【第20回】 婚姻(効力)の準拠法(夫婦財産制を含む)
…というわけなんです。
甥は、「結婚し、契約を登記することも考えたが、そこまではしなかった」と言っていたのですが、結婚に際しての契約とは何を意味するのか?、また登記は商業・不動産等の話ではないのか?等、意味が理解できませんでした…
目次
テーマ
1.国際裁判等管轄等
● 夫婦財産契約の登記
2.準拠法選択等
● 婚姻(一般的効力)の準拠法
● 婚姻(財産的効力(夫婦財産制))の準拠法
3.外国判決等の承認・執行等
● 公序
事案
● 律子の甥A(日本人)は、20年前からフットサルコート(日本所在)(「本件コート」)を所有し、友人とフットサルを楽しんでいた。
● Aは、フットサルのサークルで知り合ったB(甲国人)と約15年前に婚姻し、以来日本において同居している。
● 甲国においては、日本とは異なり、婚姻時に夫婦財産契約を締結することが一般的である。
● 婚姻当時、Bには夫婦財産契約締結の希望があった一方、Aには心理的抵抗があったこと等から、単に「AB間の夫婦財産制については、甲国法を準拠法とする」旨の合意(「本件準拠法選択合意」)をするに留めた。
(なお、本件準拠法選択合意は、形式面において、日付を付した上でAB双方が書面に署名している他、実質面において、なんら問題はなかった。)
● Aは、日本におけるフットサルの試合中、過失によりC(日本在住)に右足骨折の負傷を負わせてしまった。
● Aが、当該負傷に係るCからの損害賠償請求に応ずることができない間、Cは、債権回収のための実力行使として、本件コートを事実上占拠している。
● Bは、本件準拠法選択合意が存在することから、甲国民法により、Bには本件コートの2分の1の持分があるとして、Cに対し、立ち退き請求をしたいと考えている。なお、Aは、Cの負傷に付き責任を感じており、資金の工面さえつけば速やかに損害賠償請求に応じたいと考えており、Cに対し立ち退き請求をする意思はない。
● 甲国法として、次に挙げる趣旨の法がある。
【甲国民法】
・ 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産も、夫婦の共有財産とする。
本事案も、日本・甲国に跨ることから、「国際的私法関係」に属しますね。
本事案では、訴えの提起等はされておらず、国際裁判管轄は問題となりません。
しかし、「管轄」と言う点では、日本の法務大臣が管掌する登記が関係してきますね。「国際裁判等管轄等」の末尾の「等」の問題として、甥御さん(A)の仰る契約・登記については、ここで触れてはおきましょう。
理解の便宜上、「夫婦財産制」=「法定財産制」(デフォルト)+「夫婦財産契約」(オプション)、という概念整理を常に念頭に置きつつ、進めて行きますね。
目次
1.国際裁判等管轄等
(1)登記(夫婦財産契約)
(2)登記(外国法に基づいてされた夫婦財産契約)
2.準拠法選択等
(1)婚姻の効力(一般)
(2)夫婦財産制(原則)
(3)夫婦財産制(例外(当事者自治))
(4)夫婦財産制(内国取引保護)
(5)夫婦財産契約(内国取引保護)
3.外国判決等の承認・執行等
(1)公序
1.国際裁判等管轄等
(1)登記(国内の夫婦財産契約)
民法
(夫婦財産契約の対抗要件)
第七百五十六条 夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法律
(趣旨)
第一条 民法(明治二十九年法律第八十九号)に規定する外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記については、他の法令に特別の定めがある場合を除き、この法律の定めるところによる。
(夫婦財産契約の登記の事務をつかさどる登記所)
第五条 夫婦財産契約の登記の事務は、夫婦となるべき者が夫の氏を称するときは夫となるべき者、妻の氏を称するときは妻となるべき者の住所地を管轄する法務局等が、登記所としてつかさどる。
2 (略)
3 (略)
4 (略)
(夫婦財産契約登記簿)
第六条 登記所に、夫婦財産契約登記簿を備える。
本事案において、仮にBさんも日本人であるとした場合、甥御さん(A)及びBさんの間で夫婦財産契約(例:夫婦別産制(民法762条)とは異なり、夫婦の財産を全て共有とする契約等)を締結したとしても、その登記をしなければ、第三者(例:民法762条に基づけばAのみに属する財産を差押えた者等)に対し、当該契約を対抗することができない(民法756条)。
なお、「外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法律」については、そのあたりを定めた法律がある、ということだけ認識しておけば十分でしょう。
実際の本事案においては、Bは甲国人ですが、その場合はどうなるのでしょう?
