「法選択は法廷地法による」(ワヴィニー)
初めて聞きましたが、「法選択は法廷地法による」とは、どのような意味でしょうか?
法廷地が決まると、適用される国際私法規定(法選択に関する規定)も決まりますから、そのことを表現しました。
例えば日本が法廷地の場合、法の適用に関する通則法による、ということですね。基本的には「普通」のことです。
(表現はさておき、実質的な考え方としては、例えば「法廷地が決まると、適用される国際私法が決まる。その結果として、準拠実質法も決定される。そのため、法廷地がどこになるか、即ち国際裁判管轄の問題は、当事者にとり重要な問題である。」等の文脈で登場することも多いですね。)
もっとも、「法選択は法廷地法による」について、主に国際民事訴訟の場面を想定した「手続は、法廷地法による」とは異なる点があり、それらに留意が必要です。
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1.実体法
まず、「準拠法選択は法廷地法による」は、あくまで訴訟の場面を主眼とした「手続は、法廷地法による」とは異なり、国際民事訴訟の場面中心に問題となる命題ではない、ということです。
民法等は、訴訟等の手続の場面でのみ適用される訳ではなく、実体法として、例えば日常生活においても、また戸籍実務等の行政活動においても、日々適用されていると考えられますよね?それと同様、国際私法(法の適用に関する通則法等)も、国際民事訴訟の場面だけではなく、日々適用されている。その場合、「法廷」には行っていないのですから、「法廷地」もないわけです。
(なお、「仮にそこが法廷地となったとしたら」という仮定的な地を「法廷地」と呼ぶことが多いですから、その場合には、場面を問わず一貫して「法選択は法廷地法による」と言えましょう。「手続は、法廷地法による」についても同様です。ただ、後者の命題については、あくまで「手続」が主題(主語)なのですから、主には「法廷」での話であり、「日々適用されている」とは言うものの、限度がありましょうね。)
国際私法は裁判所においてのみ適用される、と勘違いされている方も散見されるので、ここでは敢て上述を。
2.国際私法総論(反致・先決問題等)
別途説明する機会があるはずですが、国際私法においては、外国の国際私法(法選択ルール)の適用について検討する、という場面がいくつかあります。その点、一見「法選択は法廷地法による」の枠を超えるようですが、あくまでそれらの問題も法廷地国際私法(狭義)の解釈問題ですから、結論的には「法選択は法廷地法による」ということです。
他方、国際民事訴訟法においても、例えば訴訟能力等の問題点について、外国の民事訴訟法の適用につき検討する場面はあります。ただ、少なくとも反致・先決問題等における外国国際私法の適用が、一般的にはそれ自体国際私法(総論)における大きなテーマであることとの比較において、外国の民事訴訟法を適用することは、それ自体がテーマという訳ではなく、あくまで「学説」としてそういう考え方がある、また結論的には適用が否定されることも多い、というのが私の理解です。なお、全て法廷地国際私法(広義)の解釈問題、という点では上記1.と勿論共通です。
3.適用論理
さらに、そもそも法廷地の国際私法が適用される「論理」は、法廷地の民事訴訟法が適用される「論理」とは異なりえますね。
これについても、また機を改めて。
なお、「手続は、法廷地法による」と同様、本命題についても、諸々例外はありえます。
しかし、原則として「準拠法選択は法廷地法による」点については、異論のないところでしょう。
例えば、「日本が法廷地の場合であっても、法選択につき外国法に依拠することが原則である」等の論証がされれば別論ではあるのでしょうが、そのような論証は難しそうですね。