刑法(各論)~国際私法の範囲外

「…刑事法等の公法の抵触問題と私法のそれとはその性質が大いにちがうものであるから、…国際刑事法は国際私法の範囲から除外するのが妥当である。」
(江川英文『国際私法(改訂)』(有斐閣、1957)17頁)

目次

留意点・知識

●各論でも総論を意識(逆も)
●各論では、1つ1つ構成要件を認定する。
●民法との関係:「民法の目的は、財産関係秩序の終局的な確定・安定等にあるが、刑法の目的は、現実・現在の秩序を実力による侵害から守る等にある」等とフレーズする。
●不同意わいせつ罪における性的意図は、一要素ではあるが、基準ではないことになった(S.C.H29.11.29G。S45判例変更)。
●「殺した」(199条)は、人の死の結果発生の現実的危険性を有する行為 ●認識:「実行行為」の定義を書くのは総論の論点でのみ。後は各論の具体論。
●傷害(204条)は、暴行の結果的加重犯を含む。●これだけでもOK。●実質的には、刑の不均衡(暴行(208条)と過失致傷(209条1項)のみ成立)、形式的には、「傷害するに至らなかったとき」(208条)から。●定義:「暴行」(208条):人の身体に対する有形力の行使。●認識:無形の暴行の場合は結果的加重犯ではない、というのが一般的、らしい。が、PTSD等の多発する現代、区別する必要性・相当性なし(私見)。
●定義:「傷害」(204条・205条):人の生理的機能を害すること
●207条:傷害致死罪にも適用される(判例)。また、意思の連絡ある場合には、当然適用される(判例)。いずれかの暴行と死の結果との間に因果関係が認められるときであっても同じ(最決H28.3.24)。
●胎児障害:「母体の一部」に対する行為により、「人」に死の結果をもたらした点、(元胎児である)人に対する業務上過失致死罪(判例)。●認識:法定的符合説的
●定義:「業務」(209条・210条・211条):人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、他人の生命・身体の危険を生じるおそれのあるもの。●認識:かかる「おそれ」の要素が加わる「業務」はこれぐらい。●「業務」’(117条の2前段)は、「職務として火気の安全に配慮すべき地位」(最判S.60.10.21)。特別な注意義務があるので重く処罰される(211条)。「重大な過失」は、結果の大きさは関係なく、容易に結果回避し得た、わずかな注意を払わなかったこと。●補足:「社会生活上」から、家事・育児は除く。また反復継続意思があれば、1回でも該当。
●定義:「脅迫」(222条):人を畏怖させるに足る程度の害悪の告知
●定義:「暴行又は脅迫」(性的自由に対する罪):相手方の反抗を著しく困難にする程度の
●定義:「暴行又は脅迫」(強盗罪):相手方の反抗を抑圧するに足りる程度の
●207条:暴行が、特定の傷害を生じさせ得る危険性を有しない場合、その適用の前提を欠く(最決令和2年9月30日②)。
●定義:「恐喝」(恐喝罪(249条):暴行(相手方を畏怖させるに足りるの反抗を抑圧するに至らない程度)・脅迫(相手方を畏怖させるに足りる害悪の告知(脅迫罪より弱い(害悪の内容・性質等を問わず))。
●財産罪では、金額毎の認定を。
●社会的法益は放火と文書偽造のみ。
●放火は論点3つのみ。保護法益が重要。
●文書偽造は文書の性質が重要。保護法益も重要。
●賄賂は結構頻繁に問題となる。特に各構成要件要素を正確に。
●自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(全6条)も一応意識。

自殺関与(202条前段)

●事例:偽装心中(自ら)
●問題:「自殺」の解釈(通説)●補足:傷害(204条)は承諾の有効性の問題
●理由:「真意に添わない重大な瑕疵ある意思」に基づく行為は、
●結論:「自殺」ではない。
●判例:最判昭和33年11月21日
●前提:真意の他、死の意味の理解も必要。同意系の論点に共通の問題。●認識:あまり(幼児ぐらい。今後は認知症等のケースあるか。)
●補足:着手時期(自殺自体は適用。しかし、独立の犯罪類型として、教唆・幇助自体を処罰。よって、教唆・幇助行為の時点で実行の着手あり。)

同意殺人(202条後段)(AB)

●事例:偽装心中(相手方により)
問題:「嘱託」・「承諾」の解釈(殺人罪(199条)との区別)
●理由:生命という保護法益を放棄する以上、嘱託・承諾は真意に基づく必要がある。その動機に重大な錯誤がある場合、真意による有効な嘱託・承諾とは認められない。よって、構成要件段階における類型的違法性が除去され
ない。
●結論:嘱託・承諾はない。(●社会的相当性がない、ではなく)。
●補足:上記はあくまで構成要件の解釈論。違法性段階で初めて社会的相当性の話。

●補足:承諾と錯誤:法定的符合説的発想で処理。
●自殺関与罪(202条前段)の実行の着手時期について争いあり。202条前段との均衡から自殺行為開始時、としておく(私見)。

逮捕・監禁(AB)

●問題:被害者が身体活動の自由を侵害されていることにつき認識が必要か。●方針:気絶させてトランクに、等の事案では、軽く書く。
●理由:身体活動の自由は、思い立てば行動しうることを意味するから、可能的自由で足りる。
●結論:被害者が身体活動の侵害を認識している必要はないと解される。
●補足:監禁時期により、監禁致傷がありえる(●重要)。●検討:客観的に自由を奪った時点。致傷なくとも、着手時期の重要性から。機会ではない。手段と因果関係あるもののみ。
●定義:監禁とは、人の身体を場所的に拘束すること。
●定義:逮捕とは、人の身体を直接的に拘束すること。

(不同意わいせつ等致死傷)
第百八十一条 第百七十六条若しくは第百七十九条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
 第百七十七条若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。

不同意性交等致死傷罪(故意ある場合)(AB)

●問題:不同意性交等致死傷罪(181条2項)に故意ある場合は含まれるか。
●理由:この点、不同意性交等の場合、故意に被害者を死亡(負傷)させることはまれである。また、同項には結果的加重犯特有の「よって」との文言がある。
●結論:よって、同項には、故意ある場合を含まないと解される。
●理由:もっとも、故意ある場合の死亡(負傷)結果につき、177条・199条(177条・204条)のみ適用すると、181条2項の刑の下限(6年)と比し、刑の不均衡が生じる。
●結論:そこで、死亡(負傷)結果につき故意ある場合、181条2項・199条(204条)の観念的競合(54条1項前段)になると解される。
●判例:最判昭和53年10月25日
●批判:死傷の二重評価
●補足:既遂未遂は性交自体。保護法益から。
●参考:有力説(傷害の場合、181条2項のみ適用。殺害の場合、177条・199条の観点的競合。)理由:強制性交等の場合、被害者に傷害が生じることは一般的であり、未必の故意が認められうる。他方、殺意はないのが一般的。死傷の二重評価は回避すべき。)●認識:不同意性交となると、そうは言えない。

第三十章 遺棄の罪

(遺棄)
第二百十七条 老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。

(保護責任者遺棄等)
第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

(遺棄等致死傷)
第二百十九条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

「遺棄」(217条・218条前段)(AB)

●保護法益:被遺棄者の生命・身体の安全、及び善良な社会風俗
●結論(通説):「遺棄」(217条)は、作為による移置。「遺棄」(218条前段)は、作為による移置の他、不作為による置き去りをも含む。
●理由:217条には218条のような保護義務規定がなく、不作為は処罰しない趣旨。
●批判:連続する条文における同一文言につき、異なった解釈をすることは不自然。

【参考】有力説
●問題:「遺棄」(217条・218条前段)
●結論(有力説):「遺棄」(217条・218条前段)は、作為による移置のみをいう。
●理由:218条が、遺棄とは別に「不」保護を規定しているのは、「不」作為による遺棄を含ませる趣旨と解するのが自然。
●検討:不作為による遺棄について、218条の「遺棄」に含めるのか(判例)、「保護をしなかった」に含めるのか(有力説)、の違いのみに思われる。

●参考:判例は引き受けを厳しく要求するので218は不成立が多い。199→218→217で検討。不作為は218のみで、が判例。
●参考:業務上堕胎罪等が成立しても、行為態様次第で別途成立する。

第十二章 住居を侵す罪

(住居侵入等)
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

第百三十一条 削除 (未遂罪) 第百三十二条 第百三十条の罪の未遂は、罰する。

住居侵入罪の保護法益(A)

●法益:住居等の管理権、及び私生活の平穏
●定義:「住居」:日常生活に使用されている場所(・その囲繞地)
●定義:「看守する」(住居以外で必要な要件):事実上管理支配する
●定義:「邸宅」:居住用の建造物で住居以外のもの(・その囲繞地)
●定義:「建造物」:柱・屋根・壁を有し、人の起居・出入りに適する構造を有する建築物(住居・邸宅以外)(・その囲繞地)
●要件:「侵入」とは、住居権者(・管理権者)の意思に反して立ち入ること。

第三十四章 名誉に対する罪

(名誉 損)
第二百三十条 公然事実を摘示し、人の名誉を 損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

(親告罪)
第二百三十二条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う。

名誉毀損・侮辱(AB)

●問題:いずれも人への否定的表現だが、区別が不明確。
●結論:事実の適示の有無により区別
●理由:「事実を摘示し」(230条1項)、「事実を摘示しなくとも」(231条)
●要件:「公然」:不特定多数人の視聴に達せしめ得る状態(特定少数に対する場合であっても、伝播可能性があれば「公然」(判例))●認識:行為者の意思は無関係の模様
●定義:「事実」:人の社会的評価を低下させるに足りる具体的事実

事実の証明による不処罰(A)

法的性質(230条の2)(A)

●問題:法的性質
●理由:表現の自由(憲法21条)と個人の名誉(憲法13条)との調和の見地から。●認識:通常これだけでOK
●結論:違法性阻却事由
●補足:表現の自由の重要性から犯罪不成立とすべき(処罰阻却事由ではない)。真実性の判断は、定型的ではない、個別具体的な判断が必要(構成要件該当性の問題ではない)。●定義:「公共の利害に関する事実」:民主主義社会において市民が知る必要がある事実(判例は、行為の性質や社会的影響力の程度等を考慮)●認識:一説だろうがまぁOK

