公序(発動後の処理)

律子

公序(発動後の処理)について、質問があります。

ワヴィニー

3つだけなら、答えられますよ。

律子

1.問題の所在は?

ワヴィニー

1.公序条項が発動され、外国法の適用が排除された場合、①法の欠缺が生じるのか、②生じるとすると、準拠法となるのは如何なる法か?、ということです。

律子

2.通説(有力説)・判例等は?

ワヴィニー

2.判例によれば、①法の欠缺が生じ、②日本法が適用されます。

他方、通説によれば、法の欠缺は生じない(②の議論とはならないので、日本法適用説ではない。
外国法の適用排除の前提となった公序が存在する以上、当該公序が確保される範囲において日本法が適用されると解されるからです。

律子

3.反対説・批判は?

ワヴィニー

3.私見(最高裁判例について合理的に理解すると)

①外国法を「適用しない」(42条)という判断の前に、日本法の適用がなされることは、内外法平等の原則に反する。よって、外国法の適用排除の過程において、日本法が「適用」されることはない(判例のいう法の欠缺も、あくまで外国法の適用排除の結果に過ぎない。)。

②外国法の適用を排除する判断の過程において機能する公序(「公の秩序又は善良の風俗」)(42条)は、論理必然的に日本法の一部(※)を構成している。しかし、上述の通り、それは「適用」ではなく、いわば「斟酌」されているに過ぎない。よって、外国法の適用排除の時点においては、法の欠缺が生じることとなる(通説に反対)。そこで、法の補充が必要となり、当該法として、②で「斟酌」した日本法以外を探索する合理的必要性がない。

③具体的な法規範に基づかず裁判をすることはできない以上、②で「斟酌」された日本法について、改めて「適用」することが必要不可欠(通説に反対)。

④もっとも、内外法平等の原則に照らし、公序条項の発動は例外であることから、適用される日本法の内容は、外国法の適用結果是正のため必要最小限の範囲に留まる。
(仮に判例が、国内的法律関係と同様、単に(国内的法律関係同様に)日本法を適用をするのであれば、判例に反対。しかし、仮に上記のように「必要最小限の範囲に留まる」のであれば、判例に賛成。そのように解するの合理的であり、そうすれば、いわゆる「逆転現象」は生じない。)

(※)国際私法上の公序条項発動のためには、外国法の適用結果が単に「日本法上の強行法規に反する」というだけでは足りない。仮に足りるとすると、準拠法選択の段階において、内外法平等の発想で外国法を選択した趣旨が没却される。公序条項の発動は、あくまで準拠法適用の段階における例外であることから、それにより守られるべきは「日本法上中核的な強行法規に反する」部分に限られる。そして、かかる「中核的な強行法規」は当然日本法に含まれている。

なお、「国際私法は学説法」と言われていた時代の名残りだと思われますが、普遍的(超国家的)公序説もあるようですが。そんなものは存在しないですし、仮に存在するとしても、それを適用して日本の裁判所が日本法の適用を排除することもないです。したがって、その存在につき論じる実益はないと考えます。)

律子

他にも質問がありますが、4つ目以降は、またの機会に。

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