刑事実務基礎(刑事手続)~国際私法の範囲外

「…刑事法等の公法の抵触問題と私法のそれとはその性質が大いにちがうものであるから、…国際刑事法は国際私法の範囲から除外するのが妥当である。」
(江川英文『国際私法(改訂)』(有斐閣、1957)17頁)

メモ

●利益相反:規程28条3号、同42条(cf.弁護士法25条3号、規程27条3号)
●簡易公判手続
●即決裁判手続
●略式手続
第四章 証拠収集等への協力及び訴追に関する合意
第一節 合意及び協議の手続第三百五十条の二第三百五十条の六
第二節 公判手続の特例第三百五十条の七第三百五十条の九
第三節 合意の終了第三百五十条の十第三百五十条の十二
第四節 合意の履行の確保第三百五十条の十三第三百五十条の十五

捜査(国選弁護を除く)

第二百二条 検察事務官又は司法巡査が逮捕状により被疑者を逮捕したときは、直ちに、検察事務官はこれを検察官に、司法巡査はこれを司法警察員に引致しなければならない。

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。  前項の場合において、被疑者に弁護人の有無を尋ね、弁護人があるときは、弁護人を選任することができる旨は、これを告げることを要しない。  司法警察員は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。  司法警察員は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。  第一項の時間の制限内に送致の手続をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

第二百四条 検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者(前条の規定により送致された被疑者を除く。)を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。ただし、その時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。  検察官は、前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。  検察官は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。  第一項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。  前条第二項の規定は、第一項の場合にこれを準用する。

第二百五条 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。  前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。  前二項の時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。  第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

第二百六条 検察官又は司法警察員がやむを得ない事情によつて前三条の時間の制限に従うことができなかつたときは、検察官は、裁判官にその事由を疎明して、被疑者の勾留を請求することができる。  前項の請求を受けた裁判官は、その遅延がやむを得ない事由に基く正当なものであると認める場合でなければ、勾留状を発することができない。

●変死体の検視(229条2項)等、比較的重要な事項に係る権限は(司法巡査には認められず)司法警察員にのみ認められる。
●検察事務官には、(司法巡査とは異なり)一定の令状請求権がある(218条4項、224条1項、225条2項)。
●令状(逮捕・勾留)の有効期限(着手可能期間)は、原則として発付日から7日(規則300条本文)。
●緊急逮捕(210条)・現行犯逮捕(212条)いずれについても、通常逮捕(199条)された場合の規定が準用されている(211条、216条)。
●60条は勾留の理由。必要性は87条1項に基づく判断。
●勾留理由の判断においては、刑の軽重、前科等も考慮する。
●第一回公判期日の冒頭手続において「陳述する機会」(291条4項)を付与した後に被告人勾留する場合、勾留質問は不要(最高裁S.41.10.19)。
●被疑者勾留に係る防御権が準抗告(429条1項2号)のみであるのに対し、被告人勾留については、それに加えて抗告(420条)もありえる。勾留が当初適法でも追って87条はあり得る。
●55条1項の明文に関わらず、勾留期間については初日(勾留請求日)も算入している模様(通説・実務)。

第二百二十九条 変死者又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。
 検察官は、検察事務官又は司法警察員に前項の処分をさせることができる。

第二百十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
 差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。
 身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、第一項の令状によることを要しない。
 第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。
 検察官、検察事務官又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。  裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。

第二百二十三条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、又はこれに鑑定、通訳若しくは翻訳を嘱託することができる。
 第百九十八条第一項ただし書及び第三項乃至第五項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第二百二十四条 前条第一項の規定により鑑定を嘱託する場合において第百六十七条第一項に規定する処分を必要とするときは、検察官、検察事務官又は司法警察員は、裁判官にその処分を請求しなければならない。
 裁判官は、前項の請求を相当と認めるときは、第百六十七条の場合に準じてその処分をしなければならない。この場合には、第百六十七条の二の規定を準用する。

第二百二十五条 第二百二十三条第一項の規定による鑑定の嘱託を受けた者は、裁判官の許可を受けて、第百六十八条第一項に規定する処分をすることができる。
 前項の許可の請求は、検察官、検察事務官又は司法警察員からこれをしなければならない。
 裁判官は、前項の請求を相当と認めるときは、許可状を発しなければならない。
 第百六十八条第二項乃至第四項及び第六項の規定は、前項の許可状についてこれを準用する。

第百六十七条 被告人の心神又は身体に関する鑑定をさせるについて必要があるときは、裁判所は、期間を定め、病院その他の相当な場所に被告人を留置することができる。
 前項の留置は、鑑定留置状を発してこれをしなければならない。
 第一項の留置につき必要があるときは、裁判所は、被告人を収容すべき病院その他の場所の管理者の申出により、又は職権で、司法警察職員に被告人の看守を命ずることができる。
 裁判所は、必要があるときは、留置の期間を延長し又は短縮することができる。
 勾留に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、第一項の留置についてこれを準用する。ただし、保釈に関する規定は、この限りでない。
 第一項の留置は、未決勾留日数の算入については、これを勾留とみなす。

第百六十七条の二 勾留中の被告人に対し鑑定留置状が執行されたときは、被告人が留置されている間、勾留は、その執行を停止されたものとする。
 前項の場合において、前条第一項の処分が取り消され又は留置の期間が満了したときは、第九十八条の規定を準用する。

【規則】
(令状の有効期間)
第三百条 令状の有効期間は、令状発付の日から七日とする。ただし、裁判所又は裁判官は、相当と認めるときは、七日を超える期間を定めることができる。

第八十七条 勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
 第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

第二百九十一条 検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。
 第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があつたときは、前項の起訴状の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。この場合においては、検察官は、被告人に起訴状を示さなければならない。
 前条第一項の決定があつた場合における第一項の起訴状の朗読についても、前項と同様とする。この場合において、同項中「被害者特定事項」とあるのは、「証人等特定事項」とする。
 裁判長は、起訴状の朗読が終つた後、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨その他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げた上、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。

第四百二十条 裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、この法律に特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合を除いては、抗告をすることはできない。
 前項の規定は、勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する決定及び鑑定のためにする留置に関する決定については、これを適用しない
 勾留に対しては、前項の規定にかかわらず、犯罪の嫌疑がないことを理由として抗告をすることはできない。

第四百二十九条 裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
  忌避の申立を却下する裁判
  勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
  鑑定のため留置を命ずる裁判
  証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
  身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
 第四百二十条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
 第一項の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。
 第一項第四号又は第五号の裁判の取消又は変更の請求は、その裁判のあつた日から三日以内にこれをしなければならない。
 前項の請求期間内及びその請求があつたときは、裁判の執行は、停止される。

第七章 期間
第五十五条 期間の計算については、時で計算するものは、即時からこれを起算し、日、月又は年で計算するものは、初日を算入しないただし、時効期間の初日は、時間を論じないで一日としてこれを計算する。
 月及び年は、暦に従つてこれを計算する。
 期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日又は十二月二十九日から十二月三十一日までの日に当たるときは、これを期間に算入しない。ただし、時効期間については、この限りでない。

第二百二十二条 第九十九条第一項、第百条、第百二条から第百五条まで、第百十条から第百十二条まで、第百十四条、第百十五条及び第百十八条から第百二十四条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条、第二百二十条及び前条の規定によつてする押収又は捜索について、第百十条、第百十一条の二、第百十二条、第百十四条、第百十八条、第百二十九条、第百三十一条及び第百三十七条から第百四十条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条又は第二百二十条の規定によつてする検証についてこれを準用する。ただし、司法巡査は、第百二十二条から第百二十四条までに規定する処分をすることができない。
 第二百二十条の規定により被疑者を捜索する場合において急速を要するときは、第百十四条第二項の規定によることを要しない。
 第百十六条及び第百十七条の規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条の規定によつてする差押え、記録命令付差押え又は捜索について、これを準用する。
 日出前、日没後には、令状に夜間でも検証をすることができる旨の記載がなければ、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第二百十八条の規定によつてする検証のため、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入ることができない。ただし、第百十七条に規定する場所については、この限りでない。
 日没前検証に着手したときは、日没後でもその処分を継続することができる。
 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第二百十八条の規定により差押、捜索又は検証をするについて必要があるときは、被疑者をこれに立ち会わせることができる。
 第一項の規定により、身体の検査を拒んだ者を過料に処し、又はこれに賠償を命ずべきときは、裁判所にその処分を請求しなければならない。

第二百二十二条の二 通信の当事者のいずれの同意も得ないで電気通信の傍受を行う強制の処分については、別に法律で定めるところによる。

国選弁護

● 法定代理人その他の弁護人選任権者(30条2項)も請求可能とする説もある。
● 必要的弁護事件(289条1項)は「長期三年を超える」。緊急逮捕(210条)との比較。「長期三年以上」。

●確認:被疑者の場合に「長期三年を超える」の根拠規定。

第三十二条 公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有する
 公訴の提起後における弁護人の選任は、審級ごとにこれをしなければならない。

第三十六条 被告人貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならないただし被告人以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない

第三十六条の二 この法律により弁護人を要する場合を除いて、被告人が前条の請求をするには、資力申告書(その者に属する現金、預金その他政令で定めるこれらに準ずる資産の合計額(以下「資力」という。)及びその内訳を申告する書面をいう。以下同じ。)を提出しなければならない。

第三十六条の三 この法律により弁護人を要する場合を除いて、その資力が基準額(標準的な必要生計費を勘案して一般に弁護人の報酬及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額をいう。以下同じ。)以上である被告人が第三十六条の請求をするには、あらかじめ、その請求をする裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。
 前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所又は当該被告事件が係属する裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。

第三十七条 左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。
  被告人が未成年者であるとき。
  被告人が年齢七十年以上の者であるとき。
  被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。
  被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。
  その他必要と認めるとき。

第三十七条の二 被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならないただし被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない
 前項の請求は、勾留を請求された被疑者も、これをすることができる。

第三十七条の三 前条第一項の請求をするには、資力申告書を提出しなければならない。  その資力が基準額以上である被疑者が前条第一項の請求をするには、あらかじめ、その勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。  前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。