真実性の錯誤(A)

●前提:法的性質(230条の2)は違法性阻却事由
●問題:真実性の証明がない以上、違法性は阻却されない。
●論点:故意責任の本質
●帰結:とすれば、違法性阻却を基礎付ける事実を認識していれば、責任故意は阻却される。
●結論:そこで、行為者が、事実を摘示した当時、確実な資料・根拠に基づき(※)、証明可能な程度の真実であると誤信した場合、責任故意は阻却されるものと解される。
●補足(※):状況的要件。趣旨から政策的に。この点の誤信は考慮せず。
●方針:「そこで、当該認識は、「真実であることの証明」(230条の2第1項)という訴訟法的表現を、実体法的表現に引き直し、「証明可能な程度の真実性」の認識と解される。」は省略。

第三十五章 信用及び業務に対する罪

(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(威力業務妨害)
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

(電子計算機損壊等業務妨害)
第二百三十四条の二 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。

公務と「業務」(234条)(A)

●保護法益:社会的・経済的活動の自由(233条後段、244条)
●問題:公務は特殊な業務と言えるが、「業務」(233条後段・244条)に含まれるか。
●理由:①強制力を行使する権力的公務であれば、偽計や威力による妨害に対処可能。②その他の公務は、私企業同様、偽計や威力による妨害に対し、偽計業務妨害罪によっても保護する必要あり。
●結論(判例):よって、強制力を行使する権力的公務を除き、公務も「業務」に含まれると解される。
●補足:「偽計」に対しては、強制力を行使できる公務も保護に値する、との裁判例(東京高判平成21年3月12日)あり。●理解:犯罪予告の虚偽通報(「偽計」)があった場合について、「強制力…行使し得る段階にはなく」として、「業務」にあたる。本罪による保護対象とした。●認識:これで良い。ただ、いたずれ電話なども多いだろうし、しゃーないのでは?ただ、サイバー攻撃等を「偽計」だとすると、今後は拡がるだろう。或いは、「威力」かな。
●注意:非権力的公務を暴行・脅迫で妨害した場合、公務執行妨害罪(95条)についても検討する。
●補足:事実上唯一の論点(業務妨害については)
●「業務」:人が社会生活上の地位に基づき反復継続する事務
●「威力」:人の意思を制圧するに足りる勢力(244条)
●「偽計」:人を欺罔し、又は不知・錯誤を利用すること(233条後段)
●検討:「虚偽の風説を流布」(233条前段)は、どないもしゃーないから?

第三十六章 窃盗及び強盗の罪

(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(不動産侵奪)
第二百三十五条の二 他人の不動産を侵奪した者は、十年以下の懲役に処する。

(他人の占有等に係る自己の財物)
第二百四十二条 自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。

(未遂罪)
第二百四十三条 第二百三十五条から第二百三十六条まで、第二百三十八条から第二百四十条まで及び第二百四十一条第三項の罪の未遂は、罰する。

(親族間の犯罪に関する特例)
第二百四十四条 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

(電気)
第二百四十五条 この章の罪については、電気は、財物とみなす。

奪取罪(保護法益)(AA)

●事例:自己物の取戻し
●問題:「他人の」(235条)の意義
●理由:権利関係が複雑化した現代社会においては、権限ではなく、占有という事実状態自体を保護する必要性が高い。
●結論:奪取罪の保護法益は、事実上の占有自体と解される(占有説・判例)。
●補足:占有=占有の事実+占有の意思。結論だけでも良いので両方書く。
●帰結:「他人が占有」(242条)は、違法占有も含む旨の注意規定。
●補足:所有者の行為については違法性阻却事由の問題へ。
●注意:盗品の奪取は、前提が異なる。●確認:自己物ではないため、242は無関係。
●注意:恐喝罪も同様(●確認:奪取罪?)

「財物」(AB)

●結論:物理的管理可能性説(判例?)
●理由:エネルギー等の無体物も法的に保護する必要がある一方、物質性を備えない情報まで対象とすると処罰範囲が過度に拡大する。
●補足:情報窃盗ぐらい。
●補足:245条は252条に準用なし(規定なし)。252条は電気にも適用あり(物理的管理可能性説からは245条は注意規定。よって当然。)。
●確認:改正?

禁制品(財物性)(AB)

●問題:法禁物も「財物」にあたるか。
●理由:法定の手続によらなければ没収されないという限度で法的保護に値する。
●結論:財物にあたる。

「窃取」(A)

●定義:占有者の意思に反し、目的物を自己又は第三者の占有に移すこと。
●定義:占有は財物に対する事実上の支配。その態様は多種多様。社会通念に従い、他人の支配を排除したか否か(●重要)。
●注意:詐欺罪との区別は、占有が被害者の意思により移転しているか否か。
●認識:不動産侵奪罪(235条の2)の「占有」・「侵奪」も同様。

占有(死者)(A)

●前提:殺害後に奪取意思(手段性を欠くため、強盗罪ではない)
●問題:死者には財物占有の事実も意思もない(●明確に確認)。
●原則:よって、原則として、占有離脱物横領罪(254条)が成立。
●理由:しかし、被害者の生前の占有は、(1)死亡させた者との関係においては、(2)死亡との時間的・場所的近接性がある限り、全体的にみて保護に値する。
●結論:そこで、かかる占有を侵害するため、窃盗罪(235条)成立(判例同旨)。
●補足:気絶していても占有はある。が、強盗にはならない。窃盗になる。意識があれば、強盗になる。死亡なら窃盗。●認識:罪質なのでときに変な結論も?●一応検討
●認識:死者の自宅に行き、でも時間的近接性あれば窃盗で良いだろう。よって、(1)(2)はOR。なお、当該時間的近接性は、比較的長めでもOK。路上との比較。

占有(上下主従関係)(AB)

●理由:下位者には占有の事実あるも、自己占有意思はなく、単なる補助者に過ぎない。
●結論:上位者
●補足:結構頻繁
●補足:下記例外は省略することも多い。
●例外:しかし、①両者間に高度の信頼関係があり、かつ②ある程度の処分権限が委ねられていれば、下位者に占有あり。
●補足:例外の場合、下位者による横領へ。

占有(封印・施錠した委託物)(B)

●判例:①全体:受託者(横領罪)、②内容物:委託者(窃盗罪)
●批判:刑の不均衡(①が5年以下の懲役、②が10年以下の懲役、又は50万円以下の罰金)
●理由:委託者は全体を占有し、受託者は単なる補助者との認識が社会通念に沿う。
●結論:よって、いずれも窃盗罪(235条)。
●参考(反論):通常事後に中身も窃取し窃盗罪(235条)成立。また、業務上の占有者であれば重い業務上横領罪(253条)が成立。よって、判例もありえる。ただ、複雑ではある。
●理由:①は当然、②は受託者は中身を見る裁量なし。
●参考
●私見:後で中身を窃取した場合は先の横領は吸収。

不法領得の意思(A)

●問題:故意以外の書かれざる構成要件要素
●理由:①不可罰的な使用窃盗(236条2項等の規定なし)との区別、②利欲犯的性格のなく刑の軽い毀棄罪(258条以下)との区別
●結論:①権利者を排除し本権者として振る舞い(●使用貸借・賃貸借等によらなければできない)、②物を経済的用法に従い利用・処分する意思
●注意:窃取時の主観の話。実際の使用・時間等とは直接的には無関係。
●注意:②については、専ら毀棄・隠匿目的に限定、が原則。犯人独自の利用意思がある場合でも肯定(例:下着)。
●補足:害意・証拠隠滅目的・刑務所志願などは、判例区々。最後につき、不法領得の意思を否定(最決H.16.11.30)。●方針:全部否定で良い。言い訳排除。
●注意:否定した場合、毀棄罪(器物損壊罪等)の検討・適宜認定が必須。

親族相盗例(244条)(適用範囲)(AB)

●問題:本問では、甲とVとは他人であるが、244条が適用されるか)同条の親族関係の範囲が問題となる。
●趣旨:この点、同条は「法は家庭に入らず」との政策的考慮に基づく一身的処罰阻却事由を定め、第三者の存在は予定されていない。
●結論:よって、親族関係は、行為者と、目的物の所有者及び占有者双方との間に必要と解される。
●判例:最高裁決定(S.C.H20.2.18決①):親族が後見人の場合には適用なし(誠実管理義務に基づく公共的性格の事務。政策的規定の適用余地なし。)
●補足:内縁の妻に適用なし(最高裁H18.8.30)
●補足:趣旨から、親族関係があるとの誤信に関わらず、処罰される。
●比較:盗品等罪の親族間の特例

(強盗)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

(強盗予備)
第二百三十七条 強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。

(事後強盗)
第二百三十八条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

酔強盗)
第二百三十九条 人をこん 酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。

(強盗致死傷)
第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

(強盗・不同意性交等及び同致死)
第二百四十一条 強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が第百七十七条の罪若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は同条の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。
 前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
 第一項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。

(他人の占有等に係る自己の財物)
第二百四十二条 自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。

(未遂罪)
第二百四十三条 第二百三十五条から第二百三十六条まで、第二百三十八条から第二百四十条まで及び第二百四十一条第三項の罪の未遂は、罰する。

(電気)
第二百四十五条 この章の罪については、電気は、財物とみなす。

事後的奪取意思(A)

●問題:(甲はVが身動きできなくなった後に、財布を取ろうと考えたが、かかる場合も強盗罪にあたるか)「強取」の意義が問題となる。
●理由:暴行・脅迫を手段として財物を奪取するため生命・身体への危険が高く、重く処罰される強盗罪の犯罪類型を重視(●原則は暴行・脅迫罪と窃盗罪との併合罪だが)。「用いて」とある。
●結論:よって、「強取」にはあたらない。
●例外:ただし、奪取意思発生後に新たな暴行・脅迫等があり、それが自ら作出した反抗抑圧状態を継続させるものであれば、「強取」にあたると解される。
●注意:非常に重要
●注意:被害者失神、又はその旨の犯人誤信の場合、畏怖なしゆえ、挙動による新暴行ありえず(裁判例)。
●補足:殺害後に財物を奪う目的の場合には、死者の占有的記載を(●重要、らしい)。実際の奪取は無関係。実行行為性の問題であり、即既遂。
●補足:犯行抑圧の考慮要素:行為の危険性、態様、凶器、時間・場所、被害者側の事情等