(2)登記(外国法に基づいてされた夫婦財産契約)
法の適用に関する通則法
(夫婦財産制)
第二十六条
(略)
4 …外国法に基づいてされた夫婦財産契約は、日本においてこれを登記したときは、第三者に対抗することができる。
本件においては、単に甲国法(日本の民法756条に相当する条文等)が準拠法として選択されているものの、それに基づく夫婦財産契約までは締結されていません。したがって、本事案では、「夫婦財産契約」の登記は、その前提を欠き、問題となりません。
(仮に、外国法たる甲国法に基づいてされた夫婦財産契約が存在すれば、それも「外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法律」に基づいて登記されることになります。)
ただ、甲国法を準拠法として指定はしていることから、「外国法に基づく法定財産制」は問題となります(後述)。
【注意】
・ 外国法上の夫婦財産制も、日本の民法同様、一般に「夫婦財産制」=「法定財産制」(デフォルト)+「夫婦財産契約」(オプション)と整理できる。
・ よって、「外国法に基づく夫婦財産制」=「外国法に基づく法定財産制」(デフォルト)+「外国法に基づいてされる夫婦財産契約」(オプション)となる。
(本事案においては、デフォルト状態のみが存在し、オプションは存在しない。)
本事案においては、本件準拠法選択合意のみをして、当該準拠法(甲国法(日本の民法756条に相当))に基づく具体的な夫婦財産契約までは締結しなかった、ということですね。
夫婦となるべき者同士でも、「契約」については、様々な考え方がありますからね。生まれ育った国の歴史・宗教・慣習等も影響します。
注意すべきは、「準拠法選択合意」を(合意であるからと言って)「夫婦財産契約」と誤解しないことです。
さて、説明の便宜上、通則法26条の条項を大幅に削って解説しましたが、「外国法に基づく法定財産制」を中心に、事案に即して個別的具体的に検討を進めましょう。
(夫婦財産制)
第二十六条
前条の規定は、夫婦財産制について準用する。
2 (略)
3 (略)
4 (略)
おっと、いきなり「前条」とありますね。
では、まず前条、即ち通則法25条についてお話しましょう。
2.準拠法選択等
(1)婚姻の効力(一般)
(婚姻の効力)
第二十五条 婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。
● 趣旨
(通則法25条)
「抵触法規の分野で夫と妻を対等に扱うためには、両者に共通な要素を順次捜し出すのが適当であると考えられたから」
1.本国法主義
2.「共通の本国法がないときは、夫婦が同じ国に居住していればその法律によらしめるのが適当であるので」
3.最密接関係地法は、最後の段階(第三段階)において、補充的に選択される。
【南・解説 49・65頁参照】
● 段階的連結
・ 通則法25条の連結方法は、「段階的連結」と呼ばれる。
● 単位法律関係
・ 婚姻の効力
(同居義務・協力義務・貞操義務等)実際上これらが独立して問題となることは少ないため、通則法25条が単独で問題となることも少ない。
● 連結点
・ 国籍
・ 常居所
・ 最密接関係地
● 準拠法
・ 本国法
・ 常居所地法
・ 最密接関係地法
甥(A)とBとは、(1)各々日本人・甲国人ですから、「夫婦の本国が同一」ではないものの、(2)「約15年前に婚姻し、以来日本において同居している。」ことから、「夫婦の常居所地法が同一」には該当し、夫婦財産制については日本法が準拠法となると理解しましたが…。
甲国法を選択する本件準拠法選択合意の実益はどこにあるのでしょうか?