第三十七条の四 裁判官は、被疑者に対して勾留状が発せられ、かつ、これに弁護人がない場合において、精神上の障害その他の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがある被疑者について必要があると認めるときは、職権で弁護人を付することができる。ただし、被疑者が釈放された場合は、この限りでない。

第三十七条の五 裁判官は、死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる事件について第三十七条の二第一項又は前条の規定により弁護人を付する場合又は付した場合において、特に必要があると認めるときは、職権で更に弁護人一人を付することができる。ただし、被疑者が釈放された場合は、この限りでない。

第三十八条 この法律の規定に基づいて裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付すべき弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。
 前項の規定により選任された弁護人は、旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができる。

第三十八条の二 裁判官による弁護人の選任は、被疑者がその選任に係る事件について釈放されたときは、その効力を失う。ただし、その釈放が勾留の執行停止によるときは、この限りでない。

第三十八条の三 裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付した弁護人解任することができる
  第三十条の規定により弁護人が選任されたことその他の事由により弁護人を付する必要がなくなつたとき。
  被告人と弁護人との利益が相反する状況にあり弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
  心身の故障その他の事由により、弁護人が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となつたとき。
  弁護人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。
  弁護人に対する暴行、脅迫その他の被告人の責めに帰すべき事由により弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
 弁護人を解任するには、あらかじめ、その意見を聴かなければならない。
 弁護人を解任するに当たつては、被告人の権利を不当に制限することがないようにしなければならない。
 公訴の提起前は、裁判官が付した弁護人解任は、裁判官がこれを行う。この場合においては、前三項の規定を準用する

第三十八条の四 裁判所又は裁判官の判断を誤らせる目的で、その資力について虚偽の記載のある資力申告書を提出した者は、十万円以下の過料に処する。

第二百八十九条 死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。  弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないとき若しくは在廷しなくなつたとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。  弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。

公判

● 召喚:被告人等に対し、日時・場所を指定して出頭を命じる強制処分(57条、62条、273条2項等)。なお、58条2項参照。
  公判期日(上告審を除く)には、被告人を召喚しなければならない(273条2項、409条)。
  出頭・同行命令(68条)については、令状・猶予期間(275条)は不要(例:検証の場合の142条、113条3項)。

● 勾引:被告人等を一定の場所に引致する強制処分(58条、62条、68条等)。
  被告人について、58条、62条、64条、68条、70条、71条参照。

勾留

● 「裁判官」(280条1項)は、受訴裁判所の裁判官であり、かつ審理に関与しない裁判官(規則187条1項)。冒頭手続きにおける被告人陳述終了までは予断排除。
● 逮捕され、勾留なく起訴され場合、裁判官が勾留手続きを行う(280条2項)。
●「やむを得ない事由」(208条2項)とは、起訴の是非の決定をすることが困難な場合。事件の複雑性・証拠収集の困難性等に照らし判断。
● 解放については、保釈の他、勾留の取消し(87条)・執行停止(95条)がある。
●「適当と認めるとき」(95条)とは、緊急かつ切実な必要がある場合。
●被疑者勾留が、起訴後に自動的に被告人勾留に切り替わる理由は、208条1項反対解釈(208条1項、60条2項)。●らしい。
●「逃亡のおそれ」(刑訴法(207条、)60条1項3号)については、執行猶予の取消しの可能性を考慮(刑法26条、26条の2)。

【規則】

(勾留に関する処分をすべき裁判官)
第百八十七条 公訴の提起があつた後第一回の公判期日までの勾留に関する処分は、公訴の提起を受けた裁判所の裁判官がこれをしなければならない。ただし、事件の審判に関与すべき裁判官は、その処分をすることができない。
2 前項の規定によるときは同項の処分をすることができない場合には、同項の裁判官は、同一の地に在る地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官にその処分を請求しなければならない。ただし、急速を要する場合又は同一の地にその処分を請求すべき他の裁判所の裁判官がない場合には、同項ただし書の規定にかかわらず、自らその処分をすることを妨げない。
3 前項の請求を受けた裁判官は、第一項の処分をしなければならない。
4 裁判官は、第一項の処分をするについては、検察官、被告人又は弁護人の出頭を命じてその陳述を聴くことができる。必要があるときは、これらの者に対し、書類その他の物の提出を命ずることができる。ただし、事件の審判に関与すべき裁判官は、事件につき予断を生ぜしめるおそれのある書類その他の物の提出を命ずることができない。
5 地方裁判所の支部は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを当該裁判所と別個の地方裁判所とみなす。

第六十条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
  被告人が定まつた住居を有しないとき。
  被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
 勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。ただし第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。
 三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。

第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。ただし、保釈については、この限りでない。
 前項の裁判官は、勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げる際に、被疑者に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。
 前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、勾留された被疑者は弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。
 第二項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を告げるに当たつては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
 裁判官は、第一項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。ただし、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。

第二百八条 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

第二百八十条 公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う
 第百九十九条若しくは第二百十条の規定により逮捕され、又は現行犯人として逮捕された被疑者でまだ勾留されていないものについて第二百四条又は第二百五条の時間の制限内に公訴の提起があつた場合には、裁判官は、速やかに、被告事件を告げ、これに関する陳述を聴き、勾留状を発しないときは、直ちにその釈放を命じなければならない
 前二項の裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

第八十七条 勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。  第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

第九十五条 裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。

保釈

● 権利保釈(89条)→不可→裁量保釈(90条)。なお、義務的保釈(91条)は実務上ほぼなし。
● 89条の除外事由に逃亡のおそれはない。
● 検察官の意見を聴かなければならない(280条1項、3項、92条1項)。

第三百四十四条 禁錮以上の刑に処する判決の宣告があつた後は、第六十条第二項ただし書及び第八十九条の規定は、これを適用しない
 第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

第八十八条 勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
 第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない
  被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
  被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
  被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
  被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
  被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
  被告人の氏名又は住居が分からないとき。

第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

第九十一条 勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。
 第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

第九十二条 裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない
 検察官の請求による場合を除いて、勾留を取り消す決定をするときも、前項と同様である。ただし、急速を要する場合は、この限りでない。

第九十三条 保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない
 保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない
 保釈を許す場合には、被告人の住居を制限しその他適当と認める条件を附することができる

第九十四条 保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない
 裁判所は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる
 裁判所は、有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる

第九十五条 裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。

第九十六条 裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる
 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
 保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる
 保釈された者が、刑の言渡を受けその判決が確定した後執行のため呼出を受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときは、検察官の請求により、決定で保証金の全部又は一部を没取しなければならない

第一回公判期日前の準備手続

● 

【規則】
(第一回公判期日前における訴訟関係人の準備)
第百七十八条の二 訴訟関係人は、第一回の公判期日前に、できる限り証拠の収集及び整理をし、審理が迅速に行われるように準備しなければならない

(検察官、弁護人の氏名の告知等)
第百七十八条の三 裁判所は、検察官及び弁護人の訴訟の準備に関する相互の連絡が、公訴の提起後すみやかに行なわれるようにするため、必要があると認めるときは、裁判所書記官に命じて、検察官及び弁護人の氏名を相手方に知らせる等適当な措置をとらせなければならない

(第一回公判期日の指定)
第百七十八条の四 第一回の公判期日を定めるについては、その期日前に訴訟関係人がなすべき訴訟の準備を考慮しなければならない

(審理に充てることのできる見込み時間の告知)
第百七十八条の五 裁判所は、公判期日の審理が充実して行なわれるようにするため相当と認めるときは、あらかじめ、検察官又は弁護人に対し、その期日の審理に充てることのできる見込みの時間を知らせなければならない。

(第一回公判期日前における検察官、弁護人の準備の内容)
第百七十八条の六 検察官は、第一回の公判期日前に、次のことを行なわなければならない。
 一 法第二百九十九条第一項本文の規定により、被告人又は弁護人に対し、閲覧する機会を与えるべき証拠書類又は証拠物があるときは、公訴の提起後なるべくすみやかに、その機会を与えること
 二 第二項第三号の規定により弁護人が閲覧する機会を与えた証拠書類又は証拠物について、なるべくすみやかに、法第三百二十六条の同意をするかどうか又はその取調の請求に関し異議がないかどうかの見込みを弁護人に通知すること。
2 弁護人は、第一回の公判期日前に、次のことを行なわなければならない。
 一 被告人その他の関係者に面接する等適当な方法によつて、事実関係を確かめておくこと
 二 前項第一号の規定により検察官が閲覧する機会を与えた証拠書類又は証拠物について、なるべくすみやかに、法第三百二十六条の同意をするかどうか又はその取調の請求に関し異議がないかどうかの見込みを検察官に通知すること
 三 法第二百九十九条第一項本文の規定により、検察官に対し、閲覧する機会を与えるべき証拠書類又は証拠物があるときは、なるべくすみやかに、これを提示してその機会を与えること
3 検察官及び弁護人は、第一回の公判期日前に、前二項に掲げることを行なうほか、相手方と連絡して、次のことを行なわなければならない。
 一 起訴状に記載された訴因若しくは罰条を明確にし、又は事件の争点を明らかにするため、相互の間でできる限り打ち合わせておくこと
 二 証拠調その他の審理に要する見込みの時間等裁判所が開廷回数の見通しをたてるについて必要な事項を裁判所に申し出ること

(証人等の氏名及び住居を知る機会を与える場合)
第百七十八条の七 第一回の公判期日前に、法第二百九十九条第一項本文の規定により、訴訟関係人が、相手方に対し、証人等の氏名及び住居を知る機会を与える場合には、なるべく早い時期に、その機会を与えるようにしなければならない

(第一回公判期日における在廷証人)
第百七十八条の八 検察官及び弁護人は、証人として尋問を請求しようとする者で第一回の公判期日において取り調べられる見込みのあるものについて、これを在廷させるように努めなければならない。

(検察官、弁護人の準備の進行に関する問合せ等)
第百七十八条の九 裁判所は、裁判所書記官に命じて、検察官又は弁護人に訴訟の準備の進行に関し問い合わせ又はその準備を促す処置をとらせることができる。

