指示ですわ。」との主張は良くある。
●注意:訴因変更の要否とは別問題。訴因変更の上、変更後の訴因につき認定する場合の問題。事案により、両方検討する。
●基本:犯罪の日時・場所・方法等を以って構成要件に該当する具体的事実を記載したものが訴因である。
●基本:縮小認定の典型例:共同正犯として同時起訴された2名の共謀が認められない場合、一方は単独犯、他方は無罪となる。

●事例:被告が実行行為の全部を行ったことは明らか。それが共謀に基づくものかは証明できない。
●問題:共謀共同正犯の実行犯か単独犯かは、同一構成要件内の問題(択一的認定)か、異なる構成要件の問題(狭義の択一的認定)か。
●理由:共謀の立証がない以上は。共謀の可能性は量刑上考慮すれば足りる。●帰結:被告人は正犯である、との認定に留まる。単独正犯である、とまでは言っていない。よって、共謀の可能性がある点は、情状として考慮されうる。●方針:これで良い。一人でやったのは確実なので、単独犯でOK。他は禁止・議論あり等なので。
●結論:単独犯認定説(東京高判平成10年6月8日・最判平成21年7月21日)
●判例:「被告人一人の行為により犯罪構成要件の全てが満たされたと認められるときは、他に共謀共同正犯者が存在するとしてもその犯罪の成否は左右されない」(最判平成21年7月21日)。要するに、共謀がないこと、は、単独犯の成立要件ではない、ということ(書かれざる構成要件要素(成立要件)である旨の批判があるが、放置でOK。)。

●反対説:①(明示的)択一的認定説(「単独又は共謀の上」)(東京高判平成4年10月14日):根拠:「被告人が実行行為を全て単独で行ったことに変わりはなく、…基本形式か修正形式かの違いはあるにせよ、同一の構成要件に該当…量刑が、共同正犯の事実を基礎に行われる限り、被告人に不利益を及ぼす余地は全くない」。批判:厳密には同一構成要件ではなく、合成的構成要件の作出であり罪刑法定主義に反する(●認識:ゆえ訴因変更したはず。)。
●反対説:②共謀認定説(札幌高判平成5年10月26日):根拠:利益原則。なお、保護責任者遺棄と死体遺棄についても同様の判断がある(札幌高判昭和61年3月24日)。)。批判:利益原則にかかる積極的機能はなく、「犯罪の証明があった」(333条1項)とは言えず、ある事実の存否に合理的な疑いがあれば認定できない、に過ぎない(大阪地判昭和46年9月9日参照)。また、共謀の存在は必ずしも被告に有利とは限らない。なお、この説は、秘められた・隠れた択一認定、とも言われる。
●参考:最決平成13年4月11日③:訴因(「Xが」の)変更手続きを経ずに実行行為者を択一的に認定(「Y又はXあるいはその両名」と)したことが法令違反かが問題となった。結論的には、不意打ちでも、より不利益でもないから、と③で切った(考慮要素:当初から実行行為者が主要な争点。被告人の主張を容れ、被告人のみが、とはしなかった。等の「審理の経過」を考慮した。)。●前提:共同正犯の成立要件は、共謀者の誰かが実行したこと、なので、誰が実行したかは、その成否と無関係。共謀の日時も訴因ではない。

一事不再理効(AA)

●趣旨:(被告人の物心両面の負担を勘案し)二重の危険の禁止(憲法39条前段後半・後段、法337条1号(効果))
●理由:そして、被告人は、訴因変更により処罰されうる範囲において危険を負担。
●結論:したがって、一事不再理効は、原則として、公訴事実の同一性(312条1項)の範囲で生じると解される。
●結論(時間的範囲):したがって、一事不再理効は、原則として、訴因変更が可能な時点までの事実に及ぶと解される。
●補足:形式的確定を待って発生(重要)。