不法原因給付と強盗利得罪(A)

●問題:(甲は民法上、不法原因給付(民法708条本文)たる本件覚せい罪の返還債務を負わないが、かかる場合も236条2項の罪が成立するか)「財産上不法の利益」(236条2項)の意義が問題となる。
●理由:この点、違法の相対性から、民法上保護されない利益も、法律に基づかなければ没収されない点において刑法上の保護に値する。
●結論:よって、不法原因給付返還債務免脱も同文言に該当すると解される。
●参考:相続を目的に殺害しても不成立。間接的なので。
●私見:民法90条・708条により返還請求できないことから問題となる。

財産上の利益の移転(236条2項)(A)

●問題:(本問では…の点で利益移転が不明確であるが、)かかる場合も甲の行為は利益獲得に向けられた暴行・脅迫(「用いて」)といえるか、実行行為性が問題となる。●理解:要するに、単に暴行・強迫したのと客観的にどう区別するの?、という話
●理由:この点、236条2項の罪も被害者の反抗を抑圧し利益を得るものであり、処分行為は予定されていない。
●結論:よって、その実行行為は、処分行為に向けられたものである必要はない。
●注意:実行行為性の問題と、既遂・未遂の区別の問題とを峻別。

●問題:もっとも、人権保障上、利益移転・は明確にする必要がある。●理解:Case by Case
●結論:そこで、①1項強盗同様の移転の具体性・現実性が必要であり、
・債務免脱の場合、債務の追及が事実上不可能又は著しく困難になるような行為であること
・預金債権の取得の場合、あたかも正当な預貯金債権者のごとく支配したこと
・キャッカ・暗証番号事件の場合、行為者が利益を得る反面として、被害者が財産的な不利益を被ったこと
(暗証番号を併せ持つことにより、事実上預金を引き出せるようになり支配する利益。被害者も引き出せるので、利益が直接移転している訳ではないが、その必要はない。キャッカ+暗証番号同時取得のケース(1項強盗)と比較すれば、実質論としても当然。)
を要する。
●裁判例:東京高判平成21年11月16日(キャッカ・暗証番号事件)キャッカ自体はほぼ窃取した後、追加で暗証番号を聞き出した事例
●補足:上記裁判例は2項強盗成立させた。しかし、銀行からの引き出しは不可罰的事後行為or占有離脱物横領罪では?(本件に限らず名義人から委託されない預金引き出しにつき判例は常に詐欺or窃盗成立させるが)。結局全体を1項強盗で良いのでは?との批判あり。
●認識:利益・時期は峻別できない(利益概念に時期が織り込まれているイメージ)。

事後強盗(予備)(237条)(B)

●趣旨(「強盗として論ずる」(238条)):刑事学的にしばしば見られる類型であるため、全体的観察の下、全ての点で強盗(236条)と同様に扱う。
●展開:とすれば、予備罪の「目的」(237条)には、事後強盗目的も含むと解される。
●展開:実行行為は条件付きだが、故意は確定的といえるため、主観面も充足する。

事後強盗罪(途中加巧)(A)

●前提:暴行・脅迫と財物奪取の順序逆転。手段性の替わりに、「窃盗の機会」という不文要件あり。なお、事後強盗罪でも犯行抑圧する暴行・脅迫が必要な点、変わりなし。
(窃盗の機会については、①現場に留まる場合、②現場から逃走し追跡されている場合、③現場に戻る場合、等がある。行為者の主観面も考慮しつつ、Case by Case判断でOK)
●問題:法的性質
●理由:「窃盗」は、238条の罪の主体と解するのが文言上自然である。(※1)
●結論:そこで、同罪は、「窃盗」犯による身分犯であり、その実行行為は、暴行(・脅迫)と解される。(※2)
●理由:もっとも、不真正身分犯であるとすると、同罪は暴行(・脅迫)罪の加重類型となるが、それは財産犯としての本質に反する。
●結論:そこで、同罪は、窃盗犯のみが犯しうる真正身分犯と解される。
(※1)ロングなら、「238条の罪の実行行為が窃盗だとすると、その着手後に同条所定の目的を持つも暴行(・脅迫)しなかった場合も同罪の未遂になり、不自然。」も。
(※2)帰結として、窃盗と暴行(・脅迫)との結合犯ではなく、途中加巧者は承継的共犯ではない。

●問題:65条関連(2点セット)
●結論:よって、途中加巧者も事後強盗罪の共同正犯となる。

●補足:上記3論点の他、後行者に故意(①先行者が窃盗であり、②目的を有していることにつき)が必要。なければ錯誤(部分的犯罪共同説)。
●補足:既遂・未遂は窃盗について。強盗殺人とは異なる。なお、強盗傷人に未遂はない。
●補足:既遂・未遂は、窃盗の既遂・未遂による。強盗(236条)に準ずるものとして同様に。●「詐欺」主体への準用等はないはず。類するのは強盗利得罪ぐらい。

故意ある場合(240条)(AA)

●問題:(本問において、甲はVを意図的に殺害している。)そこで、かかる場合も「死亡させた」(240条後段)と言えるか、その意義が問題となる。
●理由:この点、同条は、①刑事学的に多い類型を構成要件化し、その法定刑は重い。また、②結果的加重犯に通例の「よって」という文言もない。●注意:伸縮自在に
●結論:よって、同文言には、故意ある場合も含むと解される。
●補足:強盗殺人罪(240条後段)の法定刑の重さに照らし、既遂・未遂の区別は殺人についてみるものとする。なお、傷害については未遂はない。
●確認:改正?

強盗の機会(240条)(暴行・脅迫の手段性)(A)

●問題:(本問において、Vは、甲が逃走する際に倒した鉄骨の下敷きとなり死亡しているが、かかる場合も240条の罪となるか)「死亡(負傷)」の原因が問題となる。
●趣旨:この点、同条は、強盗による人の死傷が多い刑事学的事実に基づき、生命・身体保護のために構成要件化されたものである。
●結論:とすれば、死傷は、暴行・脅迫から生じたものに限らず、強盗の機会に生じれば足りると解される。●補足:以下の歯止は学説。ケースに応じて。
●歯止:もっとも、強盗の機会に生じた死傷につき、全てその構成要件該当性を肯定すると、法定刑の重さに照らし、あまりに自由保障機能を害する。
●結論:そこで、死傷は、強盗行為との密接関連行為(●重要)によるものに限定されると解される。
●補足:窃盗の機会:刑事学的に顕著な類型として、強盗罪と同様に扱う趣旨。そこで、窃盗の機会に。時間的場所的近接性から判断。例えば、窃盗犯人に対する追及が継続していれば、事後強盗罪(238条)が問題となる(最判H16.12.10)。
●注意:手段たる暴行・強迫から逃げ出し転倒、は、上記の話ではない(単なる因果関係論)。追いかけた場合、上記の話(その後(即ち実行行為後)に因果関係論)。
●補足:不同意性交等致死傷、不同意?わいせつ致死傷、事後強盗(窃盗の機会)等についても、同様に実行行為・因果関係を峻別すべし。

(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺(利得)罪(246条)(AB)

●要件:
「欺」く行為により、●理解:最重要
処分行為の判断の基礎となる経済上重要な事項について(最判平成22年7月29日)。
処分行為に向けられたものである必要がある。処分行為(③)については、ここで検討する。向けられていなければ未遂すら不成立。
(もっとも、当該行為の犯罪計画全体における位置付け、重要性、危険性等を含む事実関係に照らし、間接的でも良い(最判平成30年3月22日①)。)
・黙示の意思表示もありえる。それが難しくても、信義則上の告知義務を認定し、その不作為について欺罔行為肯定する場合あり(例:誤振込払戻請求、釣銭詐欺)。
●判例(最判平成26年3月28日):暴力団であることについて、(会員制・ビジターへの開放の場合)積極的に偽るとか、(会員制・ビジター利用制限の場合でも)暴力団であると認識されていない状況を積極的に利用した等の事情がなければ、否定。
●手順:①個別的・具体的な取引実態・運用・慣習等の事情を適示、②当該事実関係においては、…は「判断の基礎となる経済上重要な事項」であったと認定し、③…を偽る行為は「欺く」と結論付ける。
●補足:全体財産に対する罪ではない詐欺罪について、相当対価あれば損害ないのでは?、という問題意識から生まれた論法として、「欺く」の解釈論。よって、それにより代替済みの損害論を詳しく論じる必要はない。端的に、個別の客体(物・サービス等)の移転を認定しておけば足りる。
●注意:上記は、相当対価を取得しているゆえの問題。振り込め詐欺等においては、一方的に財産剥奪され対価性なく、例えば取引慣習等はなく。そもそも実質論を問題とし論じる必要性がない。
●補足:債務者が「既に払った」と事実上支払いを免れた場合、債権者が債権の存在等につき誤信しており、明確な債務免除の瑕疵ある処分意思を促すものではなく、処分行為に向けられた欺罔行為とは認められない。認められるとすれば、免除の意思表示しなくとも、通常督促・回収・担保要求等するだろう、と言える特段の状況があれば、ぐらい。例外。

②相手方を錯誤に陥れ、

③その錯誤に基づく処分行為により、
・処分行為は処分意思(※)を伴う。その前提として、占有・財産上の利益移転を基礎付ける外形的事実を認識している必要がある。しかし、個々の財物まで認識している必要はない。占有移転する客体を認識しない場合が詐欺の典型例であり、その除外は妥当ではない。判断基準:被欺罔者の意思に基づき、財物の占有が欺罔者に直接的・終局的に移転したか否か。●検討:その意味では、④も検討しているのでは。
●判例:訴訟詐欺は不成立(処分権限などがない)
●補足(※):占有を移転させる意思があったか否か(あれば詐欺罪、なければ窃盗罪)。取引場所の状況(ホテル・マンション・一軒家等)により、影響を受ける。
●判例:最判昭和61年11月18日

