通則法26条(夫婦財産制)

律子

通則法26条について、質問があります。

(夫婦財産制)
第二十六条 前条の規定は、夫婦財産制について準用する。
 前項の規定にかかわらず、夫婦が、その署名した書面で日付を記載したものにより、次に掲げる法のうちいずれの法によるべきかを定めたときは、夫婦財産制は、その法による。この場合において、その定めは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
  夫婦の一方が国籍を有する国の法
  夫婦の一方の常居所地法
  不動産に関する夫婦財産制については、その不動産の所在地法
 前二項の規定により外国法を適用すべき夫婦財産制は、日本においてされた法律行為及び日本に在る財産については、善意の第三者に対抗することができない。この場合において、その第三者との間の関係については、夫婦財産制は、日本法による。
 前項の規定にかかわらず、第一項又は第二項の規定により適用すべき外国法に基づいてされた夫婦財産契約は、日本においてこれを登記したときは、第三者に対抗することができる。

ワヴィニー

3つだけなら、答えられますよ。

律子

1.26条を理解するために最も大切なポイントは?

ワヴィニー

2つあります。
①「夫婦財産制」(1項・2項・3項)と、「夫婦財産契約」(4項)との峻別(理論上)
 (「夫婦財産制」=「法定財産制」(デフォルト)+「夫婦財産契約」(オプション)
②しかし、「夫婦財産制」の準拠法を選択する場合、「夫婦財産契約」も締結されるのが通常、という現実認識(実際上)

②は当然と言えば当然です。
あなたが「私達の財産について、予め取り決めておきましょう。」と話をした結果、「それでは、私達の『夫婦財産制』に関する準拠法はオーストラリア法にしよう。」等の話だけで終わるはずはなく、「将来購入する自宅の所有権については…、離婚する場合には…」等の「夫婦財産契約」まで締結するでしょう。

他の実定法分野についても同様でしょうが、国際私法の学習をしているからといって、理論上の準拠法選択の合意(ここでの「夫婦財産『契約』」ではない)にのみ目が行っているようでは不十分です。国際私法も、現実的な問題のための「実学」と理解すべきでしょう(「学説法」ではなく。)。とりわけ通則法26条のような立法の経緯等が特に重要で、かつ具体的・詳細な規定については。なお、財産法においては、通則法11条がそれに相当しますね。

律子

2.26条2項の趣旨は?

ワヴィニー

2.当事者自治です。
ただし、共同体たる夫婦の財産を規律する法を選択するという目的に照らし、選択可能な法は制限されています(いわゆる「量的」制限)。
(具体的に言えば、フランス人と日本人との夫婦(ドイツに土地を所有)が、その夫婦財産関係を規律する法として、フランス・日本・ドイツ以外の国(例:オーストラリア)の法を選択する必要性は高くないと考えられ、かつ、仮にそれを認めると夫婦財産契約に最も密接な関係を有する法を選択する結果とならない可能性の方が高いと考えられることから許容もし難い、ということなのでしょうね。)

律子

3.26条3項の趣旨は?

ワヴィニー

3.内国取引保護です。
(なお、「夫婦財産契約」(26条4項)の話は、前述した①「峻別」(理論上)の観点から、またの機会に。しかし、同じく前述した②「現実認識」(実際上)の観点からは、必ずや。)

律子

他にも質問がありますが、4つ目以降は、またの機会に。

【第20回】 婚姻(効力)の準拠法(夫婦財産制を含む)

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