【司法試験・予備試験】国際私法のコスパ~他の選択科目(労働法・経済法・知的財産法・倒産法等)との比較
「国際私法はコスパが良い」という話を聞いたことがあるのですが。
正しいですね。
ただし、コスト・パフォーマンスの観点から、どの「パフォーマンス」に対し、どの「コスト」の話をしているのか次第です。
1.国際私法はコスパが良い?
私の理解では、下記の通りです。
「コスト」:
司法試験受験生が、選択科目である「国際関係法(私法系)」対策にかける時間・労力等
「パフォーマンス」:
司法試験での点数
「国際私法はコスパが良い」、即ち「比較的少ない時間・労力等で点数が稼げる科目」と言われているようです。
(なお、比較対象は、他の選択科目、即ち倒産法・知的財産法・労働法・経済法・租税法・国際関係法(公法系)・環境法です。)
そのような傾向は、ずっと続いているのでしょうか?
2.国際私法はコスパが悪い?
いえ。
最近は、人事・家事分野の法改正があったり、知的財産関係の条約が出題された等から、「コスパが悪い」とも言われるらしいです。
だから他の科目を選択する、ということなのでしょうね。国際関係法(私法系)の選択者は、一時期に比べると減少しているようです。
司法試験の出題自体についての論評はさておき、場当たり的な選択をしている受験生が多いように思われますね。「まずは司法試験に合格しなければ」ということなのでしょうが。
ただ、「『七法』のみなら合格していたのに、『国際関係法(私法系)』が原因(掛けた労力の過不足)で不合格となる」方がどの程度存在するのでしょうか?全くの推測ですが、合否は「七法」で決まり、そのような方が多いとは思われないのですが。
3.国際私法はコスパが良い。
何を目的に司法試験を受験しているか次第ですが、「パフォーマンス」については、下記のように認識すべきでしょう。
「パフォーマンス」:
将来的なキャリアの広がり等
そうすれば、国際私法(国際関係法(私法系))ほど「コスパ」の良い選択科目はないでしょう( 英語力が加わることで、更に「コスパ」は上昇します。)。
国際私法を(英語も)学んだ上で国際法務の分野に参入するかしないかで、将来的なキャリアは大きく異なります。
仮に「コスパが低下した」国際私法を(英語も)学習しないまま司法試験に合格し、司法修習そして就職(国内業務のみ取り扱う事務所へ)と進んだ場合には、例えば3年から5年ほど経過した後、英語が+αでできる法律家(日本法実務の対応能力は同等)とのキャリアの相違(「パフォーマンス」の違い)が生じた時点で、初めて自らの支払った「コスト」(いわゆる機会費用(”Opportunity Cost”))の大きさに気付くことがあるかも知れません。
国際法務を担当するためには、やはり前提として国際私法の習得が必要なのでしょうか?
いえ、むしろいわゆる大規模法律事務所の法律家でも、国際私法を基礎から勉強した方の方が少ないかも知れません。
以前、「大規模法律事務所への就職のためには国際私法選択が有利」である旨の言説に触れたことはありますが、その趣旨は良く理解できませんでした。
選択科目の数は8科目あり、選択肢としては多いですから、目標を達成するためには、諸々迷いは生じるでしょうね…。
ただ、人生は「どちら側に立つか」(意識の持ち様)で変わる面も大きく、将来的なキャリアの広がりを見据えると、できるだけ早い時期に「国際私法の側に立つ」(ひいては国際法務への心理的障壁を除去する)ため、学習しておくことを強くお奨めしたいですね(その意味では、英語についても同様、いや尚更ですが。)。
…私は国際法務に強い関心がありますので、国際私法を(英語も)学ぶことを前向きに検討してみます。