④財物が交付され(1項)、又は財産上不法の利益を取得し(2項)、
●定義:損害(判例):形式的な(実質的には価格相当の商品の給付であっても該当)・個別財産の損害
●定義:2項は積極財産の増加、消極財産の増加、両方。
●補足:「財産上不法の利益」は明確でなければならない(強盗利得罪でより問題となるが。)。
●判例:「社会通念上、別個の支払に当たるといい得る程度の期間支払時期を早めたものであることを要する」
 (これを見ると(実質的個別財産説とも読める。判例はその傾向にあるとの評価も有力。●認識:学説も分かれる。事例ごとに。)
●判例(最判平成22年7月29日①):別人を登場させることの危険性、及びカナダ政府からの義務付け等から、搭乗券の交付請求者自身が搭乗することは、交付の判断の基礎となる重要な事項。

⑤それらに一連の客観的な因果的連鎖があると共に、

⑥故意で包摂されていること

●判例:支払時期を早めた場合:詐欺手段を用いなかった場合に得られたであろう支払とは、社会通念上別個の支払といいうる程度の早期化を要する。
●補足:この規範ではなく、普通に処理してもOK。

●注意:詐欺罪でも不法領得の意思は問題となる。

銀行預金(A)

●事例:詐欺による振込●認識:恐喝も同様
●問題:1項か、2項か
●理由:行為者が自由に引き出せる以上、現金と同様。また、被害者による取戻しは困難。
●結論:振り込んだ時点で被害者に対する1項詐欺の既遂
●裁判例:大阪高判平成16年12月21日
●参考:ATMの場合を含め、預金債権と言う財産上の利得を得ており、詐欺利得罪(246条2項)との説もあるが。

●前提:金銭の占有は銀行にある(占有離脱物横領とならず)。振込依頼人と受取人との間に振込原因たる法律関係がなくとも、受取人は振込金額相当額の預金債権を取得する(最判平成8年4月26日)。
●事例:銀行からの預金引き出し(詐欺後)●認識:恐喝も同様
●理由:形式上の払戻受領権限はあるが、正当な払戻受領権限がない。銀行にとり、紛争に巻き込まれないよう、重要な事柄。銀行に対し、誤振込みがあった旨を伝える信義則上の義務あり。窓口で払戻を受ける行為(告知の不作為)は、欺罔行為にあたる。銀行は払戻しをしても免責されるが、組戻しせずに現金を払戻しした点につき、錯誤により、実質的な損害もある。
●結論:銀行に対する1項詐欺(AB)。よって、窓口での払い戻しを受ける行為は権利濫用(民法1条3項)に該当する。
●補足:ATMの場合は窃盗
●私見:預金取引約款により口座譲渡が禁止され、その違反が取引停止事由となる場合、そもそも払戻受領権限がない、とも評価可能。

●事例:預金通帳(他人名義)・譲渡目的(本人名義)・キャッシュカード
●あ:普通に要件にあてはめれば良い。
●私見:信用確認・犯罪利用等防止等のため譲渡が禁止され、銀行にとり、名義人本人が譲渡せず使用することは交付するか否かの判断の基礎となる重要な事項、等と。
●補足:「財物」である点も軽く触れる。「所有権の対象であり、預金の預入れ・払戻しができるなど財産的価値もある」と。●認識:本来不要だが、一応。
●判例:最決平成14年10月21日、最決平成19年7月17日
●補足:預金自体について、別途別途詐欺罪・窃盗罪等が問題となる。
●注意:罪数は、併合罪(又は包括一罪)。
●補足:携帯電話なども同様。

不法原因給付と詐欺(A)

●問題:(甲は民法上、不法原因給付(民法708条本文)たる本件覚せい罪の返還請求権を有せず、所有権も失うが、かかる場合も246条1項・2項の罪が成立するか)「財物」(同条1項)・「財産上の利益」(同条2項)の意義が問題となる。
●理由:この点、違法の相対性から、民法上保護されない財産・利益も、法律に基づかなければ没収・消滅とならない点において刑法上の保護に値する。
●結論:よって、不法原因給付物・不法原因旧物返還債務免脱も同文言に該当すると解される。
●参考:相続を目的に殺害しても不成立。間接的なので。
●私見:民法90条・708条により返還請求できないことから問題となる。708条ただし書の場合、当然認められるはず。
●補足:不法原因給付と詐欺(偽もうされなければ、財物を交付しなかったであろう関係で足りる。財物交付後に返還請求できないこととは別の話、とも考えられる。)

無銭飲食(犯意先行)(B)

●問題:欺く行為(①)があるか。
●理由:注文は代金支払いを前提。代金支払意思なき注文行為(●行為を明確に)は、相手方を錯誤に陥れる積極的行為。
●結論:よって、詐く行為に該当する。
●展開:その他の要件も充足するため、詐欺罪(246条)が成立する。
●補足:代金支払いを免れるための更なる詐欺は不成立。
●補足:代金支払を免れるため暴行・脅迫をした場合、2項強盗罪が成立し、そちらに吸収されると解される。

無銭飲食(飲食先行)(B)

●問題:債務免除意思が不明確(重要)なので、処分行為(③)があるか(判例:食後に犯意発生し、「知人を見送る」と言い逃走)。
●理由:明確な債務免除の意思表示ない限り、処分意思を欠き、処分行為が認められない。
●結論:よって、処分行為に向けられた欺く行為がないと解される。
●補足:上記判例で十分。以下学説
・原則として、処分行為には、処分意思が必要。
・しかし、明確な意思まで要求すると、利益窃盗は不可罰であることから、処罰範囲が過度に狭まる。
・そこで、処分者において、(1)財産上の利益移転が事実上生じうる状況にあるとの認識があり、かつ(2)錯誤に陥っていなければ、その防止措置を取ったであろう場合には、広義の処分意思があると解される。
●補足:それが一時的に猶予するものでも、また黙示でも足りると解される。
●補足:単なる逃走は利益窃盗として不可罰

キセル乗車(債務免除説)(B)

●問題:乗車券は券面表示区間につき有効
●理由:下車駅の改札口で、①途中駅から乗車したように装い、②改札員が錯誤に陥り、④途中区間の運賃支払義務を免れる行為。
(役務提供説(乗車駅基準説):途中までの乗車券を無効と評価する点で不合理。行先告知義務なく、不作為による欺く行為もなし。)
●結論:そこで、詐欺利得罪(246条1項)が成立しうる。下車駅基準説(債務免除説)

●問題:改札員は債務の存在を知らず、処分意思・処分行為がない(そのため、それに向けられた欺く行為もない)のではないか。
●理由:改札員は相当数の不正の存在を意識しつつ、その摘発目的で改札。不正者を出場させれば、事実上債務免除となることは認識しているが、運賃を請求しないという不作為の処分行為をしていると言える。
●結論:③処分意思・処分行為あり。

●補足:途中で犯意が生じても不可罰(批判あり)。

クレジットカード不正使用(BB)

●問題:自己名義
●理由:加盟店は、顧客に支払意思・能力がないことを認識すれば(※)、カード会社に対する信義則上、取引を拒絶するはず。
●結論:よって、代金支払意思・能力あると装うことは、欺く行為と解される。
●展開:そして、錯誤に基づく処分行為も認められる。
●補足:名義人が他人使用を認めていた場合、欺罔行為がなく、又は利用者が承諾ありと誤信していた場合、故意がない。●認識:成立もありでは?本人でないことが判れば拒絶するはず。過失あるとされた場合には立替払を受けられない危険あり。ただ、何かするとしても、民事でOKかな。

●問題:立替払いを受けられる。
●理由:本罪は個別財産に対する罪。物の占有を失うことにより、使用・収益・処分をする利益を失う。
●結論:損害も認められる。

●補足(※):他人名義のカード利用(他人による許諾は無影響)も同様(I)。「故に名義が重要」とすれば良い(私見)。ただし、信義則ではなく、契約に基づく拒否義務(私見)。

●補足:加盟店が被欺罔者・処分行為者(両者は一致。錯誤要件から。)
●補足:被害者・被欺罔者は異なりうる。被害者の意思に基づく処分と言うためには、被欺罔者に処分権限が必要。なければ、窃盗の間接正犯。訴訟詐欺(最高裁昭和45年3月26日)も成立しうる。裁判所には処分権限がある。自由心証ゆえ被欺罔者。そして処分行為者。

●補足:横領・背任、いずれも必ず論じることにはなろうが、シンプルに。(キャッカと異なり)クレカ占有で預金に法律上の占有は認めがたい(横領罪☓)。貸与者の「事務」?(背任罪☓)。実務上はまだ立証容易な対加盟店詐欺で立件がほとんど。被害届は名義人から出るものの立証困難。●認識:加盟店に対する詐欺がメインディッシュ

(背任)
第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

背任罪(247条)(AA)

●特徴:
①身分犯
②目的犯(主観。最後に検討)
・本人図利目的が混在する場合、主従関係で判断(判例)。
・加害目的なら、故意との区別が問題となる。→確定的認識が必要(判例)。
③背信行為
④損害の発生
●補足:背任罪の共犯:ケース毎の判断。●確認:身分犯の問題にはならない(?)。
●参考:(なぜか?)「詐欺及び恐喝の罪」の章に規定されているが、委託物横領と似ている。

背信行為(AB)

●定義:「任務に背く行為」:財産的損害発生の危険性ある信義誠実義務違反行為(判例・通説(背信説))
●根拠:委託信任関係に背いて本人に財産上の損害を与えることを防ぐという背任罪の処罰根拠から。
●批判:処罰範囲が不明確となる。
●補足:上記定義で十分。代理権の濫用に限定するのは不合理。
●補足:横領罪の区別が問題となる場合には、権限濫用説で。

「財産上の損害」(B)

●問題:法的損害か、経済的損害か(ポイント(2))
●理由:実社会においては、額面は同じであっても、債権と現実の価値は全く異なるため、
●結論:経済的見地から決すべきと解される(判例)。
●補足:通常は上記のみ。
●抵当権の場合(重要):順位に重要な経済的意味。後順位抵当権の設定自体が損害。
●補足:後日債権回収できても情状。

●結論:全体財産に対する損害が必要(●背任罪ぐらい)(ポイント(1))
●理由:背任罪は、「本人に財産上の損害」を明文で要求しているから。

図利・加害目的(AB)

●問題:「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」図利・加害目的には確定的認識を要するか?(加害目的は、図利目的と異なり、未必的認識でも足りるとなりかねないが)
●理由:正当なリスクを取れないこととなりかねない。故意とは別途の要件とされているので。
●結論:肯定
●検討:最高裁決定平成10年11月25日では、図利目的のみが問題となった(ゆえ結論逆に見える。)。しかし、最高裁決定平成17年10月7日では、加害目的認めた。それにより、否定説が判例になった、と考えようか。
●参考:積極的に本人の利益を図った場合には否定(他の目的と混在していても)