それでは、話を通則法26条に戻しましょう。
(2)夫婦財産制(原則)
(夫婦財産制)
第二十六条
前条の規定は、夫婦財産制について準用する。
2 (略)
3 (略)
4 (略)
● 趣旨
(通則法26条1項)
通則法25条と同様。
【南・解説 65頁参照】
● 単位法律関係
・ 「夫婦財産制」
通則法26条1項は、単に通則法25条を準用しているだけなので、解説は省略しても良いのではないでしょうか?
本国法・常居所地法については問題ないのですが、最密接関係地法については、通則法25条(婚姻の効力)と26条(夫婦財産制)とでは、考慮要素が異なる可能性があります。例えば、財産所在地等は、通則法25条の単位法律関係(同居義務・協力義務・貞操義務等)の検討において、考慮することがないケースが基本的には多いでしょう。
そのような観点から、通則法26条1項においては、「婚姻の効力の準拠法による」等ではなく、「準用」と規定されているのです。
なお、通則法の条文数が少ないことを以って「国際私法はコスパが良い」等とする向きもあるようですが、適切なパフォーマンス(正確な理解)を上げるためには相応のコスト(注意深い学習等)は必要でしょう。その点を認識して頂く趣旨で、敢えて若干細かい点に立ち入った説明をした次第です。
さて、本件準拠法選択合意に話を戻しましょう。通則法26条1項には例外があるのです。
(3)夫婦財産制(例外(当事者自治))
(夫婦財産制)
第二十六条
前条の規定は、夫婦財産制について準用する。
2 前項の規定にかかわらず、夫婦が、その署名した書面で日付を記載したものにより、次に掲げる法のうちいずれの法によるべきかを定めたときは、夫婦財産制は、その法による。この場合において、その定めは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
一 夫婦の一方が国籍を有する国の法
二 夫婦の一方の常居所地法
三 不動産に関する夫婦財産制については、その不動産の所在地法
3 (略)
4 (略)
● 趣旨
(通則法26条が、夫婦財産制の準拠法を「夫婦が…定め」ることを認めた趣旨)
・ 「準拠法の選択性を採用している立法例もあるので、国際私法の統一という観点からこれを導入することに意義があること」
・ 「財産関係であるから当事者自治を認めるのに適していること」
・ 「段階的連結(しかも、密接関連法を含む。)では、婚姻当事者ですら自分たちの財産関係を規律する法律が明確でなく」等
【南・解説 74-75頁参照】
● 趣旨
(通則法26条が「次に掲げる法のうち」との限定をした趣旨)
「準拠法の選択を認める場合においても、夫婦財産制は、通常の財産関係とは異なり、夫婦共同体との関連が強いから、法選択には一定の合理的な量的制限を設けるべきであるので」
【南・解説 75頁参照】
● 趣旨
(通則法26条が「その署名した書面で日付を記載したものにより」とした趣旨)
・ 「夫婦財産制の場合は、法律の選択後相当期間が経過してからその選択の有無及び内容が問題となることが多いと考えられ、準拠法特定のための方式の明確さが大切であること」
・ 「夫婦財産制の準拠法に関する条約でもこれと同一の条件を要求しており、この程度の要件であれば政策判断としてこれを要求しても特に問題はないこと」等
【南・解説 75頁参照】
「量的制限」と言う言葉は聞き覚えがありますが…
契約の準拠法の話をした際、通則法7条に基づく当事者自治の制限論の1つとして解説しましたね。
その際には、第三国法(例:保険・海商等の分野における英国法等)を準拠法とする実務的ニーズが存在する等により、量的制限論を否定する解説をしたはずです。とはいえ、夫婦財産制については一定の歯止めは必要、というのがここでの話ですね。
本件準拠法選択合意については、「日付を付した上でAB双方が書面に署名している」ことから、「その署名した書面で日付を記載したもの」(通則法26条柱書)に該当し、また「夫婦の一方」であるBが「国籍を有する国」である甲国「法」(通則法26条2項1号)が準拠法とされています。