(検察官、弁護人との事前の打合せ)
第百七十八条の十 裁判所は、適当と認めるときは、第一回の公判期日前に、検察官及び弁護人を出頭させた上、公判期日の指定その他訴訟の進行に関し必要な事項について打合せを行なうことができるただし、事件につき予断を生じさせるおそれのある事項にわたることはできない
2 前項の処置は、合議体の構成員にこれをさせることができる。

(還付、仮還付に関する規定の活用)
第百七十八条の十一 検察官は、公訴の提起後は、その事件に関し押収している物について、被告人及び弁護人が訴訟の準備をするにあたりなるべくその物を利用することができるようにするため、法第二百二十二条第一項の規定により準用される法第百二十三条(押収物の還付、仮還付)の規定の活用を考慮しなければならない。

公判前整理手続

●裁判員裁判対象事件ではMUST(裁判員法49条)。
●私費購入した大学ノートへのメモ(自宅に持ち帰っていたが、最後は警察署の自己机の引き出し)も開示対象(最決平成20年9月30日①)。
●公判前整理手続では争点とされていなかった事項に関し、公判で証人尋問等を行った結果明らかになった事実関係に基づく訴因変更は大幅な審理計画変更なく趣旨没却しない(東京高判平成20年11月18日)。 
●316条1の17第1項の主張明示義務があることから、主張の明示状況(求釈明に対する釈明状況を含む)、新主張の経緯・内容等の諸般の事情を総合考慮し、質問・供述を許すことが公判前整理手続の意味を失わせる場合、295条1項により制限されうる(最決平成27年5月25日②)。
●証人尋問が終了しておらず、弾劾の対象となる公判供述が存在しない段階において、328条の要件該当性を判断できず、その証拠調べ請求は、「やむを得ない事由」(316条の32第1項)がある。

第二節 争点及び証拠の整理手続
第一款 公判前整理手続
第一目 通則
第三百十六条の二 裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、第一回公判期日前に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を公判前整理手続に付することができる
 前項の決定又は同項の請求を却下する決定をするには、裁判所の規則の定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
 公判前整理手続は、この款に定めるところにより、訴訟関係人を出頭させて陳述させ、又は訴訟関係人に書面を提出させる方法により、行うものとする。

第三百十六条の三 裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うことができるよう、公判前整理手続において、十分な準備が行われるようにするとともに、できる限り早期にこれを終結させるように努めなければならない。  訴訟関係人は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うことができるよう、公判前整理手続において、相互に協力するとともに、その実施に関し、裁判所に進んで協力しなければならない。

第三百十六条の四 公判前整理手続においては、被告人に弁護人がなければその手続を行うことができない。  公判前整理手続において被告人に弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。

第三百十六条の五 公判前整理手続においては、次に掲げる事項を行うことができる。
  訴因又は罰条を明確にさせること。
  訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許すこと
  公判期日においてすることを予定している主張を明らかにさせて事件の争点を整理すること
  証拠調べの請求をさせること
  前号の請求に係る証拠について、その立証趣旨、尋問事項等を明らかにさせること。
  証拠調べの請求に関する意見(証拠書類について第三百二十六条の同意をするかどうかの意見を含む。)を確かめること。
  証拠調べをする決定又は証拠調べの請求を却下する決定をすること。
  証拠調べをする決定をした証拠について、その取調べの順序及び方法を定めること。
  証拠調べに関する異議の申立てに対して決定をすること。
  第三目の定めるところにより証拠開示に関する裁定をすること
 十一 第三百十六条の三十三第一項の規定による被告事件の手続への参加の申出に対する決定又は当該決定を取り消す決定をすること。
 十二 公判期日を定め、又は変更することその他公判手続の進行上必要な事項を定めること。

第三百十六条の六 裁判長は、訴訟関係人を出頭させて公判前整理手続をするときは、公判前整理手続期日を定めなければならない。
 公判前整理手続期日は、これを検察官、被告人及び弁護人に通知しなければならない。
 裁判長は、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、公判前整理手続期日を変更することができる。この場合においては、裁判所の規則の定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。

第三百十六条の七 公判前整理手続期日に検察官又は弁護人が出頭しないときは、その期日の手続を行うことができない。

第三百十六条の八 弁護人が公判前整理手続期日に出頭しないとき、又は在席しなくなつたときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。
 弁護人が公判前整理手続期日に出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。

第三百十六条の九 被告人は、公判前整理手続期日に出頭することができる。
 裁判所は、必要と認めるときは、被告人に対し、公判前整理手続期日に出頭することを求めることができる。
 裁判長は、被告人を出頭させて公判前整理手続をする場合には、被告人が出頭する最初の公判前整理手続期日において、まず、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨を告知しなければならない。

第三百十六条の十 裁判所は、弁護人の陳述又は弁護人が提出する書面について被告人の意思を確かめる必要があると認めるときは、公判前整理手続期日において被告人に対し質問を発し、及び弁護人に対し被告人と連署した書面の提出を求めることができる。

第三百十六条の十一 裁判所は、合議体の構成員に命じ、公判前整理手続(第三百十六条の五第二号、第七号及び第九号から第十一号までの決定を除く。)をさせることができる。この場合において、受命裁判官は、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

第三百十六条の十二 公判前整理手続期日には、裁判所書記官を立ち会わせなければならない。
 公判前整理手続期日における手続については、裁判所の規則の定めるところにより、公判前整理手続調書を作成しなければならない。

第二目 争点及び証拠の整理

第三百十六条の十三 検察官は、事件が公判前整理手続に付されたときは、その証明予定事実(公判期日において証拠により証明しようとする事実をいう。以下同じ。)を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人又は弁護人に送付しなければならない。この場合においては、当該書面には、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調べを請求する意思のない資料に基づいて、裁判所に事件について偏見又は予断を生じさせるおそれのある事項を記載することができない
 検察官は、前項の証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない
 前項の規定により証拠の取調べを請求するについては、第二百九十九条第一項の規定は適用しない。
 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の書面の提出及び送付並びに第二項の請求の期限を定めるものとする。

第三百十六条の十四 検察官は、前条第二項の規定により取調べを請求した証拠(以下「検察官請求証拠」という。)については、速やかに、被告人又は弁護人に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない
 一 証拠書類又は証拠物 当該証拠書類又は証拠物を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。
 二 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人 その氏名及び住居を知る機会を与え、かつ、その者の供述録取書等のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあつては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。
② 検察官は、前項の規定による証拠の開示をした後、被告人又は弁護人から請求があつたときは、速やかに、被告人又は弁護人に対し、検察官が保管する証拠の一覧表の交付をしなければならない。
③ 前項の一覧表には、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、証拠ごとに、当該各号に定める事項を記載しなければならない。
 一 証拠物 品名及び数量
 二 供述を録取した書面で供述者の署名又は押印のあるもの 当該書面の標目、作成の年月日及び供述者の氏名
 三 証拠書類(前号に掲げるものを除く。) 当該証拠書類の標目、作成の年月日及び作成者の氏名
④ 前項の規定にかかわらず、検察官は、同項の規定により第二項の一覧表に記載すべき事項であつて、これを記載することにより次に掲げるおそれがあると認めるものは、同項の一覧表に記載しないことができる。
 一 人の身体若しくは財産に害を加え又は人を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれ
 二 人の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ
 三 犯罪の証明又は犯罪の捜査に支障を生ずるおそれ
⑤ 検察官は、第二項の規定により一覧表の交付をした後、証拠を新たに保管するに至つたときは、速やかに、被告人又は弁護人に対し、当該新たに保管するに至つた証拠の一覧表の交付をしなければならない。この場合においては、前二項の規定を準用する。

第三百十六条の十五 検察官は、前条第一項の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、次の各号に掲げる証拠の類型のいずれかに該当し、かつ、特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その重要性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、同項第一号に定める方法による開示をしなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる
 一 証拠物
 二 第三百二十一条第二項に規定する裁判所又は裁判官の検証の結果を記載した書面
 三 第三百二十一条第三項に規定する書面又はこれに準ずる書面
 四 第三百二十一条第四項に規定する書面又はこれに準ずる書面
 五 次に掲げる者の供述録取書等
  イ 検察官が証人として尋問を請求した者
  ロ 検察官が取調べを請求した供述録取書等の供述者であつて、当該供述録取書等が第三百二十六条の同意がされない場合には、検察官が証人として尋問を請求することを予定しているもの
 六 前号に掲げるもののほか、被告人以外の者の供述録取書等であつて、検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの
 七 被告人の供述録取書等
 八 取調べ状況の記録に関する準則に基づき、検察官、検察事務官又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であつて、身体の拘束を受けている者の取調べに関し、その年月日、時間、場所その他の取調べの状況を記録したもの(被告人又はその共犯として身体を拘束され若しくは公訴を提起された者であつて第五号イ若しくはロに掲げるものに係るものに限る。)
 九 検察官請求証拠である証拠物の押収手続記録書面(押収手続の記録に関する準則に基づき、検察官、検察事務官又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であつて、証拠物の押収に関し、その押収者、押収の年月日、押収場所その他の押収の状況を記録したものをいう。次項及び第三項第二号イにおいて同じ。)
② 前項の規定による開示をすべき証拠物の押収手続記録書面(前条第一項又は前項の規定による開示をしたものを除く。)について、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、当該証拠物により特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときも、同項と同様とする。
③ 被告人又は弁護人は、前二項の開示の請求をするときは、次の各号に掲げる開示の請求の区分に応じ、当該各号に定める事項を明らかにしなければならない
 一 第一項の開示の請求 次に掲げる事項
  イ 第一項各号に掲げる証拠の類型及び開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項
  ロ 事案の内容、特定の検察官請求証拠に対応する証明予定事実、開示の請求に係る証拠と当該検察官請求証拠との関係その他の事情に照らし、当該開示の請求に係る証拠が当該検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であることその他の被告人の防御の準備のために当該開示が必要である理由
 二 前項の開示の請求 次に掲げる事項
  イ 開示の請求に係る押収手続記録書面を識別するに足りる事項
  ロ 第一項の規定による開示をすべき証拠物と特定の検察官請求証拠との関係その他の事情に照らし、当該証拠物により当該検察官請求証拠の証明力を判断するために当該開示が必要である理由