抵当権の登記協力義務(AB)

●問題:「他人の」(247条)事務か。
●反対説:確かに、自己の財産処理を完成させる点、自己の事務とも思われる。
●理由:しかし、主として(重要)相手方の財産権保全のためである。
●結論:よって、「他人の」にあたる。
●確認:二重抵当

二重抵当(AB)

●問題:「他人のため」の事務処理か?(第一抵当権者への登記設定)
●理由:設定者の協力は、抵当権保全行為の一部をなす(最高裁判例昭和31年12月7日)
●結論:肯定

●問題:任務違背があるか?
●理由:抵当権保全義務違反
●結論:肯定
●参考:一件書類を引渡し済みの場合であっても、積極的妨害をしない義務を負担している。

●結論:損害もある。
●理由:第一順位と第二順位以下では大きな違い。


●問題:詐欺罪の成立・不成立
●理由:第一順位になるので損害なし。よって、先順位抵当権者の存在につき告知義務なし。
●結論:不成立(二重譲渡と同様の論理で、特段の事情があれば成立とも)
●確認:第二順位なら、売買と同様の論理で詐欺になりうる?(告知義務もありえる?)。そもそも背任が問題にならない。

(恐喝) 第二百四十九条 
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

権利行使と恐喝(A)

●前提:少なくとも外見上権利行使と言いうること。

●問題:恐喝(249条1項)か、脅迫(222)か。債務の消滅により財産上の損害なしか。
●理由:恐怖に陥らなければ、財物交付せず。財物に対する使用・収益・処分という事実的機能は害される。
●結論:よって、個別財産上の損害は認められ、この損害(債権額全額)に向けての恐喝行為ありといえる。

●問題:権利行使として違法性阻却(35)か。
●論点:違法性の本質(結論のみ)
●結論:よって、社会的に相当な行為であれば違法性阻却される。
●展開:具体的には、①「権利の範囲内」で、かつ②「その方法が社会通念上認容される程度」なら違法性阻却。

●展開:客観的に権利の存在が判断困難であっても、(ア)行為者が権利の存在を確信し、かつ(イ)そう信じるにつき相当の理由があれば、要件①は充足(ユーザーユニオン事件高裁裁判例)。
●補足:あくまで違法性阻却の話として。故意(錯誤論)ではない。

●補足:詐欺も同様。
●定義:反抗抑圧に至らない程度の暴行・脅迫により財物を交付せしめること。●確認:相手方を畏怖させるに足りる害悪の告知?

●問題:自己物の取戻しを恐喝的手段で
●展開:保護法益(占有説)
●展開:自救行為を検討

●補足:適法行為を告げても恐喝となりうる。財産侵害されうるから(●重要)。

第三十八章 横領の罪

(横領)
第二百五十二条 自己の占有する他人の物横領した者は、五年以下の懲役に処する。
2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

(業務上横領)
第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

(遺失物等横領)
第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

(準用)
第二百五十五条 第二百四十四条の規定は、この章の罪について準用する。

横領罪(占有)(A)

●注意:業務上、ではないかい?
●注意:誰に対する横領なのか、客体の特定、を忘れない。
●前提:預金に対する占有は、犯罪成立レベルでの判断においては、事実上の支配OR法律上の支配であり、両方同時成立はない(例:同一客体に対する横領罪・窃盗罪同時成立なし。)。本人との間で、原因関係(委託等)があれば、法律上の支配であり、横領罪、なければ、事実上の支配であり、窃盗罪等の奪取罪。
●保護法益:
・本権(所有権等)である。占有ではない。(争いなし)
・(委託物)横領罪の本質は、委託信任関係(事実上のもので可)を害する点(254条(窃盗に近い)との区別から)
・なお、252条2項については、物の保管上の安全等と言われる。
●趣旨:(委託物)横領罪の本質は、委託信任関係を害する点(254条との区別から)
●展開:かかる害を及ぼしうる濫用のおそれのある支配力が重要
●結論:よって、「占有」(252条1項)には、事実上の支配のみならず、法律上の支配(例:仮登記、預金等の名義)も含む。
●参考:奪取罪における占有は事実上の支配力(排他性)。法律上の支配は、処分可能性に重点あり。
●参考:法定刑が軽いのは、奪取がないこと、及び誘惑的であること等から。なお、二項横領は存在しない。

●補足:横領には未遂規定なし(着手=既遂)。訴訟で争えば即既遂。
●補足:登記名義人も同様。

●「業務」(253条):社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われる事務のうち、委託を受けて他人の物を占有・保管する事務
●趣旨:252条より重く処罰される趣旨。その性質上、法益侵害による社会的影響が多岐にわたり、頻発するおそれも大きいため。
●補足:業務上横領罪と窃盗罪とは、懲役刑については同一だが、窃盗については罰金刑が選択刑となっている。よって、窃盗の方が軽い、として重なり合い。

「占有」(銀行預金)(A)

●基本:正当な払戻受領権限があれば、現金(預金債権ではない)の占有と同視され、委託物横領。
●参考:預金債権のまま処分した場合、背任罪に留まるのは不当、との価値判断がある模様。●検討

「他人の物」(金銭・売却代金)(AA)

●問題:「他人の物」か?所有と占有が一致。●認識:不法でなくとも、という話。
●理由:刑法(社会秩序維持等の観点から、外形的な権利保護を特に重視する)と民法とは目的が異なるため、刑法独自の違法性を観念できる(法秩序の統一性を害さず)。
●結論:そこで、民法上の所有権の所在に関わりなく、「他人の物」にあたると解される。
●展開:使途を定めて委託された金銭を費消する行為は、委託の趣旨が一時流用を許すものでない限り、原則として横領罪(判例・通説)。

横領罪(不法領得の意思)(A)

●理由:横領罪は領得罪なので、(●十分)
●結論:「横領」とは、不法領得の意思を実現する一切の行為
●判例:大判大正6年7月14日
●補足:上記は領得行為説(通説でもある。):財産犯的側面を重視(⇔反対説(委託信任関係破壊を重視する説))●検討:「…とは、委託信任関係に違背し、自己の管理支配する財物を領得する行為」の方が書き易い(し、下記と整合する)か?

●理由:横領罪の本質は、委託信任関係の破壊にあり、毀棄・隠匿目的であっても可能なため、
●結論:横領罪における不法領得の意思とは、委託の任務に背いて、所有者でなければできないような処分をする意思
●判例:最判昭和24年3月8日
●帰結:専ら本人のためなら否定。自己の利益取得を意図していたかは無関係。一時流用(確実な填補の意思・能力あり)の場合、不法領得の意思(or可罰的違法性)が認められないときもある。
●参考:抵当権の不実の仮登記行為は横領(最決平成21年3月26日)
●認識:委託信任関係破壊も加味した論理・結論ではある。

●補足:故意の内容の話だが、実際上は「横領」の解釈論として。
●補足:成立時点(原則契約。不動産は登記)通説判例

横領(不法原因寄託物)(AB)

●問題:無権限者との間の委託信任関係は保護されるか?
●理由:刑法(社会秩序維持等の観点から、外形的な権利保護を特に重視する)と民法とは目的が異なるため、その解釈は異なりうる(法秩序の統一性を害さず)。外形的委託信任関係も刑法的には保護に値する。
●結論:保護される。
●判例(最判令和4年4月18日②):農地法所定の許可を得ておらず所有者でない買主からの委託も保護される。農地法上の違法となる売買であっても保護される。
●比較:不法原因寄託物と詐欺・強盗も同様。不法原因給付と盗品等罪も同様(本犯助長的性格、という刑法独自の観点を加味すれば尚更)。
●参考:不法原因給付物(民法708条本文参照)については、外見的な権利保護に値する場合でない限り、むしろ不成立(例:妾契約等)。
●参考:窃盗罪での占有説との整合性
●検討:法禁物同様?
●検討:売却代金の着服は、「他人の」という点、及び本問題点の2点の問題。だが、本問題のみで処理するのが通常?

二重譲渡(譲渡人の罪責)(A)

●前提(第一譲受人との関係):他人の物につき、法律上の支配(登記)をしており、「占有」はある。刑法上の人権保障機能を重視し(謙抑性)、売買契約(民法上は所有権移転)に止まらず、代金の大部分が支払済み(●でなければ通説は否定)等の事情があれば、「他人の物」とも言える。第一売買契約上保管義務を負う(委託信任関係ある)物に関する法律行為(売買)及び登記具備を領得行為として、横領罪(252条1項)が成立。
●問題:第二譲受人(善意)との関係において、詐欺罪(246条1項)にあたるか。
●理由:悪意であっても、登記を経て所有権を取得(民法177条)しうるので、財産上の損害はなく。●第一売買につき告知義務も無い。
●結論(原則):不成立
●例外:しかし、事前に知っていれば売買をしなかったであろう特段の事情があれば、代金支払自体に個別財産上の損害もあり成立しうる。
●結論:例外的に成立。
●問題:表現代理成立の場合でも?(●注意)財産の交付自体が損害。でOK(本来は損害発生可能性無く、実行行為性が無いが)

二重譲渡(第二譲受人の罪責)(A)

●問題:共犯(60条1項又は61条1項、及び252条1項)か。
●原則:悪意があっても、登記を経て所有権を取得(民法177条)しうるので、正当な権利者として不成立。
●例外:しかし、背信的悪意者の場合、正当な取引範囲を逸脱し、可罰的。
●結論:そこで、例外的に横領罪の共犯が成立すると解される。
●補足:「占有」がないので、身分犯(65条)へ。
●補足:教唆犯(61条1項)の場合には、盗品等有償譲受罪(256条2項)も成立。
●検討:ここでは民法との整合性あるが。

横領(横領後)(AB)