したがって、甥(A)とBに関する夫婦財産制については、本件準拠法選択合意により、甲国法が準拠法となるのですね。
ただ、本事案においては、第三者Cの存在から、更なる検討が必要です。
(4)夫婦財産制(内国取引保護)
(夫婦財産制)
第二十六条
前条の規定は、夫婦財産制について準用する。
2 前項の規定にかかわらず、夫婦が、その署名した書面で日付を記載したものにより、次に掲げる法のうちいずれの法によるべきかを定めたときは、夫婦財産制は、その法による。この場合において、その定めは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
一 夫婦の一方が国籍を有する国の法
二 夫婦の一方の常居所地法
三 不動産に関する夫婦財産制については、その不動産の所在地法
3 前二項の規定により外国法を適用すべき夫婦財産制は、日本においてされた法律行為及び日本に在る財産については、善意の第三者に対抗することができない。この場合において、その第三者との間の関係については、夫婦財産制は、日本法による。
4 (略)
● 趣旨
(通則法26条3項が「善意の第三者に対抗することができない」とした趣旨)
1.外国法に基づく夫婦財産制(外国法に基づく法定財産制・外国法に基づいてされた夫婦財産契約)の「内容を手軽に知り得るわけではない」
2.「夫婦財産制の準拠法につき、段階的連結を採用した上、選択制も認めたことから、…準拠法が取引の相手方によって不明確になるので、内国取引保護を図る必要性が大きい」等
【南・解説 80-81頁参照】
● 「外国法を適用すべき夫婦財産制」
「外国法による法定財産制はもちろんのこと外国法に基づき締結した夫婦財産契約も含まれている」
【南・解説 81頁参照】
本事案においては、「日本に在る財産」である本件コートについて、「外国法」である甲国法を「適用すべき夫婦財産制」が問題となります。
この点、第三者Cが本件準拠法合意等につき善意であれば、甲国法上の夫婦財産制を以ってCに対抗できない結果、本件コートはAの特有財産(民法762)として扱われます。
よって、少なくとも所有権者ではないBとの関係においては、Cは立ち退きしなくとも良さそうですね…
事前に工夫の余地はあったのですよ。
そこで、最後に、再び通則法26条4項を見てみましょう。
(5)夫婦財産契約(内国取引保護)
(夫婦財産制)
第二十六条
前条の規定は、夫婦財産制について準用する。
2 前項の規定にかかわらず、夫婦が、その署名した書面で日付を記載したものにより、次に掲げる法のうちいずれの法によるべきかを定めたときは、夫婦財産制は、その法による。この場合において、その定めは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
一 夫婦の一方が国籍を有する国の法
二 夫婦の一方の常居所地法
三 不動産に関する夫婦財産制については、その不動産の所在地法
3 前二項の規定により外国法を適用すべき夫婦財産制は、日本においてされた法律行為及び日本に在る財産については、善意の第三者に対抗することができない。この場合において、その第三者との間の関係については、夫婦財産制は、日本法による。
4 前項の規定にかかわらず、第一項又は第二項の規定により適用すべき外国法に基づいてされた夫婦財産契約は、日本においてこれを登記したときは、第三者に対抗することができる。
● 趣旨
(通則法26条4項が(法定財産制ではなく)「夫婦財産契約」に限定した趣旨)
「夫婦財産契約については、登記が可能であるので」
【南・解説 82頁参照】
上述の点を敷衍すると、(夫婦財産契約ではなく)外国法(律)上の「法定財産制」については、(1)判例法国の場合、登記をするにあたり、その内容の同定がそもそも困難ですし、また(2)成文法国の場合であっても、仮に登記をしたとして、法改正時の対応が困難であること等から、実際上も理論上も機能しないのです。
さて、冒頭に述べた通り、「夫婦財産制」=「法定財産制」(デフォルト)+「夫婦財産契約」(オプション)という概念整理を念頭に置けば、通則法26条3項は「夫婦財産制」の話であるのに対し、通則法26条4項は「夫婦財産契約」に限定された話である点、正確に理解して下さい。