第三百十六条の十六 被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四第一項並びに前条第一項及び第二項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けたときは、検察官請求証拠について、第三百二十六条の同意をするかどうか又はその取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見を明らかにしなければならない
 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、前項の意見を明らかにすべき期限を定めることができる。

第三百十六条の十七 被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四第一項並びに第三百十六条の十五第一項及び第二項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けた場合において、その証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張があるときは、裁判所及び検察官に対し、これを明らかにしなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。
 被告人又は弁護人は、前項の証明予定事実があるときは、これを証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第三項の規定を準用する。
 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の主張を明らかにすべき期限及び前項の請求の期限を定めることができる。

第三百十六条の十八 被告人又は弁護人は、前条第二項の規定により取調べを請求した証拠については、速やかに、検察官に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない
  証拠書類又は証拠物 当該証拠書類又は証拠物を閲覧し、かつ、謄写する機会を与えること。
  証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人 その氏名及び住居を知る機会を与え、かつ、その者の供述録取書等のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあつては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧し、かつ、謄写する機会を与えること。

第三百十六条の十九 検察官は、前条の規定による開示をすべき証拠の開示を受けたときは、第三百十六条の十七第二項の規定により被告人又は弁護人が取調べを請求した証拠について、第三百二十六条の同意をするかどうか又はその取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見を明らかにしなければならない
 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、前項の意見を明らかにすべき期限を定めることができる。

第三百十六条の二十 検察官は、第三百十六条の十四第一項並びに第三百十六条の十五第一項及び第二項の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、第三百十六条の十七第一項の主張に関連すると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その関連性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、第三百十六条の十四第一項第一号に定める方法による開示をしなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。
② 被告人又は弁護人は、前項の開示の請求をするときは、次に掲げる事項を明らかにしなければならない

 一 開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項
 二 第三百十六条の十七第一項の主張と開示の請求に係る証拠との関連性その他の被告人の防御の準備のために当該開示が必要である理由

第三百十六条の二十一 検察官は、第三百十六条の十三から前条まで(第三百十六条の十四第五項を除く。)に規定する手続が終わつた後、その証明予定事実を追加し又は変更する必要があると認めるときは、速やかに、その追加し又は変更すべき証明予定事実を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人又は弁護人に送付しなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。
 検察官は、その証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べの請求を追加する必要があると認めるときは、速やかに、その追加すべき証拠の取調べを請求しなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第三項の規定を準用する。
 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の書面の提出及び送付並びに前項の請求の期限を定めることができる。
 第三百十六条の十四第一項、第三百十六条の十五及び第三百十六条の十六の規定は、第二項の規定により検察官が取調べを請求した証拠についてこれを準用する。

第三百十六条の二十二 被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三から第三百十六条の二十まで(第三百十六条の十四第五項を除く。)に規定する手続が終わつた後、第三百十六条の十七第一項の主張を追加し又は変更する必要があると認めるときは、速やかに、裁判所及び検察官に対し、その追加し又は変更すべき主張を明らかにしなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。
 被告人又は弁護人は、その証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べの請求を追加する必要があると認めるときは、速やかに、その追加すべき証拠の取調べを請求しなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第三項の規定を準用する。
 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の主張を明らかにすべき期限及び前項の請求の期限を定めることができる。
 第三百十六条の十八及び第三百十六条の十九の規定は、第二項の規定により被告人又は弁護人が取調べを請求した証拠についてこれを準用する。
 第三百十六条の二十の規定は、第一項の追加し又は変更すべき主張に関連すると認められる証拠についてこれを準用する。

第三百十六条の二十三 第二百九十九条の二及び第二百九十九条の三の規定は、検察官又は弁護人がこの目の規定による証拠の開示をする場合についてこれを準用する。
 第二百九十九条の四の規定は、検察官が第三百十六条の十四第一項(第三百十六条の二十一第四項において準用する場合を含む。)の規定による証拠の開示をすべき場合についてこれを準用する。
 第二百九十九条の五から第二百九十九条の七までの規定は、検察官が前項において準用する第二百九十九条の四第一項から第四項までの規定による措置をとつた場合についてこれを準用する。

第三百十六条の二十四 裁判所は、公判前整理手続を終了するに当たり、検察官及び被告人又は弁護人との間で、事件の争点及び証拠の整理の結果を確認しなければならない。

第三目 証拠開示に関する裁定

第三百十六条の二十五 裁判所は、証拠の開示の必要性の程度並びに証拠の開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度その他の事情を考慮して、必要と認めるときは、第三百十六条の十四第一項(第三百十六条の二十一第四項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠については検察官の請求により、第三百十六条の十八(第三百十六条の二十二第四項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠については被告人又は弁護人の請求により決定で、当該証拠の開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる
 裁判所は、前項の請求について決定をするときは、相手方の意見を聴かなければならない。
 第一項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第三百十六条の二十六 裁判所は検察官が第三百十六条の十四第一項若しくは第三百十六条の十五第一項若しくは第二項(第三百十六条の二十一第四項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)若しくは第三百十六条の二十第一項(第三百十六条の二十二第五項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠を開示していないと認めるとき、又は被告人若しくは弁護人が第三百十六条の十八(第三百十六条の二十二第四項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠を開示していないと認めるときは、相手方の請求により、決定で、当該証拠の開示を命じなければならない。この場合において、裁判所は、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる
 裁判所は、前項の請求について決定をするときは、相手方の意見を聴かなければならない。
 第一項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第三百十六条の二十七 裁判所は、第三百十六条の二十五第一項又は前条第一項の請求について決定をするに当たり、必要があると認めるときは、検察官、被告人又は弁護人に対し、当該請求に係る証拠の提示を命ずることができるこの場合においては、裁判所は、何人にも、当該証拠の閲覧又は謄写をさせることができない
 裁判所は、被告人又は弁護人がする前条第一項の請求について決定をするに当たり、必要があると認めるときは、検察官に対し、その保管する証拠であつて、裁判所の指定する範囲に属するものの標目を記載した一覧表の提示を命ずることができるこの場合においては、裁判所は、何人にも、当該一覧表の閲覧又は謄写をさせることができない
 第一項の規定は第三百十六条の二十五第三項又は前条第三項の即時抗告が係属する抗告裁判所について、前項の規定は同条第三項の即時抗告が係属する抗告裁判所について、それぞれ準用する。

第二款 期日間整理手続

第三百十六条の二十八 裁判所は、審理の経過に鑑み必要と認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、第一回公判期日後に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を期日間整理手続に付することができる。
 期日間整理手続については、前款(第三百十六条の二第一項及び第三百十六条の九第三項を除く。)の規定を準用する。この場合において、検察官、被告人又は弁護人が前項の決定前に取調べを請求している証拠については、期日間整理手続において取調べを請求した証拠とみなし、第三百十六条の六から第三百十六条の十まで及び第三百十六条の十二中「公判前整理手続期日」とあるのは「期日間整理手続期日」と、同条第二項中「公判前整理手続調書」とあるのは「期日間整理手続調書」と読み替えるものとする。

第三款 公判手続の特例

第三百十六条の二十九 公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件を審理する場合には、第二百八十九条第一項に規定する事件に該当しないときであつても、弁護人がなければ開廷することはできない。

第三百十六条の三十 公判前整理手続に付された事件については、被告人又は弁護人は、証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは、第二百九十六条の手続に引き続き、これを明らかにしなければならない。この場合においては、同条ただし書の規定を準用する。

第三百十六条の三十一 公判前整理手続に付された事件については、裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、前条の手続が終わつた後、公判期日において、当該公判前整理手続の結果を明らかにしなければならない。
 期日間整理手続に付された事件については、裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、その手続が終わつた後、公判期日において、当該期日間整理手続の結果を明らかにしなければならない。

第三百十六条の三十二 公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件については、検察官及び被告人又は弁護人は、第二百九十八条第一項の規定にかかわらず、やむを得ない事由によつて公判前整理手続又は期日間整理手続において請求することができなかつたものを除き、当該公判前整理手続又は期日間整理手続が終わつた後には、証拠調べを請求することができない。
 前項の規定は、裁判所が、必要と認めるときに、職権で証拠調べをすることを妨げるものではない。

冒頭手続

【規則】

(人定質問)
第百九十六条 裁判長は、検察官の起訴状の朗読に先だち、被告人に対し、その人違でないことを確めるに足りる事項を問わなければならない。

第二百九十一条 検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない
 第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があつたときは、前項の起訴状の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。この場合においては、検察官は、被告人に起訴状を示さなければならない。
 前条第一項の決定があつた場合における第一項の起訴状の朗読についても、前項と同様とする。この場合において、同項中「被害者特定事項」とあるのは、「証人等特定事項」とする。
 裁判長は、起訴状の朗読が終つた後、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨その他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げた上、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない

【規則】

(被告人の権利保護のための告知事項)
第百九十七条 裁判長は、起訴状の朗読が終つた後、被告人に対し、終始沈黙し又個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨の外、陳述をすることもできる旨及び陳述をすれば自己に不利益な証拠ともなり又利益な証拠ともなるべき旨を告げなければならない。
2 裁判長は、必要と認めるときは、被告人に対し、前項に規定する事項の外、被告人が充分に理解していないと思料される被告人保護のための権利を説明しなければならない。

証拠調べ手続(証人尋問を除く)

●被告人・弁護人による冒頭陳述は、検察官の立証段階が終わった後に行うこともできる。●私見:規則198条1項の解釈(直後でなくとも良いとも解される。)
●そもそも裁量事項である上、規則190条2項で当事者の意見を聴いているので、証拠調べに対する決定に対しては不相当を理由とする意義は認めない(規則205条1項ただし書)。
●290条の2は被害者(後述)。3は証人等。の話。

第二百九十条の三 裁判所は、次に掲げる場合において、証人、鑑定人、通訳人、翻訳人又は供述録取書等(供述書、供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であつて供述を記録したものをいう。以下同じ。)の供述者(以下この項において「証人等」という。)から申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、証人等特定事項(氏名及び住所その他の当該証人等を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
 証人等特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより証人等若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるとき。
 前号に掲げる場合のほか、証人等特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより証人等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認めるとき。
 裁判所は、前項の決定をした事件について、証人等特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至つたときは、決定で、同項の決定を取り消さなければならない。