●前提:横領罪の成否、及び罪数処理
●問題:他人の不動産に関する受託者(占有者・登記名義人)が、不法に抵当権を設定した後、売却。
●趣旨:横領罪の本質は、委託信任関係の破壊
●理由:この点、先行する抵当権設定行為では、所有権者に変更なく、直ちに全面的に破壊はない。他方、後行の売却行為は、当初の抵当権設定を超える法益侵害であり、不可罰的事後行為ではない。●理解:「共罰的事後行為」。先行行為で包括的評価をされ、共に処罰される、という考え方。仮に先行行為の処罰なし(時効等)なら、独自処罰される(実務上メリット)。
結論:先行する抵当権設定も横領。後行の売却も横領。包括1罪となる。●認識:共罰的事後行為からは自然な帰結。
●判例:大判明治43年10月25日(先行行為・後行行為両方起訴。先行行為のみ処罰。)・最高裁判例平成15年4月23日(後行行為のみ起訴)●理解:両方起訴されていれば、大判同様だった可能性あり。
●注意:最新判例により、横領罪の要件認定を丁寧に、の方がよっぽど重要。ここでは起訴うんぬんは本来刑訴関係なし。

横領と背任の区別(A)

●前提:背任は抵当権侵害ぐらいしかない。実社会上特別背任(会社法960条以下)ぐらい。横領のスキマを埋めるべく生まれた罪ゆえ。横領が中心。●認識:立証困難もあろうか。
●注意:一言で良い。だらけない。
●理由:(業務上)横領罪(252条1項、253条)の保護法益は、個別財産の所有権に係る委託信任関係、(特別)背任(247条、会社法960条)罪の保護法益は、全体財産に係る委託信任関係であり、両者は法条競合の関係にある。
●結論:よって、まず重い横領罪(単純横領ですら下限は罰金ではない)を検討し、次に背任罪の検討をすべきと解される。
●参考:近時多数(これでOK)

●問題:「物」の場合、他人の事務の処理に関する信任関係違背の点で共通。一見重複。
●理由:権限内の行為は、濫用の場合も一応その効果が本人に及びうる以上、不法領得の意思発現行為としてより法定刑が重い横領にはならない。
●原則:そこで、行為態様により区別し、権限濫用が背任、逸脱が横領と解される。
●例外:もっとも、委託の趣旨から絶対に許されない行為は、実質的には権限逸脱として横領となると解される。
●参考:従来的
●検討:民法107条

●補足:背任罪は、ある程度の権限ある者についてのみ成立。機械的事務処理者には不成立。
●補足:賃借人が賃借物を売却した場合:横領のみ成立(事務処理者ではない)。
●補足:判例(本人の名義かつ計算の場合のみ背任罪成立)名義計算区別説。●方針:無視でOK。形式論。考慮要素にはなりうるが。

第三十九章 盗品等に関する罪

(盗品譲受け等)
第二百五十六条 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三年以下の懲役に処する。
2 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金に処する。

(親族等の間の犯罪に関する特例)
第二百五十七条 配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する。
2 前項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

盗品等罪(追求権説)(AB)

●問題:文言上不明確(●検討)
●趣旨:盗品等に対する被害者の追及を困難にする行為につき、財産権侵害として処罰
●結論:とすれば、本罪の本質は、被害者である本権者の私法上の追求権侵害にあると解される。
●判例:追求権説(大判大正11年7月12日)。ただし、有償の場合には特に、本犯助長(事後従犯的)・援助的(犯人庇護的)性格にも言及する最高裁判例あり。例:被害者に買い取らせる。被害者宅へ運搬。等
●補足:即時取得(民法192条)・付合(民法243条・246条)等を経た場合、盗品性は消滅。●認識:出ない。それまでの問題が出る。
●確認:不法原因給付物:追求権なし(刑法は、民法と比べ、強く外見的な権利関係を保護する等)●逆?

257条1項の適用範囲(AB)

●問題:親族関係は誰と誰との間に必要か、本罪の法的性質と関連し問題となる。
●趣旨:(244条1項とは異なり)(1)被害者ではなく、本犯者と盗品等犯人との間に存するのが通例であることを前提に、(2)情実による犯人庇護や利益分配回避につき期待可能性がないことを考慮した一身的処罰阻却事由。
●結論:本犯者と盗品等犯人との間に必要(判例同旨)。

●補足:105条と同趣旨

第九章 放火及び失火の罪

(現住建造物等放火)
第百八条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

(非現住建造物等放火)
第百九条 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。 2 前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

(建造物等以外放火)
第百十条 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

(延焼)
第百十一条 第百九条第二項又は前条第二項の罪を犯し、よって第百八条又は第百九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
2 前条第二項の罪を犯し、よって同条第一項に規定する物に延焼させたときは、三年以下の懲役に処する。

(未遂罪)
第百十二条 第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する。

(予備)
第百十三条 第百八条又は第百九条第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

(消火妨害)
第百十四条 火災の際に、消火用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、消火を妨害した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

(差押え等に係る自己の物に関する特例)
第百十五条 第百九条第一項及び第百十条第一項に規定する物が自己の所有に係るものであっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、配偶者居住権が設定され、又は保険に付したものである場合において、これを焼損したときは、他人の物を焼損した者の例による。

(失火)
第百十六条 失火により、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を焼損した者は、五十万円以下の罰金に処する。
2 失火により、第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。

(激発物破裂)
第百十七条 火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた者も、同様とする。
2 前項の行為が過失によるときは、失火の例による。

(業務上失火等)
第百十七条の二 第百十六条又は前条第一項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、三年以下の禁錮又は百五十万円以下の罰金に処する。

(ガス漏出等及び同致死傷)
第百十八条 ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

「焼損」(108・109・110)の意義(A)

●確認:「放火」とは、●●●
●定義:「現住」:人の起臥侵食に使用されている。●補足:一時不在でも特段の事情ない限り現住性失われず。●補足:別要件として「現在」もある。
●定義:「建造物」:土地に定着し人が出入り等する工作物(●私見:あまり)●補足:毀損しなければ取り外すことができない状態であれば、建造物の一部(最判昭和25年12月14日)。

●問題:「焼損」の意義(既遂時期)が不明確
●趣旨:放火罪の公共危険犯的側面。●検討:木造多いので早い、も書くか。
●展開:目的物が独立して燃焼しうる状態になれば、制御困難性・延焼の危険等の点から、既に公共の危険発生。
●結論:よって、火が媒介物から離れ、目的物が独立に燃焼しうる状態に達した時に「焼損」即ち既遂となると解される。

●補足:保護法益は、不特定又は多数人の生命・身体・財産の安全。
●補足:難燃性・耐火性建造物の場合、延焼の危険が発生する程度に高温で酸化した状態を以って「焼損」と解される。保護法益から。
●補足:未遂・予備処罰は108条・109条1項のみ

客体の一個性(A)(現住建造物等放火(108条)を意図していない場合)

●問題:非現住建造物に放火しているが、現住建造物放火となるか、客体の一個性が問題となる。
●趣旨:108条の罪が重く処罰される趣旨は、(1)現住部分に存在する、(2)人の生命・身体に対する抽象的危険性にある。
●展開:そこで、客体の一個性の判断においては、(1)現住部分と一体として使用されているか(機能的一体性)、及び(2)現住部分への類型的延焼可能性(物理的一体性)等を考慮し、
●結論:構成要件該当性の問題として、社会通念上一個の建物といえるかにより判断すべきである。
●補足:一個性否定の場合、109・110を検討。不成立の場合、建造物損壊(260条)・器物損壊(261条)を検討。
●判例:最高裁平成元年7月14日③
●補足:そもそも一体の建造物の一部についても、同様の発想・基準でOK。問題としては、そもそも現住部分への延焼の危険がないことから。●認識:スタートが、広がるで、と広がらんで、の違いだけ。
●注意:行為者が延焼すると考えていても、客観的延焼可能性がない場合、非現住建造物放火の不能犯となる。●認識:行為者の、事実と一致する認識、しか取り込まないので。

公共の危険発生の認識(A):110条1項(・109条2項)

●定義(重要):(108条・109条の客体に限らず)不特定又は多数人の生命・身体・財産に対する危害を感じさせうる状態(最決平成15年4月14日③)。●注意:108条・109条1項の物等に限定されず。車等も。
●前提:客観的危険の発生を認定。
●趣旨:放火罪の公共危険犯的性格
●理由:①重大な法益、②「よって」との文言から結果的加重犯
●結論:同罪の故意としては、公共の危険発生の認識は不要と解される。
●判例:不要(最判昭和60年3月28日)110条1項について。●理解:109条2項については、最高裁判例なし。必要説も有力。
●認識:109条2項については、109条の客体については通常公共の危険が生じることから、客観的処罰条件、と考えておく。●認識:判例はそこまで言っていないが結論は同じ。
●批判:基本犯が器物損壊罪(261条)(公共危険罪ではない。法定刑が軽い。)となるのは不合理。自己物を燃やしても本来不可罰だが処罰するということは。なお、延焼罪(111条)・失火罪(116条)においても同様の問題となる。●検討:それらの基本犯は261ではないので、ありうる説か。
●補足:109・110不成立の場合、失火(116条2項)における公共の危険発生の予見可能性。
●補足:(少なくとも)109条1項は、公共の危険が全く生じていなくとも成立。一般人からみて、法益侵害の危険を感じる行為を類型化。秩序維持の観点から、客体に放火すれば常に抽象的危険があると擬制したもの。
●通説:趣旨は同じ。公共の危険の発生は、放火罪における違法性を基礎付ける重要な構成要件要素(●重要)。責任主義の観点から。必要。●批判:延焼の認識との区別が困難。●反論(重要):公共の危険発生の認識は、不特定又は多数人が危険を感じる状態であることの認識(可能性が低い)。延焼の認識は、実際の延焼結果の認識(可能性が高い)。両者は異なる。

第十七章 文書偽造の罪

(詔書偽造等)
第百五十四条 (略)

(公文書偽造等)
第百五十五条 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2 公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

(虚偽公文書作成等)
第百五十六条 公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前二条の例による。

(公正証書原本不実記載等)
第百五十七条 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。

(偽造公文書行使等)
第百五十八条 第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。

(私文書偽造等) 第百五十九条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

(虚偽診断書等作成)
第百六十条 医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、三年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。

(偽造私文書等行使)
第百六十一条 前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。

(電磁的記録不正作出及び供用)
第百六十一条の二 人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
3 不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。
4 前項の罪の未遂は、罰する。

文書偽造罪(154条~161条)①(AA)