本事案について言えば、甲国民法が夫婦財産契約を許容する条文・判例等を有するか否かは定かではないですが、仮に日本国民法756条に類する条文・判例等があれば、B(及びA)は、当該条文・判例等に基づく自らの理解を反映した「甲国の『法定財産制』と同様の内容の『夫婦財産契約』」を締結することはできたのですね。
そして、それを日本において登記していれば、Bは、Cに対し、当該夫婦財産契約(実質的には甲国の法定財産制)を以って対抗することもできたのですね。
今回のお話の冒頭に戻ると、本件準拠法選択合意に留まらず、(1)外国法に基づいてされる夫婦財産契約の締結、その上で(2)「外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法律」に基づく登記を検討すべきだった、と総括できるように思われます。
3.外国判決等の承認・執行等
【設例】
● 本事案において、Bは、甲国裁判所において、Cに対し、本件コートに係る土地明渡請求の訴えを提起し、勝訴の確定判決を得た。
● 当該訴訟においては、国際裁判管轄・被告の応訴の機会の保障・訴訟手続・相互の保証について、なんら問題はなかった。
● なお、甲国法として、次に挙げる趣旨の法(本事案とは異なるもの)がある。
【甲国民法】
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、夫婦の共有財産とする。
【甲国国際私法】
日本の通則法26条1項・2項に相当する条文のみが存在し、3項(及び4項)に相当する例外は認められていない。
(1)公序
(外国裁判所の確定判決の効力)
第百十八条 外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。
第二十六条
(略)
2 (略)
3 前二項の規定により外国法を適用すべき夫婦財産制は、日本においてされた法律行為及び日本に在る財産については、善意の第三者に対抗することができない。この場合において、その第三者との間の関係については、夫婦財産制は、日本法による。
4 (略)
本設例における確定判決が日本で承認・執行される場合、Cは本件コートからの立ち退きを余儀なくされますね。
本事案と同一の事件であるにも関わらず、先程本事案について検討した結果(少なくともBとの関係では立ち退き不要)と比較すると、Cの利益が害されるように思われます。
確かに、通則法26条3項の趣旨を害することとなりそうですから、公序条項(民訴法118条3号)の適用が問題となりますね。
ただ、民訴法118条3号は、具体的な「判決の内容」に係る規定ですが、本件コートからの立ち退きは、それほどCにとり酷なことなのでしょうか?
公序条項(民訴法118条3号)発動の一般的な2要件に照らし検討するに、まず(1)「内国関連性」については問題なさそうですね。Cが日本在住であること、及び本件コートが日本に所在すること等から。
他方、(2)「適用結果の異常性」については、いかがでしょうか?
ここではこれ以上立ち入りませんが、通則法26条3項の法的性質等にも照らし、自分なりに考えてみて下さい。
まとめ
1.国際裁判等管轄等
● 民法756条
● 民法762条
● 外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法律1条・5条・6条
2.準拠法選択等
● 通則法25条
● 通則法26条1項・2項・3項・4項
3.外国判決等の承認・執行等
● 民訴法118条3号
最後に、甲国法等の外国法への向き合い方については、こちらを参照しておいて下さい。
●「外国法(向き合い方)~準拠法として」
それにしても、15年前に婚姻した甥御さんがいらっしゃるとは、律子さんの年齢はいく…いや、それは良いでしょう。本事案については、Aさんが行方不明等ではないのですから、15年以上も連れ添った夫婦としてシッカリ協議し、今後の対応を決めれば良いでしょう。
行方不明といえば…
【第21回】 離婚の準拠法