思のない資料に基いて、裁判所に事件について偏見又は予断を生ぜしめるおそれのある事項を述べることはできない

第二百九十六条 証拠調のはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならないただし証拠とすることができず、又は証拠としてその取調を請求する意思のない資料に基いて、裁判所に事件について偏見又は予断を生ぜしめるおそれのある事項を述べることはできない

【規則】

(弁護人等の陳述)
第百九十八条 裁判所は、検察官が証拠調のはじめに証拠により証明すべき事実を明らかにした後、被告人又は弁護人にも、証拠により証明すべき事実を明らかにすることを許すことができる。
2 前項の場合には、被告人又は弁護人は、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調を請求する意思のない資料に基いて、裁判所に事件について偏見又は予断を生ぜしめるおそれのある事項を述べることはできない。

第二百九十八条 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる
 裁判所は、必要と認めるときは、職権で証拠調をすることができる。

【規則】

(証拠調の請求の方式)
第百八十九条 証拠調の請求は、証拠と証明すべき事実との関係を具体的に明示して、これをしなければならない
2 証拠書類その他の書面の一部の取調を請求するには、特にその部分を明確にしなければならない。
3 裁判所は、必要と認めるときは、証拠調の請求をする者に対し、前二項に定める事項を明らかにする書面の提出を命ずることができる。
4 前各項の規定に違反してされた証拠調の請求は、これを却下することができる。

【規則】

(証拠決定)
第百九十条 証拠調又は証拠調の請求の却下は、決定でこれをしなければならない
2 前項の決定をするについては、証拠調の請求に基く場合には、相手方又はその弁護人の意見を、職権による場合には、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない
3 被告人が出頭しないでも証拠調を行うことができる公判期日に被告人及び弁護人が出頭していないときは、前項の規定にかかわらず、これらの者の意見を聴かないで、第一項の決定をすることができる。

【規則】

(証拠調の請求の順序)
第百九十三条 検察官は、まず、事件の審判に必要と認めるすべての証拠の取調を請求しなければならない。
2 被告人又は弁護人は、前項の請求が終つた後、事件の審判に必要と認める証拠の取調を請求することができる。

第三百二十六条 検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認めるときに限り、第三百二十一条乃至前条の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
 被告人が出頭しないでも証拠調を行うことができる場合において、被告人が出頭しないときは、前項の同意があつたものとみなす。ただし、代理人又は弁護人が出頭したときは、この限りでない。

第二百九十七条 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、証拠調の範囲、順序及び方法を定めることができる
 前項の手続は、合議体の構成員にこれをさせることができる。
 裁判所は、適当と認めるときは、何時でも、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、第一項の規定により定めた証拠調の範囲、順序又は方法を変更することができる。

第三百四条 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人は、裁判長又は陪席の裁判官が、まず、これを尋問する。
 検察官、被告人又は弁護人は、前項の尋問が終つた後、裁判長に告げて、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人を尋問することができる。この場合において、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の取調が、検察官、被告人又は弁護人の請求にかかるものであるときは、請求をした者が、先に尋問する。  裁判所は、適当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、前二項の尋問の順序を変更することができる。

第三百四条の二 裁判所は、証人を尋問する場合において、証人が被告人の面前(第百五十七条の五第一項に規定する措置を採る場合並びに第百五十七条の六第一項及び第二項に規定する方法による場合を含む。)においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めるときは、弁護人が出頭している場合に限り、検察官及び弁護人の意見を聴き、その証人の供述中被告人を退廷させることができる。この場合には、供述終了後被告人を入廷させ、これに証言の要旨を告知し、その証人を尋問する機会を与えなければならない。

第三百五条 検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させなければならない。ただし、裁判長は、自らこれを朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にこれを朗読させることができる。
 裁判所が職権で証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、自らその書類を朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にこれを朗読させなければならない。
 第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があつたときは、前二項の規定による証拠書類の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。
 第二百九十条の三第一項の決定があつた場合における第一項又は第二項の規定による証拠書類の朗読についても、前項と同様とする。この場合において、同項中「被害者特定事項」とあるのは、「証人等特定事項」とする。
 第百五十七条の六第四項の規定により記録媒体がその一部とされた調書の取調べについては、第一項又は第二項の規定による朗読に代えて、当該記録媒体を再生するものとする。ただし、裁判長は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、当該記録媒体の再生に代えて、当該調書の取調べを請求した者、陪席の裁判官若しくは裁判所書記官に当該調書に記録された供述の内容を告げさせ、又は自らこれを告げることができる。
 裁判所は、前項の規定により第百五十七条の六第四項に規定する記録媒体を再生する場合において、必要と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、第百五十七条の五に規定する措置を採ることができる。

【規則】

(証拠書類等の取調の方法)
第二百三条の二 裁判長は、訴訟関係人の意見を聴き、相当と認めるときは、請求により証拠書類又は証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについての朗読に代えて、その取調を請求した者、陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にその要旨を告げさせ、又は自らこれを告げることができる
2 裁判長は、訴訟関係人の意見を聴き、相当と認めるときは、職権で証拠書類又は証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについての朗読に代えて、自らその要旨を告げ、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にこれを告げさせることができる。

第三百六条 検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠物の取調をするについては、裁判長は、請求をした者をしてこれを示させなければならない。ただし、裁判長は、自らこれを示し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを示させることができる。
 裁判所が職権で証拠物の取調をするについては、裁判長は、自らこれを訴訟関係人に示し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを示させなければならない。

第三百七条 証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについては、前条の規定による外第三百五条の規定による。

第三百七条の二 第二百九十一条の二の決定があつた事件については、第二百九十六条、第二百九十七条、第三百条乃至第三百二条及び第三百四条乃至前条の規定は、これを適用せず、証拠調は、公判期日において、適当と認める方法でこれを行うことができる。

第三百九条 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。
② 検察官、被告人又は弁護人は、前項に規定する場合の外、裁判長の処分に対して異議を申し立てることができる。
③ 裁判所は、前二項の申立について決定をしなければならない。

【規則】

(異議申立の事由)
第二百五条 法第三百九条第一項の異議の申立は、法令の違反があること又は相当でないことを理由としてこれをすることができる。ただし証拠調に関する決定に対しては、相当でないことを理由としてこれをすることはできない
2 法第三百九条第二項の異議の申立は、法令の違反があることを理由とする場合に限りこれをすることができる

【規則】

(異議申立の方式、時期)
第二百五条の二 異議の申立は、個々の行為、処分又は決定ごとに、簡潔にその理由を示して、直ちにしなければならない。

(異議申立に対する決定の時期)
第二百五条の三 異議の申立については、遅滞なく決定をしなければならない。

(異議申立が不適法な場合の決定)
第二百五条の四 時機に遅れてされた異議の申立、訴訟を遅延させる目的のみでされたことの明らかな異議の申立、その他不適法な異議の申立は、決定で却下しなければならない。ただし、時機に遅れてされた異議の申立については、その申し立てた事項が重要であつてこれに対する判断を示すことが相当であると認めるときは、時機に遅れたことを理由としてこれを却下してはならない。

異議申立が理由のない場合の決定
第二百五条の五 異議の申立を理由がないと認めるときは、決定で棄却しなければならない。

異議申立が理由のある場合の決定
第二百五条の六 異議の申立を理由があると認めるときは、異議を申し立てられた行為の中止、撤回、取消又は変更を命ずる等その申立に対応する決定をしなければならない
2 取り調べた証拠が証拠とすることができないものであることを理由とする異議の申立を理由があると認めるときは、その証拠の全部又は一部を排除する決定をしなければならない。

(重ねて異議を申し立てることの禁止)
第二百六条 異議の申立について決定があつたときは、その決定で判断された事項については、重ねて異議を申し立てることはできない。

第三百十条 証拠調を終つた証拠書類又は証拠物は、遅滞なくこれを裁判所に提出しなければならないただし裁判所の許可を得たときは、原本に代え、その謄本を提出することができる

第三百八条 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人に対し、証拠の証明力を争うために必要とする適当な機会を与えなければならない

【規則】

(証拠の証明力を争う機会)
第二百四条 裁判長は、裁判所が適当と認める機会に検察官及び被告人又は弁護人に対し、反証の取調の請求その他の方法により証拠の証明力を争うことができる旨を告げなければならない。

第三百一条 第三百二十二条及び第三百二十四条第一項の規定により証拠とすることができる被告人の供述が自白である場合には、犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後でなければ、その取調を請求することはできない。

【規則】

(職権による排除決定)
第二百七条 裁判所は、取り調べた証拠が証拠とすることができないものであることが判明したときは、職権でその証拠の全部又は一部を排除する決定をすることができる。

第二百九十八条 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。
 裁判所は、必要と認めるときは、職権で証拠調をすることができる

第三百十一条 被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。
 被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる
 陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる

第二百九十二条の二 裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする
 前項の規定による意見の陳述の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
 裁判長又は陪席の裁判官は、被害者等又は当該被害者の法定代理人が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、これらの者に質問することができる。
 訴訟関係人は、被害者等又は当該被害者の法定代理人が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、裁判長に告げて、これらの者に質問することができる。
 裁判長は、被害者等若しくは当該被害者の法定代理人の意見の陳述又は訴訟関係人の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人に対する質問が既にした陳述若しくは質問と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、これを制限することができる。
 第百五十七条の四、第百五十七条の五並びに第百五十七条の六第一項及び第二項の規定は、第一項の規定による意見の陳述について準用する。
 裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。
 前項の規定により書面が提出された場合には、裁判長は、公判期日において、その旨を明らかにしなければならない。この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、その書面を朗読し、又はその要旨を告げることができる。
 第一項の規定による陳述又は第七項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない

証人尋問

●証人尋問の順序は、304条1項・2項とは逆(304条3項)。

【規則】

(人定尋問)
第百十五条 証人に対しては、まず、その人違でないかどうかを取り調べなければならない。

第百五十四条 証人には、この法律に特別の定のある場合を除いて、宣誓をさせなければならない。

【規則】

(宣誓の方式)
第百十八条 宣誓は、宣誓書によりこれをしなければならない。
2 宣誓書には、良心に従つて、真実を述べ何事も隠さず、又何事も附け加えないことを誓う旨を記載しなければならない。
3 裁判長は、証人に宣誓書を朗読させ、かつこれに署名押印させなければならない。証人が宣誓書を朗読することができないときは、裁判長は、裁判所書記官にこれを朗読させなければならない。
4 宣誓は、起立して厳粛にこれを行わなければならない。

【規則】

(偽証の警告)
第百二十条 宣誓をさせた証人には、尋問前に、偽証の罰を告げなければならない。

第三百四条 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人は、裁判長又は陪席の裁判官が、まず、これを尋問する
 検察官、被告人又は弁護人は、前項の尋問が終つた後、裁判長に告げて、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人を尋問することができる。この場合において、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の取調が、検察官、被告人又は弁護人の請求にかかるものであるときは、請求をした者が、先に尋問する。
 裁判所は、適当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、前二項の尋問の順序を変更することができる

【規則】

(証拠調の順序)
第百九十九条 証拠調については、まず、検察官が取調を請求した証拠で事件の審判に必要と認めるすべてのものを取り調べ、これが終つた後、被告人又は弁護人が取調を請求した証拠で事件の審判に必要と認めるものを取り調べるものとする。ただし、相当と認めるときは、随時必要とする証拠を取り調べることができる。
2 前項の証拠調が終つた後においても、必要があるときは、更に証拠を取り調べることを妨げない。

(証人尋問の順序)
第百九十九条の二 訴訟関係人がまず証人を尋問するときは、次の順序による
 一 証人の尋問を請求した者の尋問(主尋問)
 二 相手方の尋問(反対尋問)
 三 証人の尋問を請求した者の再度の尋問(再主尋問)
2 訴訟関係人は、裁判長の許可を受けて、更に尋問することができる。

(主尋問)
第百九十九条の三 主尋問は、立証すべき事項及びこれに関連する事項について行う。
2 主尋問においては、証人の供述の証明力を争うために必要な事項についても尋問することができる。
3 主尋問においては、誘導尋問をしてはならないただし、次の場合には、誘導尋問をすることができる
 一 証人の身分、経歴、交友関係等で、実質的な尋問に入るに先だつて明らかにする必要のある準備的な事項に関するとき。
 二 訴訟関係人に争のないことが明らかな事項に関するとき。
 三 証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるとき。
 四 証人が主尋問者に対して敵意又は反感を示すとき。
 五 証人が証言を避けようとする事項に関するとき。
 六 証人が前の供述と相反するか又は実質的に異なる供述をした場合において、その供述した事項に関するとき。
 七 その他誘導尋問を必要とする特別の事情があるとき。
4 誘導尋問をするについては、書面の朗読その他証人の供述に不当な影響を及ぼすおそれのある方法を避けるように注意しなければならない。
5 裁判長は、誘導尋問を相当でないと認めるときは、これを制限することができる。

(反対尋問)
第百九十九条の四 反対尋問は、主尋問に現われた事項及びこれに関連する事項並びに証人の供述の証明力を争うために必要な事項について行う。
2 反対尋問は、特段の事情のない限り、主尋問終了後直ちに行わなければならない。
3 反対尋問においては、必要があるときは、誘導尋問をすることができる
4 裁判長は、誘導尋問を相当でないと認めるときは、これを制限することができる。

(反対尋問の機会における新たな事項の尋問)
第百九十九条の五 証人の尋問を請求した者の相手方は、裁判長の許可を受けたときは、反対尋問の機会に、自己の主張を支持する新たな事項についても尋問することができる。
2 前項の規定による尋問は、同項の事項についての主尋問とみなす。

(供述の証明力を争うために必要な事項の尋問)
第百九十九条の六 証人の供述の証明力を争うために必要な事項の尋問は、証人の観察、記憶又は表現の正確性等証言の信用性に関する事項及び証人の利害関係、偏見、予断等証人の信用性に関する事項について行う。ただし、みだりに証人の名誉を害する事項に及んではならない。

(再主尋問)
第百九十九条の七 再主尋問は、反対尋問に現われた事項及びこれに関連する事項について行う。
2 再主尋問については、主尋問の例による。
3 第百九十九条の五の規定は、再主尋問の場合に準用する。

(補充尋問)
第百九十九条の八 裁判長又は陪席の裁判官がまず証人を尋問した後にする訴訟関係人の尋問については、証人の尋問を請求した者、相手方の区別に従い、前六条の規定を準用する。

(職権による証人の補充尋問)
第百九十九条の九 裁判所が職権で証人を取り調べる場合において、裁判長又は陪席の裁判官が尋問した後、訴訟関係人が尋問するときは、反対尋問の例による。

書面又は物の提示
第百九十九条の十 訴訟関係人は、書面又は物に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その書面又は物を示すことができる。
2 前項の書面又は物が証拠調を終つたものでないときは、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。ただし、相手方に異議がないときは、この限りでない。

記憶喚起のための書面等の提示
第百九十九条の十一 訴訟関係人は、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、書面(供述を録取した書面を除く。)又は物を示して尋問することができる。
2 前項の規定による尋問については、書面の内容が証人の供述に不当な影響を及ぼすことのないように注意しなければならない。
3 第一項の場合には、前条第二項の規定を準用する。

(図面等の利用)
第百九十九条の十二 訴訟関係人は、証人の供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、図面、写真、模型、装置等を利用して尋問することができる。
2 前項の場合には、第百九十九条の十第二項の規定を準用する。

(証人尋問の方法)
第百九十九条の十三 訴訟関係人は、証人を尋問するに当たつては、できる限り個別的かつ具体的で簡潔な尋問によらなければならない。
2 訴訟関係人は、次に掲げる尋問をしてはならない。ただし、第二号から第四号までの尋問については、正当な理由がある場合は、この限りでない。
 一 威嚇的又は侮辱的な尋問
 二 すでにした尋問と重複する尋問
 三 意見を求め又は議論にわたる尋問
 四 証人が直接経験しなかつた事実についての尋問

(関連性の明示)
第百九十九条の十四 訴訟関係人は、立証すべき事項又は主尋問若しくは反対尋問に現れた事項に関連する事項について尋問する場合には、その関連性が明らかになるような尋問をすることその他の方法により、裁判所にその関連性を明らかにしなければならない。
2 証人の観察、記憶若しくは表現の正確性その他の証言の信用性に関連する事項又は証人の利害関係、偏見、予断その他の証人の信用性に関連する事項について尋問する場合も、前項と同様とする。

(裁判長の尋問)
第二百一条 裁判長は、必要と認めるときは、何時でも訴訟関係人の証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対する尋問を中止させ、自らその事項について尋問することができる。 2 前項の規定は、訴訟関係人が法第二百九十五条の制限の下において証人その他前項に規定する者を充分に尋問することができる権利を否定するものと解釈してはならない。

第十一章 証人尋問

第百四十三条 裁判所は、この法律に特別の定のある場合を除いては、何人でも証人としてこれを尋問することができる。

第百四十三条の二 裁判所は、裁判所の規則で定める相当の猶予期間を置いて、証人を召喚することができる。

第百四十四条 公務員又は公務員であつた者が知り得た事実について、本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、当該監督官庁の承諾がなければ証人としてこれを尋問することはできない。ただし、当該監督官庁は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない。

第百四十五条 左に掲げる者が前条の申立をしたときは、第一号に掲げる者についてはその院、第二号に掲げる者については内閣の承諾がなければ、証人としてこれを尋問することはできない。
 衆議院若しくは参議院の議員又はその職に在つた者
 内閣総理大臣その他の国務大臣又はその職に在つた者
 前項の場合において、衆議院、参議院又は内閣は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない。

第百四十六条 何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができる。

第百四十七条 何人も、左に掲げる者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができる。
 自己の配偶者、三親等内の血族若しくは二親等内の姻族又は自己とこれらの親族関係があつた者
 自己の後見人、後見監督人又は保佐人  自己を後見人、後見監督人又は保佐人とする者

第百四十八条 共犯又は共同被告人の一人又は数人に対し前条の関係がある者でも、他の共犯又は共同被告人のみに関する事項については、証言を拒むことはできない。

第百四十九条 医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、公証人、宗教の職に在る者又はこれらの職に在つた者は、業務上委託を受けたため知り得た事実で他人の秘密に関するものについては、証言を拒むことができる。ただし、本人が承諾した場合、証言の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合(被告人が本人である場合を除く。)その他裁判所の規則で定める事由がある場合は、この限りでない。

第百五十条 召喚を受けた証人が正当な理由がなく出頭しないときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、出頭しないために生じた費用の賠償を命ずることができる。
 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第百五十一条 証人として召喚を受け正当な理由がなく出頭しない者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第百五十二条 裁判所は、証人が、正当な理由がなく、召喚に応じないとき、又は応じないおそれがあるときは、その証人を勾引することができる。

第百五十三条 第六十二条、第六十三条及び第六十五条の規定は、証人の召喚について、第六十二条、第六十四条、第六十六条、第六十七条、第七十条、第七十一条及び第七十三条第一項の規定は、証人の勾引についてこれを準用する。

第百五十三条の二 勾引状の執行を受けた証人を護送する場合又は引致した場合において必要があるときは、一時最寄の警察署その他の適当な場所にこれを留置することができる。

第百五十四条 証人には、この法律に特別の定のある場合を除いて、宣誓をさせなければならない。

第百五十五条 宣誓の趣旨を理解することができない者は、宣誓をさせないで、これを尋問しなければならない。
 前項に掲げる者が宣誓をしたときでも、その供述は、証言としての効力を妨げられない。

第百五十六条 証人には、その実験した事実により推測した事項を供述させることができる。
 前項の供述は、鑑定に属するものでも、証言としての効力を妨げられない。

第百五十七条 検察官、被告人又は弁護人は、証人の尋問に立ち会うことができる。
 証人尋問の日時及び場所は、あらかじめ、前項の規定により尋問に立ち会うことができる者にこれを通知しなければならない。ただし、これらの者があらかじめ裁判所に立ち会わない意思を明示したときは、この限りでない。
 第一項に規定する者は、証人の尋問に立ち会つたときは、裁判長に告げて、その証人を尋問することができる。