●定義:「行使の目的」:真正(有形偽造)(又は内容真実(無形偽造))の文書として使用する目的
●保護法益:文書に対する公共の信用
●定義:「文書」(大判昭和43年9月30日)①文字または文字に代わるべき可読的符合を用い、ある程度永続すべき状態において、②物体上に記載された意思又は観念の表示
●定義:「作成者」(観念説(通説)):意思・観念の表示主体(物理的作成者よりも本質的に重要であるため)
●定義:「名義人」(最重要概念):意思・観念の表示主体(作成者)として、文書上認識される者。●文書の内容・性質を考慮
●補足:「行使の目的」がない条文(157条・160条)についても一般に必要と解されている。他人をして、真正な文書と誤信させる目的。
●参考:一般人が真正な文書と誤信する程度の外観を要する(●重要)。趣旨から。
●補足:虚偽診断書作成罪(160条)は作成により既遂となる(提出の有無は無関係)。提出すれば、行使罪(161条)。両者は牽連犯。

文書偽造罪(154条~161条)②(AA)

●定義:「文書の名義人と作成者との人格の同一性を偽ること」(最高裁昭和59年2月17日②)も実質的には同じ。
●定義:「偽造」(重要)作成権限を有しない者が、他人名義を冒用し文書を作成すること(判例:最高裁昭和51年5月6日①・通説)●理解:名義人・作成権限をチェック。●方針:「後者即ち前者」と両方書けば良い。
(趣旨から、一般人をして真正に作成された文書であると誤認させるに足りる程度の形式・外観が必要。文書の種類・性質・機能・行使形態等を考慮して判断。)
●補足:替え玉・反則切符で論理出し易い。キーワード:「自署性」・「文書の性質上」
●具体例:通称(最判昭和59年2月17日②):再入国許可申請書(私文書)という文書の性質上、本名を要求。外国人登録申請書(写真等は本人)を長年使用していても、人格の同一性を偽っており、偽造。
●具体例:同姓同名(最決平成5年10月5日①):弁護士ではない。同姓同名でも、人格の同一性を偽っており、偽造。
●具体例:資格冒用(最決平成15年10月6日②):国際運転免許証の発給権限を有しない。(仮に)実在の団体であり、被告に作成を委託していたとしても、人格の同一性を偽っており、偽造。
●定義:「事実証明に関する文書」(159条1項)(大判大正9年12月24日)「実社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書」(例:答案)●注意:これに、「権利、義務…に関する文書」等を含めて「私文書」)。
●定義:「変造」(重要)権限なく、他人名義の真正文書の非本質部分に変更を加えること。偽造は「本質」。

コピー(「文書」性)(A)

●問題:コピーは「文書」(155条)か。
●理由:写しは同一内容の原本が存在することを表示するのみであり、名義人の意思・観念を表示しない。
●結論:よって、原則として「文書」には該当しない。
●保護法益:しかし、文書偽造罪の保護法益
●要件:よって、写しも、原本と同様の社会的機能と信用性を有していれば、
●結論:原本に準じて扱われうる。
●あてはめ:この点、写真コピーは、原本上の名義人の意識内容が直接保有されているため、原本と同様の社会的機能と信用性を有する。
●結論:写真コピーは「文書」にあたると解される。

●展開:名義人は、原本の作成名義人(●補足:コピー作成は無形偽造ゆえに不成立)
●展開:改ざんコピーは、原本なら変造、のレベルであっても、偽造(新たな証明力を有する別個の文書を作出するから(判例))。
●展開:原本が有印であれば、コピーも有印。原本上の名義人の意識内容を直接的に表示・証明しうるため。

●補足:単なる記名も「署名」(155条等)(判例)。よって、有印。よって、印影の有無をさておいても、「署名」がない場合(無印)はまれ(本人の記名すらない場合)。

名義人(実在性)(AB)

●問題:「文書」(154条以下)の名義人は実在が必要か?
●保護法益:文書偽造罪の保護法益
●理由:一般人が、名義人が実在すると誤信するおそれがある限り、法益侵害のおそれあり。
●結論:よって、実在は不要と解される。
●展開:一見明白に実在しないと解される場合を除き、文書偽造罪が成立。

名義人(承諾)(AB)

●問題:名義人の承諾があっても私文書「偽造」(159条)にあたるか。
●定義:偽造(「作成名義冒用」の定義の方が長い。「人格の同一性を偽る」の定義の方が短い。)
●展開:よって、名義人の同意ある場合、かかる冒用はなく、原則として、偽造にあたらない。●認識:権限ある、或いは(外観上・形式上は)人格の同一性を偽っていない。
●理由:しかし、文書の性質上、名義人自身による作成が予定されている場合、その承諾があっても、権限はなく、意思・観念の表示主体(作成者)はあくまで物理的署名者であり、作成名義を冒用している。(or「文書の作成者・名義人の人格の同一性を偽っている。」)。
●結論:よって、そのような場合の文書作成も「偽造」にあたると解される。
●補足:同意者は、いずれかの(●検討)共犯となりうる。

代理名義(A)

●問題:名義人は誰か。
●保護法益:文書偽造罪の保護法益
●展開:公衆が、誰を名義人、即ち文書上の意思・観念の表示主体として信用するかにより判断。
●展開:この点、代理の場合は、法的効果帰属主体たる本人を主体として信用する。
●結論:よって、名義人は本人と解される。
●補足:本人の印章の印影・署名がない限り、無印。
●判例:最高裁決定昭和45年9月4日②
●補足:権限濫用(最高裁昭和43年6月25日)実質的に作成権限がなかった。よって、偽造。(濫用に止まる場合は不成立)

事務補助者(AB)

●問題:事実上の作成権限しか有していない(内部規程上も作成権限はない)事務補助者が単独で文書作成。●補足:「代決者」は権限あり。
●理由:(背景:大量の文書の発行事務の迅速・円滑のため、事務補助者に発行事務を委ねる必要性あり。)作成権限はあるといえる。「その内容の正確性を確保することなど、その者への授権を基礎付ける一定の基本条件に従う限度において」作成権限を有しているといえる。
●結論:よって、内容が正確性であり、基本条件にしたがっていれば、権限内にあるものとして、文書偽造罪(155条)の成立は否定。
●判例:最高裁昭和51年5月6日①。なお、「正規の手続きによらないで作成した点…権限の濫用…内部規律違反の責任を問われることはかくべつ」としている。
●批判:内容から作成権限を判断している点、法が有形偽造(155条)と無形偽造(156条)とを区別していることと矛盾する。
●補足:虚偽公文書作成罪(156条)も不成立。●認識:内容の正確性に問題はないので、無形偽造ではないから当然のこと。
●検討:これは「作成権限の冒用」と言われる問題?

虚偽公文書作成罪(156条)(間接正犯)(A)

●前提:通謀なし。あれば共同正犯(65条、60条)。真正身分犯の共同正犯を肯定してから。

●問題:作成に関与する公務員
●趣旨:157条は、私人による申告の場合に特に刑を軽くする趣旨
●展開:作成を補佐し起案する公務員が、自ら虚偽文書を起案し作成させた場合、実質的な作成権限を有していたといえる。
●結論:よって、成立(間接正犯)。
●判例:最判昭和32年10月4日②

●問題:私人(形式・実質共に権限ない公務員でも同様)●前提:権限あれば成立(判例)。
●趣旨:157条の定める著しく軽い法定刑は、156条の間接正犯形態を独立して処罰する一方、その他の行為を不可罰とする趣旨。
●結論:よって、不成立(判例・通説)。

●補足:有形偽造の間接正犯も否定(被利用者が文書内容を認識(外国語や文盲等ではない))。
●参考:虚偽診断書作成罪(160条)の間接正犯も否定(一般的)。公務員とのバランス。

第五章 公務の執行を妨害する罪

(公務執行妨害及び職務強要)
第九十五条 公務員職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。

公務執行妨害罪(95条)(AB)

●保護法益:公務の円滑な遂行
●定義:「職務を執行するに当たり」:直前・待機中・密接関連行為も含む(趣旨から)
●定義:「暴行又は脅迫」:公務員に対する有形力の行使。間接暴行も含む(●確認:趣旨から)
●定義:「暴行」(公務執行妨害罪(95条):公務員に向けられた不当な有形力(直接・間接)の行使(最判S41.3.24)
●定義:「脅迫」(公務執行妨害罪(95条):およそ人を畏怖されるに足りる害悪の告知(●確認:脅迫罪と同じ。あまり。)

職務の適法性(AB)

●問題:明文なし。
●理由:違法な行為については職権濫用罪(193条)が、それに対する抵抗については正当防衛(36条1項)が成立しうる。
●結論:そこで、書かれざる構成要件要素として、職務の適法性は必要。
●要件:当該職務行為が、①一般的・抽象的職務権限に属すること、②具体的職務権限に属すること、及び③有効要件である重要な条件・方式を履践(判例同旨)。

職務の適法性(判断基準)(A)

●理由:裁判所による判断であれば、公務員よりも中立性があり、一般人よりも客観性が確保できる。また、裁判時において刑事訴訟法上適法とされるべき行為(●例:無罪判決を得た被告を公務員が逮捕した行為)は、行為時においても刑法上適法とされるべき。
●結論:裁判所が、法令に基づき客観的に判断する。そして、その基準時は、行為時とする。

職務の適法性(錯誤)(AB)

●前提:職務の適法性を認定
●問題:適法な職務を違法と誤信
●理由:職務の適法性は構成要件要素。その認識がなければ、事実の錯誤。
●要件:もっとも、規範的構成要件要素として、素人的認識があれば、
●結論:故意ありと解される。
●補足:違法性の意識の論点へ

第七章 犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪

(犯人蔵匿等)
第百三条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

(証拠隠滅等)
第百四条 他人刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

(親族による犯罪に関する特例)
第百五条 前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。

(証人等威迫)
第百五条の二 自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

犯人蔵匿・隠避・証拠隠滅等(103~105)(1)(AB)

●保護法益:国家の刑事司法作用の適正(一人より、他人を利用する方が、類型的に危険が高まる)
●定義:「罪を犯した者」(103条):官憲発覚不要。犯罪の嫌疑により捜査(又は訴追)中の者も含む(●参考:最判S.32.1.22)。認識は、実際上(⇔罪名・法定刑等)、で良い。
●定義:「蔵匿」(103条):場所を提供して匿うこと。
●定義:「隠避」(103条):蔵匿以外の方法により、官憲による発見・逮捕を免れさせる一切の行為。
●定義:「他人」(104条):行為者以外の者(行為者には期待可能性なし)
●趣旨(105条):親族間の人情により、期待可能性が小さい。なお、親族関係を認定する(民法725条)。●認識:あまり
●補足:キーワード「期待可能性を欠く」(通説。一般的にはこちら)。「防御権の濫用」(判例)。●方針:期待可能性の判断に際し防御権の濫用か否かを考慮

