国際私法では「学ばない」こと(1)

律子

…国際私法に若干関係がある余談ですが。

知人が、「国際私法の学習では、通則法等以外は学ばない」と言っていました。

ワヴィニー

「等」に何が含まれるか次第ではありますが、確かに国際私法では「学ばない」法律等はありますね。

それは、国際私法を学習する前提として「学ぶ」必要があるので、国際私法では改めて「学ばない」、というに過ぎませんが。

「お隣さん」と「お向かいさん」です。

律子

「お隣さん」と「お向かいさん」?

1.「お隣さん」

ワヴィニー

「お隣さん」とは、「国際私法」の2要素である「国際」・「私法」の一方につき、対立概念と入れ替えた概念を指します。具体的には、こういうことです。

●「お隣さん」

1.国際「公法」
国際法(いわゆる国際関係法(公法系))
【学ぶ理由】
条約・国際組織等一般に関する基礎的な知識すらなければ、国際私法の学習に際し登場する条約・国際組織等につき、正確な理解は得難いため。

2.「国内」私法
民法・民事訴訟法・商法等 (日本法)
【学ぶ理由】
(略)

ワヴィニー

「国際公法」については、少なくともその基礎的事項については、別途解説に触れて頂く機会を設けます。他方、「国内私法」については、言わずもがなですね。ここでは、日本の国際私法学者の言葉を引用しておきましょう。

「抑々国際私法は、各国の実質私法間の抵触の解決を目的としているものである。したがって各国の民・商法がどのような内容をもち、それらの間にどのような抵触が起るかを充分に知らないで国際私法を論じても、それは空疎なものになる。それ故、国際私法を専攻する者は、常に実質法の勉強を怠らないよう心掛けねばならないのである…」(池原季雄『国際私法(総論)〔法律学全集〕』(有斐閣, 1973)「執筆を終わりて」より)

ワヴィニー

実は上記言葉は、主張の前提を確認しているに過ぎず、その後にメインの主張が続くのですが、その点についても非常に重要な視点を提供しているため、別の機会にお話をしましょう。

なお、「各国の民・商法」という点、こちらも参照しておいて下さい。
●「外国法(向き合い方)~準拠法として

律子

私は「国際私法を専攻する者」ではなく、また「各国の民・商法がどのような内容をもち」につき広く・深く学習をする意思・能力まではありませんが、少なくとも現在国際私法を学ぶことにつき前向きに検討している者として、この言葉の趣旨を自分なりに理解し肝に銘じたいとは考えています。
(なお、先程、敢て大胆に民商法と併せ「民事訴訟法」を「私法」に分類されましたが、その趣旨は十分理解しているつもりです。)

最近の話題として、国際私法を学ぶのであれば、いわゆる新債権法についても相当の学習をしなければならないと感じました。

「お向かいさん」は何を指すのでしょう?

2.「お向かいさん」

ワヴィニー

「お向かいさん」とは、「国際私法」の2要素である「国際」・「私法」の双方につき、対立概念と入れ替えた概念を指します。具体的には、こういうことです。

●「お向かいさん」

「国内」「公法」
憲法・行政法
【学ぶ理由】
下記を参照。
●「憲法(重要性)~国際私法等との関係
●「行政法(重要性)~国際私法等との関係

なお、ある意味当然ながら、「お隣さん」と「お向かいさん」にも付き合いがある、即ち「国際法」と「憲法」「家族法」と「行政法」にはつながりがある。ここでは、これ以上立ち入らない。

3.「はす向かいさん」

ワヴィニー

以上ですが、国際公法(国際関係法(公法系))を除き、例えば予備試験の短答試験合格者(論文試験受験1回以上)であれば、特に身構える必要はないでしょう。

律子

刑法・刑事訴訟法はいかがでしょうか?

ワヴィニー

気付きましたか(笑)。

刑法・刑事訴訟法も「国内公法」なのですが、「お隣さん」でも「お向かいさん」でもなく、「はす向かいさん」でしょうか。あまり聞かない言葉ですが(笑)、それだけ「お付き合いがない」とは考えています。

しかし、「向三軒両隣」という言葉もあります。次に掲げる理由から、「全部忘れた」ではマズイかと。自戒を込めて…。

ただ、憲法・行政法との比較において、別途「学ぶ」必要性まではありませんので、「核となる情報」だけでも、逆説的に本サイトで提供することとしましょうかね。流石に「入門的な話」はするつもりはなく、また「細かい知識」も不要ですから、例えば「司法試験(論文試験)の論証例」ぐらいでしょうか。あくまで試みに、ではあります。
(司法試験受験生の方であれば、そのようなものは不要でしょうから、例えば「企業法務部門員であり、国際私法を学ぶ意思はあるものの、特段司法試験・予備試験等の学習まではしていない」という方のためになるでしょうか。)

●「はす向かいさん」

刑法・刑事訴訟法
【学ぶ理由】
・刑法の体系的処理・場所的適用範囲等については、国際私法の比較対象として、その理解の深化に寄与する側面がある。
・近時、マネーロンダリング等の規制に関して、「国際刑事法」等の議論・文献等を眼にする機会も多くなりつつある。

律子

いずれは、「はす向かいさん」を含む「向三軒両隣」全員とお付き合いするとして、まずは、「お隣さん」・「お向かいさん」との付き合いを継続・深化させて行きます。

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