第百五十七条の二 検察官は、証人が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある事項についての尋問を予定している場合であつて、当該事項についての証言の重要性、関係する犯罪の軽重及び情状その他の事情を考慮し、必要と認めるときは、あらかじめ、裁判所に対し、当該証人尋問を次に掲げる条件により行うことを請求することができる。
 尋問に応じてした供述及びこれに基づいて得られた証拠は、証人が当該証人尋問においてした行為が第百六十一条又は刑法第百六十九条の罪に当たる場合に当該行為に係るこれらの罪に係る事件において用いるときを除き、証人の刑事事件において、これらを証人に不利益な証拠とすることができないこと。
 第百四十六条の規定にかかわらず、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができないこと。
 裁判所は、前項の請求を受けたときは、その証人に尋問すべき事項に証人が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある事項が含まれないと明らかに認められる場合を除き、当該証人尋問を同項各号に掲げる条件により行う旨の決定をするものとする。

第百五十七条の三 検察官は、証人が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある事項について証言を拒んだと認める場合であつて、当該事項についての証言の重要性、関係する犯罪の軽重及び情状その他の事情を考慮し、必要と認めるときは、裁判所に対し、それ以後の当該証人尋問を前条第一項各号に掲げる条件により行うことを請求することができる。
 裁判所は、前項の請求を受けたときは、その証人が証言を拒んでいないと認められる場合又はその証人に尋問すべき事項に証人が刑事訴追を受け、若しくは有罪判決を受けるおそれのある事項が含まれないと明らかに認められる場合を除き、それ以後の当該証人尋問を前条第一項各号に掲げる条件により行う旨の決定をするものとする。

第百五十七条の四 裁判所は、証人を尋問する場合において、証人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、証人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、その証人の供述中、証人に付き添わせることができる
 前項の規定により証人に付き添うこととされた者は、その証人の供述中、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない

第百五十七条の五 裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、証人が被告人の面前(次条第一項及び第二項に規定する方法による場合を含む。)において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、被告人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。ただし、被告人から証人の状態を認識することができないようにするための措置については、弁護人が出頭している場合に限り、採ることができる
 裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、傍聴人とその証人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。

第百五十七条の六 裁判所は、次に掲げる者を証人として尋問する場合において、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所以外の場所であつて、同一構内(これらの者が在席する場所と同一の構内をいう。次項において同じ。)にあるものにその証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によつて、尋問することができる
  刑法第百七十六条から第百七十九条まで若しくは第百八十一条の罪、同法第二百二十五条若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、同法第二百二十七条第一項(第二百二十五条又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者をほう助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。)若しくは第二百四十一条第一項若しくは第三項の罪又はこれらの罪の未遂罪の被害者
  児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六十条第一項の罪若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪又は児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第四条から第八条までの罪の被害者
  前二号に掲げる者のほか、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者
 裁判所は、証人を尋問する場合において、次に掲げる場合であつて、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、同一構内以外にある場所であつて裁判所の規則で定めるものに証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によつて、尋問することができる。
  犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、証人が同一構内に出頭するときは精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認めるとき。
  同一構内への出頭に伴う移動に際し、証人の身体若しくは財産に害を加え又は証人を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるとき。
  同一構内への出頭後の移動に際し尾行その他の方法で証人の住居、勤務先その他その通常所在する場所が特定されることにより、証人若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるとき。
  証人が遠隔地に居住し、その年齢、職業、健康状態その他の事情により、同一構内に出頭することが著しく困難であると認めるとき。
 前二項に規定する方法により証人尋問を行う場合(前項第四号の規定による場合を除く。)において、裁判所は、その証人が後の刑事手続において同一の事実につき再び証人として供述を求められることがあると思料する場合であつて、証人の同意があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その証人の尋問及び供述並びにその状況を記録媒体(映像及び音声を同時に記録することができるものに限る。)に記録することができる。
 前項の規定により証人の尋問及び供述並びにその状況を記録した記録媒体は、訴訟記録に添付して調書の一部とするものとする。

【規則】

(傍聴人の退廷)
第二百二条 裁判長は、被告人、証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人が特定の傍聴人の面前(証人については、法第百五十七条の三第二項に規定する措置を採る場合及び法第百五十七条の四第一項に規定する方法による場合を含む。)で充分な供述をすることができないと思料するときは、その供述をする間、その傍聴人を退廷させることができる。

第百五十八条 裁判所は、証人の重要性、年齢、職業、健康状態その他の事情と事案の軽重とを考慮した上、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、必要と認めるときは、裁判所外にこれを召喚し、又はその現在場所でこれを尋問することができる。
 前項の場合には、裁判所は、あらかじめ、検察官、被告人及び弁護人に、尋問事項を知る機会を与えなければならない。
 検察官、被告人又は弁護人は、前項の尋問事項に附加して、必要な事項の尋問を請求することができる。

第百五十九条 裁判所は、検察官、被告人又は弁護人が前条の証人尋問に立ち会わなかつたときは、立ち会わなかつた者に、証人の供述の内容を知る機会を与えなければならない。
 前項の証人の供述が被告人に予期しなかつた著しい不利益なものである場合には、被告人又は弁護人は、更に必要な事項の尋問を請求することができる。
 裁判所は、前項の請求を理由がないものと認めるときは、これを却下することができる。

第百六十条 証人が正当な理由がなく宣誓又は証言を拒んだときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、その拒絶により生じた費用の賠償を命ずることができる。
 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第百六十一条 正当な理由がなく宣誓又は証言を拒んだ者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第百六十二条 裁判所は、必要があるときは、決定で指定の場所に証人の同行を命ずることができる。証人が正当な理由がなく同行に応じないときは、これを勾引することができる。

第百六十三条 裁判所外で証人を尋問すべきときは、合議体の構成員にこれをさせ、又は証人の現在地の地方裁判所、家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。
 受託裁判官は、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に転嘱することができる。
 受託裁判官は、受託事項について権限を有しないときは、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に嘱託を移送することができる。
 受命裁判官又は受託裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長に属する処分をすることができる。ただし、第百五十条及び第百六十条の決定は、裁判所もこれをすることができる。
 第百五十八条第二項及び第三項並びに第百五十九条に規定する手続は、前項の規定にかかわらず、裁判所がこれをしなければならない。

第百六十四条 証人は、旅費、日当及び宿泊料を請求することができる。ただし、正当な理由がなく宣誓又は証言を拒んだ者は、この限りでない。
 証人は、あらかじめ旅費、日当又は宿泊料の支給を受けた場合において、正当な理由がなく、出頭せず又は宣誓若しくは証言を拒んだときは、その支給を受けた費用を返納しなければならない。

【規則】

第十一章 証人尋問

(尋問事項書)
第百六条 証人の尋問を請求した者は、裁判官の尋問の参考に供するため、速やかに尋問事項又は証人が証言すべき事項を記載した書面を差し出さなければならない。ただし、公判期日において訴訟関係人にまず証人を尋問させる場合は、この限りでない。
2 前項ただし書の場合においても、裁判所は、必要と認めるときは、証人の尋問を請求した者に対し、前項本文の書面を差し出すべきことを命ずることができる。
3 前二項の書面に記載すべき事項は、証人の証言により立証しようとする事項のすべてにわたらなければならない。
4 公判期日外において証人の尋問をする場合を除いて、裁判長は、相当と認めるときは、第一項の規定にかかわらず、同項の書面を差し出さないことを許すことができる。
5 公判期日外において証人の尋問をする場合には、速やかに相手方及びその弁護人の数に応ずる第一項の書面の謄本を裁判所に差し出さなければならない。

(請求の却下)
第百七条 前条の規定に違反してされた証人尋問の請求は、これを却下することができる。

(決定の告知)
第百七条の二 法第百五十七条の二第一項に規定する措置を採る旨の決定、法第百五十七条の三に規定する措置を採る旨の決定、法第百五十七条の四第一項に規定する方法により証人尋問を行う旨の決定並びに同条第二項の規定により証人の尋問及び供述並びにその状況を記録媒体に記録する旨の決定は、公判期日前にする場合においても、これを送達することを要しない。
2 前項の場合には、速やかに、それぞれ決定の内容を訴訟関係人に通知しなければならない。

(尋問事項の告知等)
第百八条 裁判所は、公判期日外において検察官、被告人又は弁護人の請求にかかる証人を尋問する場合には、第百六条第一項の書面を参考として尋問すべき事項を定め、相手方及びその弁護人に知らせなければならない。
2 相手方又はその弁護人は、書面で、前項の尋問事項に附加して、必要な事項の尋問を請求することができる。

(職権による公判期日外の尋問)
第百九条 裁判所は、職権で公判期日外において証人を尋問する場合には、あらかじめ、検察官、被告人及び弁護人に尋問事項を知らせなければならない。
2 検察官、被告人又は弁護人は、書面で、前項の尋問事項に附加して、必要な事項の尋問を請求することができる。

(召喚状、勾引状の記載要件)
第百十条 証人に対する召喚状には、その氏名及び住居、被告人の氏名、罪名、出頭すべき年月日時及び場所並びに正当な理由がなく出頭しないときは過料又は刑罰に処せられかつ勾引状を発することがある旨を記載し、裁判長が、これに記名押印しなければならない。
2 証人に対する勾引状には、その氏名及び住居、被告人の氏名、罪名、引致すべき年月日時及び場所、有効期間及びその期間経過後は執行に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日を記載し、裁判長が、これに記名押印しなければならない。

(召喚の猶予期間)
第百十一条 証人に対する召喚状の送達と出頭との間には、少くとも二十四時間の猶予を置かなければならない。ただし、急速を要する場合は、この限りでない。

(準用規定)
第百十二条 証人の勾引については、第七十二条から第七十六条までの規定を準用する。

(尋問上の注意、在廷証人)
第百十三条 召喚により出頭した証人は、速やかにこれを尋問しなければならない。
2 証人が裁判所の構内にいるときは、召喚をしない場合でも、これを尋問することができる。