犯人蔵匿・隠避・証拠隠滅等(103~105)(2)(AB)

●前提:正犯に各罪が成立することを認定

●問題(103条):逮捕後の身代わり犯人(BB)
●結論:「隠避」
●理由:保護法益・定義

●問題(103条):犯人自身による教唆(61条1項、103条)(AB)
●結論:成立
●理由:類型的に見て、他人を巻き込んだ方が刑事司法作用を害する可能性が高まる等から、期待可能性なしとは言えず

●問題(103条):共犯者による犯人蔵匿
●結論:成立
●理由:同上

●問題(104条):共犯者による証拠隠滅(B)
●理由:専ら共犯者のためにする意思であれば
●結論:「他人の」(証拠が共通する場合も多い等、上記意思による場合以外は期待可能性を欠く)
●私見:客観的に専ら共犯者の罪責に係る証拠であれば、当然に「他人の」。

●問題(104条):共犯者自身による教唆(61条1項、104条)
●結論:成立(類型的に見て、他人を巻き込んだ方が刑事司法作用を害する可能性が高まる等から、期待可能性なしとは言えず)

●問題(104条):参考人の虚偽供述は「偽造」か?
●理由:偽証罪(169条)のみ罰するのが法の趣旨
●結論:原則として、不成立
●展開:しかし、「架空の事実に関する令状請求のための証拠を創り出す意図で、(司法警察職員を含む)各人が相談しながら虚偽の供述内容を捜索、具体化させた場合
●結論:共同しての偽造にあたる。
●判例:最決平成28年3月31日①
●補足:供述自体の話。陳述書・調書(署名あり)等は、作成し提出すると成立。

●問題(105条):親族→第三者(B)
●結論:適用なし
●理由:類型的に見て、他人を巻き込んだ方が刑事司法作用を害する可能性が高まる等から、期待可能性なしとは言えず

●問題(105条):親族・第三者→犯人
●結論:問題とならず
●理由:そもそも正犯に構成要件該当性なし

●問題(105条):第三者→親族
●結論:適用なし
●理由:105条は一身専属的

●問題(105条):犯人→親族(B)
●結論:適用あり
●理由:親族に準じて
●補足:十分(難しい)

●補足(105条)(AB):「期待可能性が減少」のみが一般

第二十章 偽証の罪

(偽証)
第百六十九条 法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。

(自白による刑の減免)
第百七十条 前条の罪を犯した者が、その証言をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。

(虚偽鑑定等)
第百七十一条 法律により宣誓した鑑定人、通訳人又は翻訳人が虚偽の鑑定、通訳又は翻訳をしたときは、前二条の例による。

偽証罪(169条)(AB)

●問題:「虚偽」とは
●保護法益:国家の審判作用の適正
●理由:裁判所が事実認定を行うに際し、証人が記憶に反する事実を陳述すること自体に当該作用を害する抽象的危険が含まれている(●必要十分)。
●結論:よって、「虚偽」とは、証人の記憶に反することと解される(判例同旨)。
●参考:虚偽告訴罪(172条)は、客観的真実に反すること(最判S33.7.31)。

●問題:被告人による教唆(61条1項、169条)
●理由:(・黙秘権(憲法38条1項)あり。しかし、)他人をして積極的に偽証させることは、本人による偽証や証拠隠滅と比べ、国家の審判作用の公正という法益侵害が大きい。
●結論:よって、成立(結論判例同旨)。

●確認:被告人に証人適格が否定されているに過ぎない(黙秘権から)、との考え方も。⇔期待可能性がないから。

第二十五章 汚職の罪
(公務員職権濫用)
第百九十三条 (略)
(特別公務員職権濫用)
第百九十四条 (略)
(特別公務員暴行陵虐)
第百九十五条 (略)
(特別公務員職権濫用等致死傷)
第百九十六条 (略)

(収賄、受託収賄及び事前収賄)
第百九十七条 公務員が、その職務に関し を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
2 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。

(第三者供賄)
第百九十七条の二 公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

(加重収賄及び事後収賄)
第百九十七条の三 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。
2 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
3 公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

(あっせん収賄)
第百九十七条の四 公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

(没収及び追徴)
第百九十七条の五 犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。

(贈賄)
第百九十八条 第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。

賄賂罪(197条~198条)(A)

●保護法益:職務の公正とそれに対する社会の信頼(最判平成7年2月22日(大))
●定義:「賄賂」およそ人の需要または欲望を満たすに足りる一切の利益(大判明示43年12月19日)

●問題:「職務に関し」(A)
●保護法益:賄賂罪の保護法益
●理由:害されうるため、
●結論:一般的職務権限に属する行為の他、職務密接関連行為をも含む。
●基準:その考慮要素としては、①職務権限と実質的な結びつきがあるか、②公務を左右する性格をもつか、③公正を疑わせるか
●判例:最決昭和59年5月30日①
●あてはめ(重要)(例:慣行上担当、事実上の影響力等)
●判例(最決昭和61年6月27日③):再選後の職務についても、受託収賄罪(197条1項後段)が成立。●参考:弁護人は(現職か否かを区別する理由はなく)事前収賄罪(197条2項)を主張。●認識:被告人死亡により、公務員となっていない(再選されていない)ことから、無罪となるためだろう。
●判例(最決昭和58年3月25日②):抽象的職務権限の変更後に変更前の職務に関連して賄賂を供与した場合も成立。●認識:趣旨から。

●定義:「請託」:一定の職務行為を依頼すること。
●補足:賄賂と職務行為との対価関係が明確となるので、重く処罰。正当な業務でも該当。
●定義:「受けた」:請託に対し承諾すること。

●趣旨(受託収賄罪(197条1項後段)が単純収賄罪(197条1項前段)より重く処罰される趣旨):請託により、賄賂と職務行為との対価関係が明確になるため。

●条文:「相当の行為をしなかった」も認定

●注意:収賄側から検討(刑も重く)。その後に対応する収賄を。

●補足(●不要?):あっせん収賄罪(197条の4):「公務員」は、少なくとも公務員としての立場であっせんすることを要する(最決S43.10.15)。単なる私人としての行為は含まないが、積極的にその地位を利用することまでは必要ない。

●補足:要求・収受・約束があっても、1つの罪。●認識:最後のもので認定し、他は軽く、で良い。

●補足:公務員の定義(7条1項)がある。●認識:書くとして、「『公務員』(7条1項)である甲」等と書くぐらい。

職務(過去分)(A)

●問題:一般的抽象的職務権限を異にする他の職務に転じた後、前の職務につき賄賂を収受。前の職務も「職務」か。
●保護法益:賄賂罪の保護法益
●展開:かかる場合も、過去の職務の公正とそれに対する社会の信頼は害される。
●結論:よって、「その職務」とは、自己の職務であれば足り、過去の職務を含むと解される(最高裁決定昭和58年3月25日)。
●補足:重要。批判も強いが。●確認:事後収賄罪(197条の3第3項)とする説か。が、「あった」ではないので妥当ではない。

他罪(恐喝・詐欺)との関係(AB)

●問題:恐喝的・詐欺的手段(●重要)
●結論(収賄側):(1)自己の職務に仮託した無関係行為の場合、詐欺・恐喝のみ。(2)対価を得る意思で職務執行し利益を得た場合、収賄との観念的競合(判例・通説)。
●理由:保護法益が別(●重要)●個人的法益か、国家的法益か。
●結論(贈賄側):「供与」にあたる(判例・多数説)
●理由:瑕疵ある意思ではあるものの、あくまで自己の意思に従い処分等しているので(●重要)。その上で期待可能性等を検討すれば足りる。

●参考:盗品等罪で本犯が恐喝された場合も同様

カード・ネット(AB)

●クレカ・プリカ
・偽造(163条の2第1項)→譲渡(同3項)→使用(同2項・246(人)(246-2前(機械)))
・盗取(235)→譲受(256条2項)→使用(256条2項(●不可罰的事後行為?)・246条(プリカ×(現金代用))(246-2(機械)))

●キャッカ
・窃取(235)→送金(246条の2前)→引出(235(246-2前とは混合包括一罪)
・偽造(163条の2第1項)→送金(同第2項・246条の2前)→引出(235(246-2前とは混合包括一罪)●偽造罪とは?
・偽造(163条の2第1項)→引出(163条の2第1項・235)

●ネット・レミ
・PW「窃取」(235・246-2不成立)→送金(246-2前)→引出(235(246-2前とは混合包括一罪)

●参考:電磁的計算機使用詐欺罪(246条の2)振込み送金
●参考:電磁的記録不正作出罪(161条の2)

●確認:その他

その他

●警察官に申告した場合、自首の成否が問題となる。
●マイナー:過失致死罪(108条)、公用文書毀棄罪(258条)、職務強要罪(95条2項)、死体損壊(190条)
●定義:「遺棄」(死体遺棄罪(190条):社会通念上埋葬とは言えない方法で死体を放棄すること。●死体遺棄(190条)は、埋葬義務ある者にのみ成立。
●定義:「行使」(通貨偽造罪(148条):真正なものとして流通に置くこと。●保護法益:通貨に対する公共の信用(・国の通貨発行権も含む(判例))
●定義:「有価証券」(有価証券偽造罪(163条):財産権を表象した証券であって、権利の移転及び行使にその占有を必要とするもの(最判S34.12.4)。●保護法益:有価証券に対する社会的信用
●定義:「行使」(有価証券偽造罪(163条):真正又は内容真実なものとして使用すること。
●親権者による未成年者略取罪(224条)(S.C.H17.12.6②):保護法益(未成年者の自由・安全)(v.s.親権者の監護権)。「略取」(それを害すること)。

ワヴィニー

日本の刑事法(刑法(各論))は「全く知らない」というのもマズイかと考えまして、試みに…

律子

「『全く知らない』訳ではない」ということだけは、かろうじて理解できました(笑)。

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