通則法8条(当事者による準拠法の選択がない場合)

律子

通則法8条について、質問があります。

(当事者による準拠法の選択がない場合)
第八条 前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。
 前項の場合において、法律行為において特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法(その当事者が当該法律行為に関係する事業所を有する場合にあっては当該事業所の所在地の法、その当事者が当該法律行為に関係する二以上の事業所で法を異にする地に所在するものを有する場合にあってはその主たる事業所の所在地の法)を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。
 第一項の場合において、不動産を目的物とする法律行為については、前項の規定にかかわらず、その不動産の所在地法を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。

ワヴィニー

3つだけなら、答えられますよ。

律子

1.8条1項の趣旨(単に最密接関係地法を連結点とする点)は?

ワヴィニー

1.法律行為(契約)に関しては、(1)様々な場所(交渉地、締結地、履行地、目的物所在地、当事者の本拠地等)が関係しうることから、特定の連結点を設定することが困難であること、及び(2)(当事者による法選択が行われる場合と同様)柔軟にあらゆる要素を勘案できるようにすることが妥当であること、ですね。

律子

2.8条2項の趣旨(いわゆる特徴的給付の理論を推定規定として採用した点)は?

ワヴィニー

2.(1)8条1項の原則によれば、法的安定性を欠く(何が契約の準拠法とされるかが不明である)側面があることから、前述1(1)の困難が比較的小さい特徴的給付がなされる場合においては、特定の連結点を可及的設定することが望ましいこと、他方で(2)前述1(2)の妥当性確保の必要性もあることから推定するに留めた、ですね。なお、連結点として、原則として常居所地を採用している趣旨については、またの機会に。

律子

3.8条3項の趣旨(不動産に関して、特徴的給付の理論を採用しなかった点)は?

ワヴィニー

3.不動産については、当事者の常居所地等に関わらず、不動産の所在地が最も強い関係性を有していること、ですね。推定の点については、8条2項と同様です。

なお、2項の「推定」と比較し、3項の「推定」は、より強い推定であると理解しています。
3項の推定が覆る(したがって1項の原則に戻る)場合としては、律子さん(日本在住)が、友人(日本在住)に対し、ハワイに持っている別荘を2週間貸してあげる契約、等が考えられますね。

なお、その発想のヒントは、事務管理・不当利得(15条)・不法行為(20条)の両規定に見受けられます。いずれも事実発生地に密接な関係がある単位法律関係についての例外規定です。不動産の「存在」が「事実」であるとすると、同様の発想が妥当する点、解り易いですね。
次のステップとしては、ではなぜ8条(2項についても同様ですが)3項が、15条・20条同様の例外規定(例えば8条3項「1号」・「2号」等として)を設けなかったのか、は考えてみても良いかも知れませんね。考えなくとも良いかも知れませんが。

律子

他にも質問がありますが、4つ目以降は、またの機会に。

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