(尋問の立会)
第百十四条 証人を尋問するときは、裁判所書記官を立ち会わせなければならない。

(人定尋問)
第百十五条 証人に対しては、まず、その人違でないかどうかを取り調べなければならない。

(宣誓の趣旨の説明等)
第百十六条 証人が宣誓の趣旨を理解することができる者であるかどうかについて疑があるときは、宣誓前に、この点について尋問し、かつ、必要と認めるときは、宣誓の趣旨を説明しなければならない。

(宣誓の時期)
第百十七条 宣誓は、尋問前に、これをさせなければならない。

(宣誓の方式)
第百十八条 宣誓は、宣誓書によりこれをしなければならない。
2 宣誓書には、良心に従つて、真実を述べ何事も隠さず、又何事も附け加えないことを誓う旨を記載しなければならない。
3 裁判長は、証人に宣誓書を朗読させ、かつこれに署名押印させなければならない。証人が宣誓書を朗読することができないときは、裁判長は、裁判所書記官にこれを朗読させなければならない。
4 宣誓は、起立して厳粛にこれを行わなければならない。

(個別宣誓)
第百十九条 証人の宣誓は、各別にこれをさせなければならない。

(偽証の警告)
第百二十条 宣誓をさせた証人には、尋問前に、偽証の罰を告げなければならない。

(証言拒絶権の告知)
第百二十一条 証人に対しては、尋問前に、自己又は法第百四十七条に規定する者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができる旨を告げなければならない。
2 法第百四十九条に規定する者に対しては、必要と認めるときは、同条の規定により証言を拒むことができる旨を告げなければならない。

(証言の拒絶)
第百二十二条 証言を拒む者は、これを拒む事由を示さなければならない。
2 証言を拒む者がこれを拒む事由を示さないときは、過料その他の制裁を受けることがある旨を告げて、証言を命じなければならない。

(個別尋問)
第百二十三条 証人は、各別にこれを尋問しなければならない。
2 後に尋問すべき証人が在廷するときは、退廷を命じなければならない。

(対質)
第百二十四条 必要があるときは、証人と他の証人又は被告人と対質させることができる。

(書面による尋問)
第百二十五条 証人が耳が聞えないときは、書面で問い、口がきけないときは、書面で答えさせることができる。

(公判期日外の尋問調書の閲覧等)
第百二十六条 裁判所は、検察官、被告人又は弁護人が公判期日外における証人尋問に立ち会わなかつた場合において証人尋問調書が整理されたとき、又はその送付を受けたときは、速やかにその旨を立ち会わなかつた者に通知しなければならない。
2 被告人は、前項の尋問調書を閲覧することができる。
3 被告人は、読むことができないとき、又は目の見えないときは、第一項の尋問調書の朗読を求めることができる。
4 前二項の場合には、第五十条の規定を準用する。

(受命、受託裁判官の尋問)
第百二十七条 受命裁判官又は受託裁判官が証人を尋問する場合においても、第百六条第一項から第三項まで及び第五項、第百七条から第百九条まで並びに前条の手続は、裁判所がこれをしなければならない。

弁論

● 検察官の論告(求刑)(293条1項)→(被害者参加人の意見陳述(316条の38)→)弁護人の最終弁論(293条2項)→被告人の最終陳述(293条2項)
● 求刑は、法律上の義務ではない。

第二百九十三条 証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない
 被告人及び弁護人は、意見を陳述することができる。

第三百十六条の三十八 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、第二百九十三条第一項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。
 前項の申出は、あらかじめ、陳述する意見の要旨を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
 裁判長は、第二百九十五条第一項、第三項及び第四項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の意見の陳述が第一項に規定する範囲を超えるときは、これを制限することができる。
 第一項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする。

第二百九十三条 証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。
 被告人及び弁護人は、意見を陳述することができる。

第三百十三条 裁判所は、適当と認めるときは検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で決定を以て、弁論を分離し若しくは併合し、又は終結した弁論を再開することができる
 裁判所は、被告人の権利を保護するため必要があるときは、裁判所の規則の定めるところにより、決定を以て弁論を分離しなければならない。

判決

第三百四十二条 判決は、公判廷において、宣告によりこれを告知する。ことができる。

【規則】

(裁判の告知)
第三十四条 裁判の告知は、公判廷においては、宣告によつてこれをし、その他の場合には、裁判書の謄本を送達してこれをしなければならない。ただし、特別の定のある場合は、この限りでない。

【規則】

(裁判の宣告)
第三十五条 裁判の宣告は、裁判長がこれを行う。
2 判決の宣告をするには、主文及び理由を朗読し、又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げなければならない
3 法第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があつたときは、前項の規定による判決の宣告は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。

被害者参加

●被告人質問は、(証人尋問とは異なり)上場に関する事項には限られない。●確認:条文
●参考:被害に関する心情その他の意見陳述(292条の2)は、量刑資料とできる。参照:316条の38第4項

第二百九十条の二 裁判所は、次に掲げる事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
  刑法第百七十六条から第百七十九条まで若しくは第百八十一条の罪、同法第二百二十五条若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、同法第二百二十七条第一項(第二百二十五条又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。)若しくは第二百四十一条第一項若しくは第三項の罪又はこれらの罪の未遂罪に係る事件
  児童福祉法第六十条第一項の罪若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪又は児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第四条から第八条までの罪に係る事件
  前二号に掲げる事件のほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認められる事件
 前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
 裁判所は、第一項に定めるもののほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる事件を取り扱う場合において、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
 裁判所は、第一項又は前項の決定をした事件について、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至つたとき、第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため第一項第一号若しくは第二号に掲げる事件に該当しなくなつたとき又は同項第三号に掲げる事件若しくは前項に規定する事件に該当しないと認めるに至つたときは、決定で、第一項又は前項の決定を取り消さなければならない。

第三節 被害者参加

第三百十六条の三十三 裁判所は、次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは決定で当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする
  故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
  刑法第百七十六条から第百七十九条まで、第二百十一条、第二百二十条又は第二百二十四条から第二百二十七条までの罪
  前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(第一号に掲げる罪を除く。)
  自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成二十五年法律第八十六号)第四条、第五条又は第六条第三項若しくは第四項の罪
  第一号から第三号までに掲げる罪の未遂罪
 前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする
 裁判所は、第一項の規定により被告事件の手続への参加を許された者(以下「被害者参加人」という。)が当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人に該当せず若しくは該当しなくなつたことが明らかになつたとき、又は第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため当該被告事件が同項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなつたときは、決定で、同項の決定を取り消さなければならない。犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して被告事件の手続への参加を認めることが相当でないと認めるに至つたときも、同様とする。

第三百十六条の三十四 被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、公判期日に出席することができる
 公判期日は、これを被害者参加人に通知しなければならない。
 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士が多数である場合において、必要があると認めるときは、これらの者の全員又はその一部に対し、その中から、公判期日に出席する代表者を選定するよう求めることができる。
 裁判所は、審理の状況、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の数その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、公判期日の全部又は一部への出席を許さないことができる
 前各項の規定は、公判準備において証人の尋問又は検証が行われる場合について準用する。

第三百十六条の三十五 被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、検察官に対し、当該被告事件についてのこの法律の規定による検察官の権限の行使に関し、意見を述べることができる。この場合において、検察官は、当該権限を行使し又は行使しないこととしたときは、必要に応じ、当該意見を述べた者に対し、その理由を説明しなければならない

第三百十六条の三十六 裁判所は、証人を尋問する場合において、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者がその証人を尋問することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、審理の状況、申出に係る尋問事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く。)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、申出をした者がその証人を尋問することを許すものとする
 前項の申出は、検察官の尋問が終わつた後(検察官の尋問がないときは、被告人又は弁護人の尋問が終わつた後)直ちに、尋問事項を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら尋問する場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
 裁判長は、第二百九十五条第一項から第四項までに規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする尋問が第一項に規定する事項以外の事項にわたるときは、これを制限することができる。

第三百十六条の三十七 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者が被告人に対して第三百十一条第二項の供述を求めるための質問を発することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士がこの法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合であつて、審理の状況、申出に係る質問をする事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、申出をした者が被告人に対してその質問を発することを許すものとする
 前項の申出は、あらかじめ、質問をする事項を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら供述を求める場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
 裁判長は、第二百九十五条第一項、第三項及び第四項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする質問が第一項に規定する意見の陳述をするために必要がある事項に関係のない事項にわたるときは、これを制限することができる。

第三百十六条の三十八 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、第二百九十三条第一項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする
 前項の申出は、あらかじめ、陳述する意見の要旨を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
 裁判長は、第二百九十五条第一項、第三項及び第四項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の意見の陳述が第一項に規定する範囲を超えるときは、これを制限することができる。
 第一項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする

第三百十六条の三十九 裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項(同条第五項において準用する場合を含む。第四項において同じ。)の規定により公判期日又は公判準備に出席する場合において、被害者参加人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、被害者参加人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、被害者参加人に付き添わせることができる
 前項の規定により被害者参加人に付き添うこととされた者は、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。
 裁判所は、第一項の規定により被害者参加人に付き添うこととされた者が、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがあると認めるに至つたときその他その者を被害者参加人に付き添わせることが相当でないと認めるに至つたときは、決定で、同項の決定を取り消すことができる。
 裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日又は公判準備に出席する場合において、犯罪の性質、被害者参加人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、被害者参加人が被告人の面前において在席、尋問、質問又は陳述をするときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、弁護人が出頭している場合に限り、被告人とその被害者参加人との間で被告人から被害者参加人の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる
 裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日に出席する場合において、犯罪の性質、被害者参加人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、傍聴人とその被害者参加人との間で相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる

罪数・刑罰等

●略(刑法1条~72条)

ワヴィニー

日本の刑事法(刑事実務基礎(刑事手続・刑罰・刑罰等))は「全く知らない」というのもマズイかと考えまして、試みに…

律子

「『全く知らない』訳ではない」ということだけは、かろうじて理解できました(笑)。

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