●補足:単一性で終わり、狭義の同一性は問題とならず。事実関係の詳細が不明なので。
●補足:一事不再理効により公訴提起できないことから、実体裁判(有罪・無罪)及び免訴判決については、既判力を論じる実益なし。形式裁判(管轄違いの判決、公訴棄却の判決・決定)のみ。
●補足:常習窃盗問題の場合、「公訴事実の同一性」(312条)と同様に処理すれば良い(最判平成15年10月7日)。即ち、①訴因同士を比較し(●認識:当事者主義が実質的には最大の理由)、②それらの記載に実体法上の一罪を検討すべき契機(例:常習性の発露)があれば、(訴因同士の比較に留まらず)補充的に訴因外の事実を考慮する(実体審理の上、心証形成する。)、でOK。

一事不再理効(免訴判決)(AB)

●前提:形式裁判に一事不再理効はない。有罪判決の危険がなく。
●問題:免訴判決が実体裁判であれば、一事不再理効が認められる。そこで、免訴判決の法的性質が問題となる。
●理由:この点、免訴事由(337条各号)は、実体審理自体を否定するものであることから。
●結論:免訴判決は形式裁判であると解される。
●展開:そうすると、免訴判決には一事不再理効は生じないかに思われる。
●趣旨:一事不再理効
●理由:とすると、一事不再理効が生じる範囲は、被告人に二重の危険を負担させないよう柔軟に考えられる。また、免訴判決は、無罪と同様に扱われ(183条、435条6号)、かつ再訴を予定しない点で、管轄違い・控訴棄却(254条1項等)と明確に区別される。
●結論:よって、肯定

一事不再理効(同時審判が法律上不可能な場合)(AB)

●趣旨:一事不再理効
●理由:抽象的には二重処罰の危険が及んでいた。
●結論:よって、許されない。

一事不再理効(訴因と併合罪の関係にある余罪)(B)

●趣旨:一事不再理効
●原則:よって、訴因と併合罪の関係にある余罪は、公訴事実の同一性を欠き、原則として一事不再理効は及ばない。
●理由:もっとも、起訴なき余罪につき実質上処罰する趣旨で量刑資料とされた場合、余罪についても訴追・処罰の危険が及んでいたと言え。
●結論:一事不再理効が及ぶと解される。
●理由:また、余罪につき情状推知の一資料とされたに過ぎない場合も、余罪判明時点で検察官による一括処理ができた以上、訴追・処罰の危険が及んでいた言えるため。
●結論:一事不再理効が及ぶと解される。
●参考:余罪については、窃盗・業務上横領等で多数の実行行為が存在するが、それらの一部のみ起訴した場合が典型例(全く関係ない余罪、ではない。●確認:「余罪」自体がそうか?)。

一事不再理効(社会観念上一個の事実)(AB)

●問題:自動車運転過失致死罪で確定判決を受けた被告人につき、同一の交通事故につき道路交通法違反(酒酔い運転罪)で起訴する場合 
●趣旨:一事不再理効
●原則:したがって、自動車運転過失致死罪と併合罪関係にある道路交通法違反の罪については、原則として、一事不再理効が及ばない。
●理由:しかし、両罪が社会観念上一個の事象である場合、通常は同時捜査・審判され、検察官は同時訴追可能であったと言え、被告人は道路交通法違反の罪についても訴追・処罰の抽象的危険にさらされていたと言える。
●結論:そこで、例外として、一事不再理効が及ぶと解される。
●検討:併合罪の論点と同様?

一事不再理効(時間的範囲)(B)

●趣旨:一事不再理効
●理由:この点、新たな行為についても、弁論再開(313条1項)後に訴因変更の対象となりうるため、処罰の危険は存在する。
●結論:そこで、一事不再理効は、前訴第一審の判決言渡し時までの事実に及ぶと解される。
●裁判例:大阪高判昭和61年9月5日(最高裁判例なし)
●補足:第一審判決時の後は、やりたい放題、は不合理なので。それで良い。
●補足:既判力の主観的範囲については、共犯者には及ばない点で争いなし。

ワヴィニー

日本の刑事法(刑事訴訟法(公訴・公判))は「全く知らない」というのもマズイかと考えまして、試みに…

律子

「『全く知らない』訳ではない」ということだけは、かろうじて理解できました(笑)。

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